転生ロリコン騎士戦記
「騎士になり、ロリ姫を愛でたい。」
異世界転生初日に私がまず最初に抱いた夢であった。
前世、私は一般的な会社員であった。未婚だったがそこそこ楽しく暮らしていたし、仕事も悪くなかった。そんな特筆すべきこともない私の人生だが、誰にも明かさず秘密にしていた事が一つあった。
ロリコンである。かわいく、ちいさな女の子が好きだったのである。それはもう、好きだったのである。
現代の日本において、ロリコンは世間的に厳しい評価を受けるものである、と私は認識していた。犯罪者予備軍のような扱いを受けていたし、実際に手を出すような奴に関して言えば、確かにそれは犯罪者でしかない。
一つ言っておくとすれば、私はそのような犯罪者達は唾棄すべき存在であると思っている。古のヲタク達は言った、
「YESロリータ、NOタッチ」と。
彼女たちを野に咲く花に例え、その花を綺麗だからと摘んでしまう、その行為の愚かさを語っていたのである。ロリコンとは紳士であるべきなのだ。私はそれを胸に刻み、ロリコン道を歩んでいた。
そんな私になんのいたずらか異世界転生の機会が訪れた。舞台は定番、剣と魔法のファンタジーな世界である。転生の際には神から所謂チートを3つも授かった。残念なことに神はナイスバデーな女神であり守備範囲外だったが、感謝はしている。
ともかく、異世界転生である。ナンタラ王国やカンタラ帝国、ナイスバデー女神教の教皇が治める皇国など、ワクワクする要素がてんこ盛りである。ナンタラ王国の小さな農村に生まれた私の第一声が
「ナイスバデー女神様、万歳!!」
だったことも仕方ないことであった。
とんでもない生まれ方をしてしまった私であるが、暫くは普通の暮らしをしていた。両親ともに良い意味で鈍いのか、やれ俺の子は天才だ、私の子は神童よ、と褒めはするものの、私が転生したチート主人公(予定)ということには気づいていなかった。
ここで冒頭の夢の話である。私は今生において大きな夢を抱いたのだ。ロリ姫を愛でるという夢を。
これはロリ姫に手を出したい、ましてや恋仲になりたい、などというものでは断じてない。ロリ姫に我が生涯を捧げ、忠節を尽くし、すべての悪意からロリ姫を守り、
「しょうらいは、きしとけっこんするっ!」
なんてことを言っちゃうロリ姫にやれやれ、なんてしたりして、ロリ姫が立派に育ち結婚なんかしちゃった後はロリ姫との思い出を肴に酒を飲みながらニヤリとしたいというものであった。
これはもはやロリコンではない。恐らく父性か何かの発現である。ああ、なんと紳士な夢であろうか。
しかし、もちろん課題はあった。そもそも、騎士や王族の事など何も知らなかったため、騎士の成り方も、王族との接点の作り方も私には分からかったのである。(そもそもただの農民の私に正攻法などあったのだろうか。)
ただ、私にはチートがあった。先の課題など軽々と吹き飛ばしてしまえるこれを活かさぬ手はあるまい。成り上がり、王族の目に留まる存在になる事、これほど単純な事はないだろう。そう考えた私は家族に別れを告げ、旅に出ることにした。
そこからの私は自分で言うのはなんだが凄まじかった。チートの1つ、【超成長】により私の様々な技術はメキメキと向上し、あらゆる敵を寄せ付けなくなった。この世界に当たり前のように存在していた、人に仇なす魔物達をバッタバッタと倒していった。一つ切ってはロリのため、二つ切っては姫のため、とロリコン魂を燃やした私の名声は凄まじい早さで高まった。剣と魔法のファンタジー、そしてチート様々である。多くの人々から讃えられる存在となった私に、ナンタラ王国の貴族から声が掛かるのは当然のことであった。
私の人生を物語風に語るならば、ここから王国編に突入したといえる。この時もチートは役に立った。2つ目のチート、【人心把握】により相手の心を読むことができる私は、貴族達の悪事・陰謀から性癖までバンバン明らかにしていったのだ。将来仕える事となるロリ姫のためと考えれば、王国中を寝る間も惜しんで駆け回ることができた。遂に王国の膿を根こそぎ出した私は、王族からの信頼を勝ち取ることに成功していた。騎士となったのもこの時である。
ちなみに王国には同志たるロリコン貴族がいなかった。驚愕であり、また残念である。
騎士となった私は、いざロリ姫を愛でん!と息巻いていたが、そこへ急報が入った。帝国による宣戦布告である。帝国争乱編の幕開けであった。私の人生において一番危うかったのは何時かと聞かれれば、私はこの帝国との戦争と答えるだろう。
帝国の皇帝、ホニャララ(名前は覚えていない、ロリ姫を愛でる事以外は全てが些事である。)はチート持ちの私ですら苦戦する力の持ち主であった。その脅威の前に、私は危うく死にかけたのだ。3つ目のチートである【神回復】がなければ皇帝を討ち倒すことは叶わなかったであろう。
それでも私は勝ち、生き残ることができた。これでロリ姫との生活を脅かすものはもう何も無いはず。この時私は鼻歌を歌いながら王都へ戻ったことを覚えている。
