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素直になればよかった  作者: 田鶴
本編

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19/55

19.打ち上げ

 野村孝之は、人見知りせずにグループの皆に明るく接してすぐに打ち解けた。でも悠だけは、明るい孝之と性格が合わないみたいで、話しかけられれば応答していたものの、2人の間には距離感があった。


 萌とリコは、それまでろくに話したことのなかった女の子2人組ともそこそこ打ち解けられて満足だった。


 孝之の途中加入というイレギュラーはあったけど、彼のコミュニケーション力のおかげもあってグループ発表は無事に終わった。すると誰ともなしになんとなく打ち上げしようという雰囲気になった。特に積極的だったのはチャラ男の名を馳せる孝之だった。


 金土は悠、萌、リコの3人全員が居酒屋のバイトを抜けてしまうと厳しいので、打ち上げは木曜に大学近くの別の居酒屋で開催となった。


「え~、皆さん、それでは発表の成功とこれからの友情に乾杯!」

「何それ! オヤジくさい!」

「何が友情だよ! 萌ちゃんにしか興味ないくせに!」

「え~、ばれたぁ?!」


 孝之が、おちゃらけた様子でまじめくさった乾杯の音頭をとると、皆爆笑した。孝之とちょっぴり微妙な感じもあった悠も、この乾杯の音頭には笑っていて皆、打ち解けられそうなムードになった。


 萌はさすがチャラ男のコミュ力は違うなぁと変に感心していたので、『萌ちゃんにしか興味ないくせに』というヤジが飛んだ時に悠の笑顔が引っ込んだのには気が付かなかった。


 最初はリコと隣同士に座っていた萌だったが、リコがトイレに行った隙に孝之が隣に来た。


「萌ちゃん、飲んでる?」

「言われなくても飲んでるよ」

「そうだよね、萌ちゃん、お酒大好きだもんね」

「えっ?!」


 孝之はいつの間にかチューハイ2杯頼んでいて1杯を萌の前に置いた。


「さあ、飲もう!」

「ちょっと、いつ注文したの? 私、まだあるからいらないよ」

「いいから、いいから、早く飲も!」


 萌はお酒が好きなこともあってグイグイ押され、ついいつもより早いピッチで2杯目のチューハイを空にして3杯目に突入した。それでもかなりの酒豪の萌はそのぐらいではいつもは泥酔しない。


 ――あれ……なんだかクラクラする……


 少しフラフラっとしながら、萌はトイレに向かった。女子トイレは使用中で萌は立って待っていられず通路の壁に寄りかかった。


「萌ちゃん、大丈夫?」

「あ、野村君……ありゃ()がとう……らいしょうふ(大丈夫)……」

「うん、でも大丈夫そうじゃないよ。送っていくよ」

れも(でも)、リコもいりゅ(いる)し……ほんとに……らいしょうふら(大丈夫だ)から……」

「リコちゃんには伝言しておくよ。ほら僕に寄りかかって」


 孝之は萌の肩をぐっと抱き寄せた。


「うっ……は、はにゃ(はな)してっ」


 萌は、口を押えながら孝之をほとんど突き飛ばすような勢いで、ちょうど空いた女子トイレに駆け込んだ。吐いたらすっきりしたのは少しだけで、胸がむかむかして頭が痛いままだった。萌はトイレから出てトイレ前の通路に座り込んでしまった。


