表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

あなたを愛しています

読んでくださるとありがたいです。

 

 輪廻転生。そのシステムを壊すために2人がまずおこなったのは、それの実体化であった。アイラ様曰く、輪廻転生という仕組みを壊すには輪廻転生という概念を具現化して破壊をしなければならないのだ。例えば水蒸気を壊すことはできないから、水蒸気から水の状態にして凍らせて砕いて解けないようにすればいい、ということらしい。それを概念で再現するってどうやるんだ、と聞いたら何やら禅問答のようなことを言い出した。

 輪廻転生という仕組みになっているのは、そういう仕組みになっているからだが、それは神と同じように‟そうある“からなっているのであって、ではどうして‟そうある‟のか、というと人間の集合意識がそうであると定義づけて不可視ながらもそういうものとして認識をしているから存在していて、それをそうある、と思考する際に発している脳の熱エネルギーが動かしているのだという。つまり人間が神という存在を思考しなければ神が存在しない、そもそも存在しないものをそうある、として認識しているために観測されてしまっている状態にあることから、同じように輪廻転生という仕組みも存在していると認識してその存在が観測されてしまっているわけであるから、人間はそうあると認識した存在を観測可能な次元にまで縮小化して落とすことができるわけだ。逆にそれを強化して観測だけでなく具現化までを行い、さらにそれを破壊することで人間が認識している輪廻転生という仕組みが壊れるという寸法、らしい。ちなみに、逆のアプローチとして、認識しなければないのも同然であるから輪廻転生という仕組みを人間の無意識集合体から除去することも考えたが、その場合は脳の記憶を司る部分とこれまで生きてきた先祖の蓄積してある部分をいじくらなければならず、簡単に廃人になってしまう上にもしそこの部分をいじったら立ったり呼吸したりすることができるかもわからず、一人一人に脳をいじらせてもらわなければならない、しかもそこまでやっても新たに輪廻転生という仕組みに代わる仕組みが構築されてしまう可能性が高く、リスクが高い上に意味のない行為になる可能性があるため、多少大掛かりになってしまうが輪廻転生という仕組みを具現化して壊すことにしたらしい。

なるほど、なるほど。さっぱりわからん。意味不明だ。そもそも輪廻転生という仕組みを壊す、というところからしてめちゃくちゃだったが、その実行することがさらにめちゃくちゃだ。

「結局のところ、アイラ様は何をどうするんですか。」

「簡単に言うと新興宗教を作る。」


 は?


「なんでそんな話になったんですか。」

「人々に輪廻転生というものが存在すると強く認識をさせることで観測率が上がり具現化するから。輪廻転生という仕組みがあるということを救いであると教えれば嫌でも意識するだろうって。」

わざわざそんな回りくどいことをするのであればいっそのこと、アイラ様を祀って直接人々の救いになればいいのに。それじゃダメなのだろうか。きっとなにか、ダメな理由があるのだろう。


++++++++++++++++


 無事にというか何というか、とりあえず新興宗教は広まった。若干アイラ様を祀っている気もしなくもない人が大勢いたが。アイラ様が起こしている奇跡の数々の種は彼女の能力であるエネルギー操作で、能力を使う時、とても綺麗だからアイラ様を神格化してしまったのだろう。

無事に輪廻転生という仕組みが具現化してきた時に、ある事実が発覚した。

能力とは、輪廻転生では浄化しきれない程にたまった、人間の業であるのだ。

その事実を深く見ることをせずに、問題も起きずに具現化しきった輪廻転生という仕組みをアイラ様とオズヴァルトは壊した。


 壊してしまった。


 単純ならば良かった。何かを。誰か、元凶がいて。そいつをぶっ倒せばおしまいで。それで、めでたしめでたしで終わるならよかった。物語なら、それでハッピーエンドだった。でも、そうはいかなかった。ここは現実だから。そんな都合のいいことで人々が幸せになれるはずもなかった。おしまい、の一言で世界は終わらないしその後も人生という物語は続く。後片付けが必要だ。尻拭いをしなければならない。ハッピーエンドのその先を描かなければならない。終わらない、終われない世界で蛇足を描き続けなければならない。


