一口ホラー:さかさま
仕事帰りの男が帰路を歩いていた。
全くの無表情だが、その足どりは重い。
つい昨日の出来事だった。
きっかけは妻とのちょっとした口論。
しかし、それは日々の不満を巻き込んでどんどん大きくなっていき......
男は、妻を絞め殺した
その夜、男は慌てふためいた。
妻の死体がないのだ。
それも、男が目を離した数秒のあいだに、
死体は忽然と消えてしまったらしい。
次の日の朝
男は、自分の犯した罪をなかったことにしようとした。
殺した証拠は消えてしまったし、
首を絞める、その手に感じた抵抗感ですら、今はもう残っていない。
それなのに、男の足取りは重かった。
何も心に感じないのに、
電柱にとまるカラスの声が、やけにはっきりと聞こえた
玄関前に、男は立った
もしかすると、
全てまぼろしだったんじゃないか。
ならば、明日から普通の生活に戻ろう。いい人を見つけて、
子供をもうけて、そうやってまたやり直そう。
そして男は扉を開けた。
妻が 立っていた
首は "さかさま"だった
ごきり、と嫌な音がした
それは首が折れる音。男の首は180°回転し、目の前の妻と同じになった
まっくらな居間
笑いあう男女
両目は下に 唇は上に
ホラー練習用