「萌ちゃん、送るよ。ほら、立って」


 萌はもう何も考える余力なく、フラフラと立って孝之に抱き寄せられるままだった。


「佐藤さん!」

「萌! 大丈夫?!」


 トイレに行ったままの萌を心配して悠とリコがやって来た。


「心配しなくても僕が送っていくから大丈夫ですよ」

「萌は私と同居してるんだから私が一緒に帰ります」

「でもこの状態の萌ちゃんをリコちゃんは支えきれないでしょ?」

「園田君が手伝ってくれるから大丈夫です。ね、園田君?」

「うん、だから野村君は後の2人と飲んでていいよ」

「ええ!? こんなになった萌ちゃんを放っておいて飲み続けられないよ。それとも僕が信用できない?」

「だから! 私と園田君が萌をうちに連れて行くんで大丈夫です! じゃあ!」


 リコは孝之から強引に萌を奪い取った。リコと悠が片方ずつ肩を貸してフラフラの萌を支えた。


 それを見送った孝之は独り言を呟いた。


「傷つくなぁ。僕が信用できないんだ。ま、しょうがないか」


 スマホをポケットから取り出してメッセージアプリを開いた。


「えっと、ミッション失敗っと……怒るだろうなぁ。まあ、でも元々そのつもりだったけど」


 ポチポチっと何かメッセージを打った孝之は、残ったグループメンバー2人がいる席に戻って行った。


 リコと悠は、居酒屋から出てタクシーを拾おうとしたが、やはり泥酔状態の萌のせいで乗車拒否された。3台拒否されて仕方ないからなんとか電車で帰ろうとした時、4台目のタクシーが停まった。


「園田君、もう私だけで大丈夫だから電車で帰りなよ」

「でも佐藤さんを支えて階段で3階まで行ける? 送って行ってから電車で帰るから大丈夫だよ」

「お客さん、乗るの? 乗らないの?」

「乗ります!」


 なし崩し的に悠もタクシーに乗ることになってしまった。心配していたように萌がタクシーの中で吐くことはなく、眠り込んだまま、タクシーはアパート前に着いた。


「萌、起きて! 着いたよ」


 リコが萌を揺さぶって起こそうとした。


「んん……にゃに()?……りゃめて(止めて)っ……りゅさびゅらにゃ(揺さぶらな)いで」

「中野さん、揺さぶらないほうがいいよ……吐いちゃうかもしれないよ」


 悠は『吐いちゃうかも』というあたりを運転手に聞こえないように声を落とした。


「そう? でも萌起きないし……」

「俺が背負うから佐藤さんを俺の背中に乗せてくれる?」

「わかった。萌、園田君の背中にしっかり掴まって」


 運転手の白い目にもめげず、リコは萌の腕をひっぱって何とか悠の背中に乗せた。


「佐藤さんが落ちないように後ろで見ててくれる?」


 リコが『わかった』と言うと、萌がそれに反応した。


ぎょ()めんねぇ……おみょい(重い)でしょう?」

「重くないよ。それより俺にしっかり掴まってて」


 ずり落ちそうな萌を2人で何度も上に引っ張り上げて、悠とリコはようやく3階の部屋にたどり着いた。


「ありがとう。ここからはもういいよ」

「ここまで来たらベッドまで背負っていくよ」


 萌をベッドに降ろした後、悠はすぐに帰ろうとしたが、リコの言葉を聞いて立ち止まった。


「園田君、ありがとう。萌はいつもならあのぐらい飲んだくらいで酔わないんだけどなぁ」

「そうなんだ。おかしいね」

「そう、私がトイレから帰ってきて野村君が萌の隣に座ってからだよね。でもまさか野村君が萌の飲み物に何か入れるわけはない、よね?」

「うーん……考え過ぎかもしれないけど、気を付けたほうがいいかもね」


 悠は、帰りの電車で()()をやりそうな人間の顔が浮かんできてほろ酔い加減がすっかり覚めてしまった。

18歳成人でも飲酒は20歳解禁のままなんですよね。萌達は大学2年生の設定ですが、もう誕生日が来ていて少なくとも萌、リコ、悠、野村は20歳、20歳になっていないグループメンバーはソフトドリンクを飲んでいたということにさせてください。その割には萌と野村が飲みなれているような表現が出てきてしまいましたが、ゆるゆる設定ということでお見逃しください。20歳未満の飲酒を推奨しているわけではもちろんありません。


ところで最近、タグ詐欺になってきて津軽弁が全然出てきませんが、違う方言のお話です。「背負う」とか「おんぶする」の意味で「おぶる」って言葉を私は使っていたんですが、Wordがうまく変換してくれない!で、ググったら方言だと知ってびっくり!標準語だと思ってた…ン十年の人生で初めて知った真実……

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