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素直になればよかった  作者: 田鶴
本編

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21/55

21.疑い

 悠は、授業を受けに教室に入って行く萌と別れ、探し人を見つけようとカフェテリアへ向かった。()()()()はたいていカフェテリアでたむろしているからだ。


 授業時間が始まっているからか、カフェテリアは空いていた。その中でやたらキラキラしたグループがいるから、すぐに目的の人物は見つかった。


「おい、野村!」


「いつもと違って強気だね。それともそれがほんとの姿?」


「そんなこと、どうだっていい。それより佐藤さんの飲み物に何を入れた?」


「おお、怖い、怖い。証拠もないのに何言ってるんだか」


「正直に言……」


「悠! これから帰るの?」


 悠が野村を更に問い詰めようとした時、真理が取り巻きの中から声をかけてきた。


「そうだけど、今は野村と話してるから邪魔しないでくれる?」


「俺は何もしてない。だからこれ以上話すことないから、真理さんと話しなよ」


 野村はそう言い捨ててカフェテリアを出て行った。


「おい、野村!」


 野村を追いかけようとした悠の腕を真理が掴んだ。


「待って! 私も今日は授業ないから、一緒に帰って()()()()()()よ」


「『あげてもいい』? お断りだね!」


 悠は初めて真理の目と目を合わせた。怒りを孕んだ悠と目が合って真理はすぐに視線を外し、らしからぬ様相でどもりながら理由を聞いた。


「えっ……ど、どうして? お隣同士なんだから同じ帰り道でしょ」


「それでもお断り。この間、野村使って佐藤さんを陥れようとしただろう? そんなことする《《奴》》とは付き合えない」


「何言ってるの?! どこにそんな証拠あるって言うのよ!」


 真理は右手でしきりに髪を触りながら、事実無根を訴えた。


「証拠は……確かにない。でも野村が俺達のグループに加入した経緯がおかしいし、酒に強い佐藤さんが野村にもらったチューハイを飲みだしてから急に酔い始めたっていうのもおかしかった」


 証拠は確かにない。でも真理と付き合いの長い悠は、真理が嘘をつく時に右手で髪を撫でる癖を知っている。


「ふーん……でも全部、悠の推測よね」


「ああ、そうだよ。全部俺の勘。俺の勘がお前と関わるなって言ってる。じゃあな」


「あっ! 悠! 待ってよ!」


 悠は後ろからの真理の呼びかけに全く応えず、振り返りもせずにカフェテリアを出て行った。


 真理は親衛隊の男の子達の前で悠に袖にされ、拳をきつく握った。彼らは肩越しに真理を気遣う言葉をかけてくれた。


「真理ちゃん、あんな奴、気にするなよ」


「そうだよ。俺達がいるよ」


「ね、真理ちゃん?」


「ありがとう……」


 真理は後ろを向いたまま、親衛隊の男の子達にお礼を言った。あふれてくる涙をなんとかしないと、彼らのほうに振り向けない。涙を袖でグイッと拭った真理は、今度は彼らのほうを向いてもう1度お礼を言ってカフェテリアを出て行った。


 その頃、悠はキャンパスを出て駅に向かってズンズン歩いている途中だった。駅前まで来るとちょうど電車がプラットフォームに入って来た所が見え、悠は急いで改札を駆け抜けた。だが非情にも目の前で発車ベルが鳴って電車が動き出してしまった。


 普段運動をしない悠は、駅前からプラットフォームに行くまで走っただけでぜぇぜぇと肩で息をしていた。それがおさまらないうちに真理がやって来た。


「悠! 人前であんな態度止めてよね!」


 悠は真理に話しかけられてくるりと反対側に向きを変えた。真理が悠の正面に回り込むと、悠は身体の向きをまた変えた。それを何度か繰り返すと、真理は声を荒げた。


「ちょっと何?!無視しないでよ!」


 ちょうど次の電車がプラットフォームに入ってきて悠は電車に乗り込み、イヤホンを付けて音楽を聴き始めた。真理はめげずに悠の隣に座って文句を言い続けたが、悠の拒絶の雰囲気に気圧されて黙るしかなくなった。


 家の最寄り駅で2人とも電車を降りたが、隣同士の家に着くまで視線も合わせず無言のまま、微妙な距離をあけて歩き続けた。

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