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素直になればよかった  作者: 田鶴
本編

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15/55

15.ガールズトーク

 ガチャガチャ――


 玄関の鍵を開ける音がしてリコが帰ってきた。


「ただいまー!」


「しーっ……まだ園田君が寝てるから静かにして」


「えっ?! まだ寝てるの? もう2時過ぎてるよ」


「朝7時過ぎまでお客さんがいてうちに来たの9時過ぎてたから」


「で、何か起きた?」


「なっ……な、何言ってるの?!」


「どもったりして怪しいなぁ~」


『何か起きた?』と聞かれて萌はパンツ一丁の悠を思い出して赤面してしまった。


「あぁ~、赤くなったぁ~! あっやしいなぁ~!」


「ちょ、ちょっと! リコってば、また声が大きくなってる」


「ごめん、ごめん。で、マジにどうだったの?」


 リコは声をひそめたが、顔はワクワクとした表情を隠せない。


「な、何もないよ。最初はすごい遠慮してたけど、あまりにフラフラしてるからうちで休んでいけばって言ったの。《《友達》》なんだから遠慮しないでって説得した」


「《《友達》》かぁ……ふぅ~ん……」


「そ、そう、《《友達》》! 友達になってって頼んだらオッケーだったからね」


 リコはなんだか納得できなくて不満顔だったが、萌は強制的に話題を打ち切った。


 コンコン――


 リコの部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「中野さん、帰ってきたんだね。お邪魔してます」


「ごめんね、起こした? 朝まで営業してたんだってね。もう少し寝ていってもいいよ」


「いや、随分寝かせてもらったし、中野さんも帰って来たのに、これ以上お邪魔しちゃ悪いから、もう帰るよ」


「そんなこと言わずにゆっくりしていってよ。そうだ、お腹すいてない? 私、昼ご飯食べそびれちゃったから、さっと何か作るよ」


 萌はびっくりして悠を引き留めるリコの顔を見た。悠に見えない角度で萌にちらりと見えたリコの表情は、いたずらっ子のように輝いていた。


「え、いいよ、そんな。泊めてもらったのに昼までごちそうになったら悪いよ」


「買い物してなくて簡単なのしか作れないから遠慮しなくて大丈夫だよ。そこに座って待ってて」


 リコは有無を言わさずキッチンへ行った。


 残された2人には話題がなく、萌はなんだか気まずくなった。萌はその無言を『手伝わないのか』という非難に受け取った。


 萌はその外見に反して付き合ったことがあるのは、高校時代に1人とミスコン優勝後に1人だけだ。どっちも短期間で破局した。2人とも女の子はこうあるべきという理想を押し付けた。大学で付き合った人は手料理食べさせてよと言って萌が頑張って作った料理をゴミでも見るかのようにけなした。食べられたものじゃなかったのは確かだけど、あれ以来、料理は萌の鬼門になった。


「……私、料理苦手で皮を剥いた野菜が半分になっちゃうし、玉ねぎのみじん切りがぶつ切りになっちゃうの。料理しているうちに洗い物がシンクに積み重なってキッチン中いつの間にかぐちゃぐちゃになっちゃうの……だから私が手伝うと余計に手間がかかるってリコが言うの……」


「……うん? え? 何?」


 悠はなぜ突然料理の話になったのかわからなくて戸惑った。


「だから私は皿洗い係って決まってるの」


「うん? 2人で決めたことならそれでいいんじゃない? できることをできるほうがやるっていうの、いいと思うよ」


「……ありがとう」


 その後、萌は何を話したのかよく覚えていない。しばらくするとチャーハンのいい匂いがしてきた。


「萌、園田君、できたよ!」


 萌は自分の部屋から机の椅子をキッチンに持って来た。


「ちょっと狭いけど座れるよね?」


「うん、ありがとう! いただきます!」


 卵とネギしか入っていないチャーハンだったが、3人で食べる味は格別だった。食後のコーヒーを飲んだ後、萌がいつものように皿洗いをしようと席を立った。


「佐藤さん、せめてものお礼に俺が皿洗いするよ」


 皿洗いが終わるとすぐに悠は帰ると言い、萌は一緒に駅まで行って買い物に行くことにしたが、リコはワクワク顔しながら疲れたと言って家に残ることになった。このことがまた後でひと騒動をもたらすとは3人とも思ってもみなかった。

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