水色の空に君の魔法を
王立魔道学園ー通称ラインダール 水色に染まった空を無数のピンクの花弁が彩り学園内を騒がす喧騒に、数多の者たちが心を踊らされていた。
ある者は絆を深め、ある者は勉学に励み、ある者は恋をする。これはそんな学園生活を夢見る序章
それは”入学式”だった。
「あー! メルト! 昨日ぶりだな!」
道中に元気に声をかけてくる茶髪の少女はミーアという。昨日道端に倒れてお腹を空かせてそうな彼女に焼き串をあげたら見事に懐かれてしまった。
なんでこいつがここにいるのかと思いつつメルトは笑いながら軽口を返す。
「ミーアか! あの後生きてたのか......」
「『生きてたのか......』とはなんだ! 人を勝手にころすなぁぁぁ!」
顔を真っ赤に染めて起こっているミーアもどうやらこの学園、ラインダールに入学しに来たみたいだ。身長と小ぶりな胸を見て同学年だとは思わなかったということは心の内に留めておこう。
もうそろそろ入学式が始まるようだ。
「「新入生諸君、調子はどうだ?」」
突如として凛とした声が場に響き渡る。長い黒髪、そして毅然とした立ち振る舞い、その声の主はおそらくこの学園の長であろう。
「君たちには今から入学試験を受けてもらう。まぁこの試験は言わば通過儀礼のようなものだ。だが下手したら腕の一本くらいなくなるかもな」
マイクがおろされると同時に足元に巨大な魔方陣が浮かび上がる。
「……は?」
メルトが間の抜けた声を漏らした瞬間、世界が反転した。
視界いっぱいに広がっていた青空も、桃色の花弁も、ざわめく新入生たちの声も、すべてが水面に落ちたインクのようにぐにゃりと歪んでいく。
「ちょ、ちょっと待て待て待て! 入学式って普通、校長の長話を聞くやつじゃないのか!?」
「メルト! 足! 足が光ってる!」
「お前もだよ!」
ミーアが慌てて自分の足元を指さす。そこには複雑な紋様が幾重にも重なり、淡い金色の光を放っていた。魔方陣は新入生全員を包み込むように広がり、まるで獲物を飲み込む巨大な獣の口のように輝きを増していく。
壇上の黒髪の女性――学園長らしき人物は、涼しい顔で告げた。
「第一試験。場所は《幻影の森》。制限時間は三時間。課題はただ一つ――生き残って、学園まで戻ってこい」
「いやいやいやいや!」
新入生たちの悲鳴が一斉に上がった。
だが、その抗議が最後まで届くことはなかった。
次の瞬間、光が爆ぜた。