しかし、皇帝との死線を乗り越えた私を待っていたのは衝撃の事実であった。
王族には三人の王子しかいなかったのである。
痛恨の極みであった。王族にはロリ姫が当たり前に存在している、その思い込みが私の目を曇らせていた。
流石にこれは堪えた。ロリ姫が存在しないという事実にではない。ロリ姫を愛でること、その手段にばかり気を取られ、目的を疎かにしていた自分のあまりの愚かさにである。
一時は乱心のあまり、男の娘でも構わないと、第三王子を可愛く仕立て上げようとした。だが、流石建国以来一の賢女と呼ばれる王妃。しっかり止められたので諦めた。常に閉じられていた王妃の眼がカッ!!と開いたときは、チート持ちの私ですら死を覚悟したものだ。
その時私は王妃の蔑むような目から、しかし殺意とは別に王妃の熱い想いを読み取った。王妃は多分、その目で語っていた。
「お前のロリコン魂はそんなものか。」と。
なお、心は読んでいない。怖かったからだ。
(勝手に)改心した私は方針を改めた。
私の前世では知らぬ人がいないであろう偉人、徳川家康公の事を詠んだ有名な句がある。
「居ないなら 産まれるまで待とう ロリ姫」
成果を得るまで忍耐強く待つ、という家康公の人生を表した素晴らしい句である。
私は騎士として王子達をサポートをし、立派に育て上げることを目標とした。彼らはいずれ嫁を貰い、そして世継ぎを作るであろう。その時、王子達を支えた私は、自ずとロリ姫とも接点を作ることができるはず。家康公も感心してくださるであろうこの戦略を、私は【ロリ養殖】と呼ぶことにした。
なお王に処刑されかけた。何故この戦略が王の耳に入ったのだろうか。
とにかく奮起した私を待っていたのは、しかし王都でのロリ養殖ライフでは無かった。新たな敵、魔王が誕生したのである。ナイスバデー女神教の教皇が魔王を名乗り、魔族を率いて各国を攻めだしたのだ。言うなれば、教皇乱心編、もしくは魔王討伐編の始まりである。
ただ、王族からの信頼が少しばかり弱まったかな、と感じていた私にとってこれは好機であった。私は王に対し、悪に堕ちた教皇を打ち倒すことを伝えた。すると王は、第一王子のタロウ(確かこんな名前だったはずである。)を連れて行く事を条件に出してきた。とてもじゃないが男の娘には仕上げられそうになかった(私はまだ王子男の娘化計画を諦めていなかった。)が、王妃の眼が開いていたので快く引き受けた。恐らく、王妃は眼から何か光線を出せるだろう。
魔王討伐のため、ナイスバデー女神教国であるウンタラ皇国に向かった私は、聖女である☓☓(規制)に出会った。前世感覚だとトンデモない破廉恥ネームであったが、まあこちらでは問題ないのであろう。(流石の私も名前を覚えたが、口に出せたものではない。チョメチョメと呼ぶこととした。)
チョメチョメは実父であり、闇堕ちした教皇の☓☓☓(こいつも凄まじい破廉恥ネームだった。今後ドスケベと呼ぶ。)を止めたいとのことであったので連れて行くこととした。ちなみに聖女はチョメチョメと呼ばれることに首を傾げていたが、敬意や親愛を込めた呼び名だと伝えて強引に納得させた。
しかしナイスバデー女神、信徒代表に碌な名前がいない。大丈夫なのだろうか。
魔王討伐の道中では、予想外の成果が得られた。タロウとチョメがなんだかいい雰囲気になっていたのである。吊り橋効果というやつであろうか、苦難を共に乗り越えることで二人の仲が急速に縮まっているようであった。
チョメは名前がとんでもなく破廉恥だが、それを除けば非の打ち所が無い美しい女性であった。またタロウも男の娘にはなれないが顔立ちは整っており、まあイケメンといえる。この2人から生まれるロリ姫はさぞ可愛らしいに違いない。ロリ養殖計画は順調であった。
突然現れた王直属の暗殺者に刺された。チートとロリコン魂を震えるほど燃焼させる事で耐えることができた。私は絶対に折れませぬぞ、王よ。
教皇、いや魔王ドスケベとの戦いは熾烈を極めた。多彩な魔法や強化された巨大な体躯から繰り出される数々の戦技。皇帝ホニャララを遥かに凌ぐドスケベの力には、相当な苦戦を強いられた。それでもチョメの聖なる力により、ドスケベの力を抑えることに成功し、ドスケベを追い詰めた。
すると、ここでドスケベは奥の手を使ってきた。自身の命を代償に、魔神召喚を行ったのである。破壊を司る魔神は、放っておけば世界に終焉を齎してしまう存在だ。ロリ姫の輝かしい未来の為、負けることは絶対に許されない。私は絶大な力を持つ魔神に対し、一歩も引かない覚悟を決めた。
ただ、魔神の姿を見たその時、私は自身の覚悟があっという間に霧散してしまった事を感じた。それと同時に、一つの真実に辿り着いた。
皇国民の皆に慕われ、またその叡智は歴代一であるとされた教皇ドスケベが、何故魔に魂を売ることとなったのか。それに気づいてしまったのだ。
召喚された魔神ロリーザは、かつて見たことが無いほど完璧なロリであった。
教皇ドスケベは同志であったのだ!!!
