247 ゴドラタン帝国防衛戦
【ゴドラタン帝国防衛戦】をお送りします。
宜しくお願い致します。
「奴より先に大空洞に向かう。そこで奴を狙撃する」
ビリー・ザ・キッドは、ゴドラタン帝国軍の精鋭部隊もそこに居るだろうとあたりを付けている。
「ゴドラタンを利用するのですな? 」
「ああ、前面は彼らに泥を被って貰うだなや〜。俺たちは信長を挟撃する! 」
この日の為に狙撃の腕を磨きに磨いた精鋭銃撃隊だった。みな信長の本性を知り、ビリーに賛同した者達だ。
「ゴドラタン、止めれますかな? 」
「止めるだよ〜、向こうにはグラウスが来ているしな」
「なんと! 皇帝自ら?! 」
重要拠点とはいえ、皇帝自ら出陣すること自体、異常な事だった。
「信長にアヴァロンが渡れば、世界は火の海になるだよ。それをヒロトも理解している」
信長を、倒してアレを手に入れる。その為に仲間を裏切ってでも、自分はここに居る。
◆◇◆
「ブランデン王国軍、いえ信長軍が結界索敵にかかりました」
大空洞周辺の山々に探知に特化した結界を張り巡らせていた。その結界の一つに敵影が確認される。
「案外遅かったな……フェルミナ、抜かるなよ」
先陣用の腰掛けに座ったグラウス皇帝は、その美麗な眉を少し動かしたが、いつもと変わらぬ冷静さだった。
「は! 第二大隊から第六大隊は、敵前面を食い止める。我に続け!! 」
フェルミナ・マッケローニの近衛騎士団は、大空洞手前の草原に布陣した。その刻まで、なんとしても耐えなければならない。
「見えた」
ミラン・グライアスが、遠目に見える敵軍の陣容を確認する。
「……ごく普通の軍に見えるが……」
デーモンの軍を操る様な男だ。どんな事を仕掛けてくるかわからない。
「放った斥候が一人も戻ってこない……織田信長、召喚者だと聞くが……」
◆◇◆
ゴドラタン帝国軍から、南へ約十デルの地点の小高い岡に、信長は陣を張った。戦場全体が一望出来る場所はここだけだ。
「ゴドラタンも早いですな。流石はナポレオン・ボナパルトの記憶継承をした男と言うところでしょうかな……」
スレイン・東堂・マッカートニーは、亜空間収納から一台の端末を取り出して起動させた。
「余裕だな、足元を掬われるなよ」
「殿ほどの余裕は御座いませんが、なんせ制御起動に間に合ったのは三機のみ。果たしてどれ程の物か……」
そう言いながら、端末を素早く操作した。するとスレインの横の空間に巨大な穴が広がってゆく。その穴の暗闇の中に、赤黒く輝く光が起動音と共に三つ現れる。
「さあ! 行け!! 我が僕達よ! ゴドラタン帝国軍を薙ぎ払え!!! 」
亜空間収納から飛び出した三機の巨大な鋼鉄の塊が、轟音と共に地面に激突した。砂埃を舞い上げ、遮られた視界の中で、赤黒い光だけが蠢いている。
ガキーンンン、ガキーンンンンン!!!
金属と金属とが擦れる轟音が響き渡る。
「?! 敵布陣の前方に土煙! なんだ?! 本陣に伝令を走らせろ! 何か来る! 」
ゴドラタン帝国軍の物見の兵が、双眼鏡でみた光景は、無機質で超重量の巨大な化け物だった。それは森の木々を薙ぎ倒しながら、ゆっくりと近づいてくる。
「戦闘準備!! 三体の機械仕掛けの化け物が、近づいてくる!! 」
伝令の騎馬兵が、ゴドラタン帝国近衛騎士団の間を走り抜け、フェルミナの本陣に駆け込んできた。
「?! あれは?! 最悪だ 」
フェルミナには見覚えがあった。大分形状は異なるが、明らかにあれは……
「なんて事?! あれって、あれだよね?! 」
ミラン・グライアスが血相をかえる。
「……ハヌマーンだ。至急、陛下とラウンズに伝達を! 以前見たハヌマーンは、有線コントロールで不完全だった。あれは完全に自立起動している。それに我らが知るハヌマーンより一回り大きい」
フェルミナは、背中に冷たい物が滑り落ちた気がした。
【ゴドラタン帝国防衛戦】をお送りしました。
(映画【ドライブマイカー】を観ながら)