 輪廻転生という仕組みを壊したことで、人間の業が浄化されることにはならずにたまったままに転生していってしまうのだ。先日、能力がとても強い人が欲望に狂った挙句、醜いモンスターのような姿に変貌してしまったらしい。その醜い姿は、たまりにたまった業が具現化してしまったものだという。


 その場面を直視してしまった後でも、アイラ様の民衆に対する態度は変わらなかった。


 アイラ様は死んでいないだけであった。死んでいるみたいに生きていた。そうやって息をしていた。


 それでもその手で人を救っていた。


 もう見ていられなかった。もうやめてくださいと言いたかった。でもそんなことで止まってくれないとわかりきっていたから何も言うことはできなかった。それでも疑問が口から零れ落ちることを防ぐことはかなわなかった。


 無理やりにでもとめる、と覚悟を決めていたから、これでアイラ様とかわす言葉が最後になるとわかっていたから。


「なんでそんなに献身的なんですか。どうしてそんなにも、その身を削って人を助けるんですか。」


 その言葉を聞くと苦笑したアイラ様が、もういいかな、と呟いて語り始めた。


「しいて言うなら、どうでもいいからだよ。

私はね、他人に興味がないんだ。私は人のことなんかどうだっていいんだ。あのね、教えてあげる。愛の反対は無関心で、聖人と呼ばれる人は頭が狂ったお人よしか他人に興味がない人間だ。そして、私は後者だよ。もちろんオズヴァルトも、ね。全てがどうでもいいから、どこまでも優しくなることができるんだ。例えば怪我を他人が原因でしても痛みなんかどうでもいいからその他人が許せる。例えばお腹が減っても食事がどうでもよくて興味なんかないから食欲もわかないから、満足にご飯を食べることができないときに食べ物を分け与えることができる。例えばいたずらでものを壊されてもその物に興味が持てないから許すことができる。例えば殺されたとしても、全てがどうでもよくて興味なんか湧かなくて生きる理由がないから許すことができる。できてしまうのでしょう。ね、だから殺すことに躊躇なんかしなくていいんだよ。私が生きているのは、強いて言えば、死ぬ理由がないからだよ。それと、約束があるからね。オズヴァルトとの、退屈をさせないようにするという約束が。退屈にさせないように人類救済を目的として掲げていたんだ。そんなこと簡単にできやしないから、きっと退屈することもないでしょう?それだけなんだ、私が今生きているのは。キュウ。あなたが私を殺したいという意思を私は尊重します。その意思は絶対に、私の意思よりも重いものだから。

生きていたくないというのもまた事実だからね。みんなが気持ち悪いんだ。全員で狂ってるんだ。自分の欲望に。消せ切れない罪に。浄化できない業に。私がそうでないという保証が、いったいぜんたいどこにあるというんだ。」

そんな、悲しくなるようなことを言わないでほしかった。


「僕にくれた優しさは噓だったんですか。僕にあなたが与えられた愛情は全てが錯覚ですか。あなたは僕に対してなんとも思ってなかったんですか。僕が目の前で死んでも気にしませんでしたか。たとえそうだとしても。僕があなたにとってどうでもいい存在なのだとしても。たとえあなたがそう思っていても。

 それでも僕は、他でもないあなたに救われました。あなたが。あなたに。あなたは。僕は。あなたを愛しています。

僕はただ、もう一度君が笑っている顔を見たかっただけなんです。欲を言えば僕があなたを笑わせている顔を見たかったんです。愛しています。ただあなたを愛しています。あなただけを愛しています。他の人なんてどうでもよかった。あなたが気にかけているから。愛しているから。だから。それだけです。それだけなんです。僕はあなた以外誰も愛していません。あなたが世界を救うというから、僕はそれに付き合っているだけです。世界なんてどうだっていいんです。ただ、世界を救わないとあなたが笑ってくれないから。だから救う、ただそれだけなんです。あなたは、黙って僕に愛されてください。あなたが愛してくれたのです。あなたが始めたのです。僕はただあなたにもらった愛を返すだけです。」


「愛しています。」



最後までお読みいただきありがとうございます。次の話も読んでくださるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