まあ教皇がロリコンであったことはさておき、私は初めての敗北を悟った。ロリに剣を向けることなど、私にはできない。
「YESロリータ、NOタッチ」。
胸に刻んだこの紳士の誓いを、私は破ることが出来なかった。剣を握ることもせず、私は膝から崩れ落ちてしまう。タロウ、チョメは突然戦意を喪失した私に戸惑ってしまい、そしてその隙を突かれてロリーザに吹き飛ばされてしまった。彼らの戦闘への復帰は絶望的であった。
最早どうすることも出来ない状況。私はロリ姫を見ることも叶わず、このロリに敗北するのだ。それもまあ、正味一興ではあった。
そして、全てを諦め受け入れる体勢となった私に近づいて、ロリーザは私に囁いた。
「ざーこ♡」
一閃。
私は剣を振り抜き、ロリーザを切り捨てた。
メスガキは、地雷なのである。
世界に平和が訪れた。
相手の思考を読める私が、ギリギリまでメスガキを悟ることが出来なかったのは一生の不覚である。ロリーザのあまりに完成されたロリっぷりに、チートが発動出来なかったのが要因であろう。考えてみればあいつは魔神。おそらく歳もかなり取っているはずだ。ロリババアも守備範囲外の私は、見た目だけで判断してしまった己の未熟を猛省した。
心を落ち着け、タロウとチョメの下へと向かった。すると、そこには2人以外に、なんと同志ドスケベが元の姿で倒れていた。どうやらチョメの力により、奇跡的に魔王から元に戻り、一命をとりとめたようだった。
私は同志ドスケベを優しく抱き起こした。彼は目を覚ますと涙を流し、私に語りかけた。
「世界を救ってくれてありがとう。私を救ってくれてありがとう。そしてあの悍ましい魔神を倒してくれてありがとう。不覚にも、隙を突かれて操られていたのだ。」と。
私は悟った。同志なんてものは居なかったのだ。その日の夜は、星空がひどく滲んでいた。
同志を失ったことを引きずりつつも王都へ凱旋すると、そこはお祭り騒ぎであった。何せ、教皇を救い出し魔神を倒したのだから当然であった。また、タロウと共にチョメも王都について来ており、その場でタロウと結婚する事まで決まってしまった。いやはや、なんて素晴らしい日であろうか。ロリ姫が私の下にやってくるのも時間の問題である。私は歓喜し、二人を祝福した。
王妃の眼がチラチラ開きかけ、王直属の暗殺軍団もチラホラしていたが、目出度い場であったためか見逃された。彼らもようやく私という存在に慣れてきたのかもしれない。私はのんびり王都ライフを満喫しつつ、待つことにした。
ちなみに二度ほど第三王子にドレスを着せようとして処刑されかけたが、些事である。
2年後、遂に待ちに待った日がやってきた。
その日、私は朝からソワソワしていた。
チョメの部屋の前で、タロウと共にウロウロしていた。長年の夢であったロリ姫の誕生を前に、緊張が隠せなくなっていたのだ。果たして私はロリ姫を正しく導けるだろうか、一点の曇りもない幸せな人生を歩ませられるだろうか。そんな事ばかりが頭をめぐり、タロウよりも緊張している自分がいた。
そして、その時が来た。姫が生まれたのである。
しかし部屋の様子がおかしい…。姫の誕生を報せた歓声は、すぐに止んでしまったのだ。
そして私は気付いた。そうか!生まれてきた姫が泣かないのだ!!
ああ、そんなことがあっていいのだろうか!私は思わずタロウと共に部屋に入り、姫の下へ駆けつけた。チョメや産婆、皆が悲しみに包まれている。ああ、姫…!ダメだったのか…。
…皆が諦めかけたその時、奇跡が起きた。
姫が、その目を開いたのだ。
そしてその小さな体を震わせ、叫んだ!
「ナイスバデー女神様、万歳!!」
心を読むと、姫はTS転生したおっさんであった。
チョメ達は泣いていた。私も泣いていた。
完
初めて小説を書きました。何番煎じかわかりませんが、思いついてしまったので書きたくなったのです。
このオチの為の話なのですが、正直もの足りなかったです。誰かにリライトしてほしい。