最終話「浮気を無罪に」〜元妻デッドから復縁を迫られたルイはデッドのいる家に戻って……〜
「ねえルイ。この手紙、昔の同僚からのじゃなかったっけ?」
ルイの恋人であるアリソンがゴミを集める途中、ゴミ箱から手紙を見つける。アリソンの手にあるのはルイの元妻であるデッドからの復縁を誘う手紙だった。
ルイはアリソンにデッドの事を話していないため、元仕事仲間からの手紙として受け取った。
アリソンの目からは元同僚の手紙を捨てた非情な奴と写っている。
「あー……名前が同じなだけで違う人からだったよ。捨てといてくれ」
「はあい」
アリソンはすんなり手紙をゴミ袋に移す。
ルイは安堵のため息を吐いた。
数日後、ルイはアリソンが買い物に出掛けている隙に家に戻った。
手紙でデッドは家で待っていると書いていた。
「ただいまー……デッド〜?」
ルイは玄関からデッドがいるかどうか確認しながらリビングに行く。
「デッド!?」
リビングのソファで眠っているデッドを見つけた。
ぐっすり眠っている。
「デッド〜、起きてくれ〜」
ソファの前に腰を下ろして彼女の体を揺らす。何分か経って諦めようとした時、彼女は目を開けた。
「んん〜」
デッドは状況を理解できていないように体を起こして目を擦る。
「おはよう、デッド」
「え……ルイ?」
デッドは先ほどまで少しも開いていなかった目を見開き、口角を上げる。
「帰ってきてくれたの! 嬉しい! 一緒に赤ちゃん育てましょ!」
デッドは無邪気な子供のようにルイに抱きつく。ルイは一時帰宅しただけなので親になる気などさらさらない。
「デッド、少し話せるか?」
ルイはデッドの隣に座る。彼女は軽く頷く。
「なんであの場所がわかったんだい?」
「探偵雇ったの」
ルイは少し引いたがデッドがあまりに普通の顔で答えたので深く聞かず続ける。
「本当に父親はモスじゃないんだな?」
「うん。書類見る?」
「いや、大丈夫。今モスは?」
デッドは目を逸らして俯く。
「別れたのか?」
「別れた……けど、時々ここに来るの。何回もチャイムを鳴らして来たり扉を何回も叩いたりしてくるの。やめてって言ってるんだけど……」
デッドは目に涙を浮かべる。
「モスがそんなことを?」
「うん。たぶん急にわたしが出ていったから……」
「モスに子供の父親について話したか?」
「え、話したけど」
ルイは頭を抱える。
……そりゃ、怒るだろ。
貴方との子供を身籠ってるので夫と離婚して貴方と付き合います!→調べてみたら元夫との子供だったからヨリ戻すわ、ばいばーい!
こりゃルイがモスの立場でもブチギレるな。今の立場でも怒りのパーセンテージは結構行ってるけど。
「ねえ、ルイ。まだ離婚届も出してないし、わたし達まだ戻れるかな」
デッドはルイの腕に手を絡めて肩に頭を乗せる。
「は?」
「わたし達これまで沢山過ちを犯して来たけど、これからは子供のためにやっていけるかな? 許してもらえるかな?」
彼女は自分のお腹をさする。
「ねえ、ルイ」
「ん?」
二人は見つめ合う。
「ヨリ、戻せるよね?」
デッドは震える声で呟く。
ルイは意味深に口角を上げて笑う。
「もちろん。こっちこそ今までごめんね。許して、とは言わないけど頑張って君を支えるよ。子供も二人で育てよう」
ルイはデッドを強く抱きしめる。
「許すわ。ありがとう、ルイ」
「アリソン、実は少し遠くの仕事が決まってね」
「え……」
「でも安心して。週に一回、とは言えないけど出来るだけ君との時間を作るよ。ごめんね」
「ううん! 会える時は連絡して! おいしいご飯作ってここで待ってるから!」
アリソンと束の間の別れを告げてルイは次の家に訪ねる。
「久しぶり、モス」
「何の用だよ」
ルイはモスの座るソファの前に膝をつける。
「デッドと復縁した」
「だろうな」
「デッドのお腹の子供は、わたしとの子供らしい」
「知ってるよ」
モスは親友から寝取ったまた親友に彼女を奪われた割に、冷静にルイと話す。ルイは違和感を覚える。
もしかしたら、デッドとモスはまだ繋がっているのかもしれない。なんなら何かを企んでデッドはルイと中を戻したのかもしれない。
「なあ、モス」
「なんだよルイ」
モスはルイと目を合わせる。
「親友に戻ってくれないか?」
モスは何回か瞬きをして笑った。
「いいけど」
ルイはデッドとの子供を必死に育てるお父さんになった。仕事はティンに任せた会社の子会社の役員。前に比べれば給料は微々たるものだが、金が欲しくて仕事をしているわけではないので満足している。
しかし月に数回、アリソンや他の恋人達と仕事と偽り愛に行く。
