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244 帝国の双璧

【帝国の双璧】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 空間の亀裂から這い出てきた、アークデーモンが、音もなく地上に降り立った。それだけで周囲にいた兵士達が、次々と倒れてゆく。強烈な魔のエネルギーを撒き散らされて、耐性のない人間は昏倒した。何も無いところから、右手には巨大な剣、左手には巨大な盾が現れた。それを掴むや否や、その場でアークデーモンは猛威を振るい出した! 魔導団からの魔法攻撃をものともせずに、ゴドラタン前衛部隊に突進を繰り返して、被害が増大した。その頭上から、閃光が走る! アークデーモンの左目から血飛沫が飛び散った!



「此奴は俺がやる! 各大隊は体制を整えて対処しろ!! 」

 ライラック・バルバロッサは、更に加速し、アークデーモンの剣を掻い潜り、その足元から胴に斬り上げた!!


グァグガガガガ!!!!!!


 凄まじい雄叫びをあげ、アークデーモンが巨大な盾をライラックに押し当てた! その瞬間、ライラックの身体が吹き飛ばされる!

 直ぐに身体を捻って着地したライラックだったが、次の攻撃が出来なかった。思いの外、ダメージがある。

 更に追撃してくるアークデーモンの剣戟をかわし、自動ヒーリングで、回復しながら隙をうかがった。



「……やるなら、さっさとやれ!! 」

 ライラックが叫んだと同時に、アークデーモンの頭頂から股間までが、真っ二つに斬り裂かれた!!

 その真っ二つになったアークデーモンの向こう側に、純白の鎧を身に纏った男が立っていた。



「すまぬ、遅れた! 」

 ジークフリード・ランドルフ伯は、そう言いながら左右から襲いかかってきたレッサーデーモンの首を同時に跳ね飛ばした!



「美味しいトコ取りか?! さっさと押し返すぞ!! 」

 ライラックがギアを一段上げて、さらに加速し、周囲のレッサーデーモンを瞬殺し始めた。



「す、凄い……」

 周辺の兵士達が、思わず動きを止めて二人の戦闘に見惚れてしまった。



「あれこそが、帝国の双璧と呼ばれる由縁だ。動きを止めるな! 団長が開けた穴を広げてゆくぞ!! 」

 騎士達の会話の外で、帝国の双璧と呼ばれた二人は、竜巻の如く、周囲のデーモンを駆逐していった。





◆◇◆





「ほう〜、強力な奴らが居る様だ……ならば、更なる召喚が必要だな」

 闇のを具現化した様な漆黒のローブを纏った男が、古代ヘブライ語の詠唱を始めた。



「さあ、我が贄を喰らい出でよ! 」

 男が見つめる先の地面に、赤黒い魔法陣が展開した。その中心に青白い炎が灯り、その炎の中から這い出て来たものは、明らかに今までのデーモンとレベルが違っていた。突然発生した魔法陣に巻き込まれて、多数の兵士達の身体が引き裂かれ、その肉を貪る様に喰らったデーモンは雄叫びを上げた!

 そのデーモンは三メルデほどの体躯を持ち、山羊のツノと牛の頭を備え、巨大な蛇の尻尾が生えている。巨大な戦斧を、旋回させると衝撃波で周囲の兵士達が吹き飛んだ。



「何だあれは?? 」

 ライラックが見つめる先にいるデーモンは、更に異形な顔に変化してゆく。




「アークデーモンを超える地獄の魔王の一人【アスモデウス】だ! 七十二匹のアークデーモンを統べる者よ。貴様ら如きに倒せる者では無い」

 フードの男アハローンは、自分こそが最上の存在だと愉悦に歪んだ笑みを浮かべる。




「魔王だと? ライラック!! 」

 ジークフリードは叫びながら、魔王アスモデウスの懐に飛び込んだ、決意と判断が恐ろしく早い。



「おう! 」

 ライラックは、飛び込んだジークフリードを援護する為、刃に神霊力を載せて、必殺の剣を放つ!



「波動剣!!!! 」

 圧縮された神霊力を剣先に集中させ、音速を超える一振りで、魔王アスモデウスに打ち出した! 魔王肩口から、腰にかけて、ドス黒い鮮血が噴き上がる!

 たまらず魔王は、ライラックに向かって戦斧を振りかぶり、一気に叩きつける。その衝撃を剣で押し流すが、全てを吸収しきれ無かった。凄じい威力が足まで伝わり、地面に亀裂が走る!



「ぶっ飛べ!! 」

 懐に入ったジークフリードが何と拳で魔王を殴り飛ばした!



「馬鹿な?! アスモデウスを殴り飛ばしただと??!! 」

 アハローンは正直脅威を感じた。まさか魔王の一柱を殴り飛ばす人間が存在するとは思わなかったのだ。


【帝国の双璧】をお送りします。


(映画【キューブ】を観ながら)

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