そしてティンとの関係も戻った。仕事抜きでの関係。
デッドは子供を産んでからはモスとは会っていないようだ。ティンとモスの打ち合わせに何回か同席して質問してみたが、モスは他に恋人でもいるのかデッド抜きの充実した生活を続けていた。
「こら! それは食べ物じゃないでしょ!」
デッドが息子に怒る声はもう慣れた。
「じゃあ、お父さんもういくね〜」
「行ってらっしゃい! ほら、チャールズも」
デッドがチャールズの手を振る。ルイは少し笑顔になり、ドアに手をかける。
「行ってくるね」
ドアが閉まる最後までデッドとチャールズは手を振ってくれた。しかしデッドの表情は固かった。
私の浮気を知っていて許せないのだろう。でも子供がいるから渋々送り出す。
浮気は無罪になどならない。過去のも今のも。
「離婚はすぐそこだな……」
ルイは呟きながら浮気女に会いに、ハンドルを握った。
「お、最後じゃん」
「ほんとだ」
モス役ネックがルイ役シックにも台本を配る。
「あ、ティン役、代役だってさ」
「え? ガールちゃんは? 降りた?」
「うん。なんか、体調不良で一年間活動休止ってさ。どうせなら最終話撮ってからにしろよなー」
ティン役ガールは妊娠している。元彼との子供を。
「あ、ガールちゃんのこと聞いた?」
デッド役リリーが入ってきた。
「聞いたよ、やばいよな」
ネックは冗談まじりに言う。ネックもリリーも既婚者のくせに付き合っている。おまけにネックは子持ち。
「やばいどころじゃないよ、わたしこれからガールちゃんの家に行ってみるんだけど、来る?」
「俺はいいや。めんどいし」
ネックは出ていく。
「シックは、もちろん?」
彼女はシックがガールに好意を抱いていることを知っている。
「行くよ」
「おじゃましまーす」
リリーは合鍵でガールのマンションに最も容易く入る。
「リリーさん!……シックさんも」
明らかにシックをみてテンションが下がるガール。
「あ、ごめんね。シックが僕も行くーってうるさくて」

リリーはペラペラと嘘をつきながらガール宅のリビングへと進む。シックは好きな女の子の家に初めて来て緊張してるのもあるが少し部屋がボロいのも気になる。
「少し汚いですがどうぞ座ってください」
ガールは床に座布団を二枚置く。
シックは戸惑いながら座る。
ガールの部屋は少し汚いどころではなく、高貴なシックには眩暈がするほどの汚部屋だった。
「あ、わたしちょっとトイレ借りるね〜」
シックとガールを二人きりにすべく気を遣うリリー。
「あ、トイレは……」
「大丈夫! 分かるよ」
ドアが閉められ、二人きりになる。
「なあ、ガール」
「……何ですか?」
シックは息を吸う。
「僕と、結婚しよう!」
シックは恐る恐る目を開ける。
思い通りガールは固まっていた。
「僕は、お金もあるし、家も建てれるし、子供を育てるのに苦労しない……と思う」
シックは必死に自分をアピールする。
「同年代と比べてお給料はたくさんもらってるし、君の子供を一緒に育てて養えるぐらいの経済力がある! だから、僕と結婚して下さい!」
シックは膝を曲げてガールを見つめる。ガールは眉を下げて困ったように目を泳がせる。
「お腹の子どもは、シックさんと血が繋がっていないんですよ? それでも……」
「愛す! もちろんだ!」
シックはガールの手を握る。
「わかりました。結婚します。まさかこんな事になるなんて……」
ガールは顔を下げた。シックは少し焦る。
「あ、嫌なら断ってもいいです。無理にとは言いません」
「違います! わたし、元々シックさんのことが好きだったんです! だから……夢みたいで」
え?
「今、僕のことが元から好きだったって?」
「えぇ。何か?」
シックは常に持っている結婚指輪をポケットから出そうとした手を止める。
「いつから僕のことを、その……好きに?」
「子供の頃からです。同い年くらいなのに子役として大成功しているシックさんには強い憧れと好意が……」
「本当ですか!?」
「え? えぇ、こんな性格の持ち主とは知りませんでしたけど……」
ガールは苦笑いでシックの手を掴む。
「最終話、出てもいいですかね?」
シックも強くガールの手を握り返した。
「もちろん!」
二人の初キスをトイレから戻ったリリーは微笑ましく見つめた。
「う〜ん。良かったねー、二人とも」
完
完?
すぐ完結できる連載したくなーい? って感じで始めたドラマ。
毎週投稿すれば十週で出来るはずだったのに…。
こんなに時間がかかるとは。
最後に至っては二話同時投稿。
胸糞悪い終わりの仕方ですけど、完結できてホッ。
(о´∀`о)
このドラマはたぶん一話五分だね。短い。