241 女王スターシア
【女王スターシア】をお送りします。
宜しくお願い致します。
機械獣ゴリアテの左右の空間に渦の様な物が発生する。その渦に向かって右腕をゴリアテが捩じ込むと、その腕がいきなりラムセスの足元から伸びて来た! 超反応でそれをかわして見せたラムセスだが、見た目ほど余裕は無かった。
「此奴、余の足元から?! 空間を操るのか」
ラムセスが大鎌でゴリアテの足に攻撃を加えていく。そのゴリアテが今度は左腕を渦に差し込んだ! 頭上から降ってきたその腕が、凄じい轟音と共に動きを止める! ミカエラが放ったライフル弾によってゴリアテの腕が弾かれた。
「ちぃ! 硬てえな! ならば! 」
ミカエラは更にアンチマテリアル・ライフルの次弾をゴリアテの頭にヒットさせてゆく。今度はゴリアテの頭が弾かれた!
「そんな物がゴリアテに通用するものか!! さっさと死んでしまえ!! 」
バイナス・F・グランドロア七世は、叫んだ瞬間、ミカエラに狙撃され肝を冷やした。
「ひぃぃいい!! 」
かろうじてマジックシールドで塞いだものの、四枚のシールドが三枚まで破壊されていた。
「へん! 【ファイヤーグランドライン】世界の魔力が籠ったライフル弾だぜ。普通じゃないんだよ」
ゴリアテは、更に機械蜘蛛を放出し、自らはその巨体を宙に浮遊させた。
「いけません! 何かするつもりです! 皆、私の結界内に! 」
孔明が叫ぶと同時に、印を結んで地面に方陣結界を瞬時に構築きた。
「大火炎地獄!!! 」
機械獣ゴリアテが声を発した瞬間、世界が暗転し、凄じい炎に包まれた!! その魔力の籠った火炎が孔明の結界に吹き付ける!
「皆さん! 神霊力を集中して、私の結界に流し込んで下さい!! 」
孔明が手を翳し、必死にゴリアテの魔力奔流を押し留める!
「くそ!! どうすりゃいいんだ?! 」
ミカエラが泣き言を言う。
「奴の神霊力の中心を探って下さい。そこを破壊するれば奴は崩壊します! 」
孔明がゴリアテの内部図を空間に表示する。だが神霊力の発現点が朧げで捉えきれない。
「このままでは、埒があかない! 俺が奴に取り付く! マーキングするから、そこを一斉攻撃しろ!! 」
ラムセスが一気に跳躍し、ゴリアテの肩に乗る。そして大鎌を振りかぶって、ゴリアテの頭頂に突きさした!
グォォオオオオオオ!!!!
ゴリアテが雄叫びを上げて、ラムセスを振り落とし、踏み潰さんとする。頭頂に突き刺さった大鎌目掛けて、孔明とラムセスは雷撃攻撃を開始した。炸裂し始めた頭頂に、ミカエラがライフル弾を連続で命中させる。その間、夏侯惇は目を瞑り、ゴリアテの神霊力の核となる場所を探っていた。
「必ずある筈……ここか?! 」
目を見開き、疾風の如く駆け抜けてゴリアテ背骨にあたる位置に、抜き放った大剣を一気に突き入れた!! 爆発する神霊力の奔流が周囲に拡散し、衝撃波が広がる!!
夏侯惇は爆風に煽られて飛ばされたが、直ぐに起き上がり、ゴリアテを睨みつけた。核に突き刺さった短剣を中心に、赤黒い亀裂がゴリアテの全身へと広がって行き、そして分子崩壊した!
「ば、ば馬鹿な!! ゴリアテだぞ!?? 」
バイナスは、流石に狼狽を隠せなかった。だが気を取り直し、
「……成る程、流石召喚者と言う事か……だが、貴様らが【エヌマ・エリシュ】より進む事など出来ぬぞ」
そう言い残してバイナスは、霞の如く消え去った。
「奴め、【船】が無くても、【エヌマ・エリシュ】に行けると言う事か? スターシア様、ご無事ですか? 」
孔明が跪くとスターシアは、孔明の手をとり立ち上がらせる。
「其方達が、妾に畏る必要は無い。よくぞ駆けつけてくれた。バイナスがこうも強硬手段に出るとは思わなんだ……ひょっとしたら、他の巫女達にも何かあったのやも知れぬな」
スターシアは少し考えて、
「妾もシステムの呪縛からは逃れられぬ。だが強制力に各巫女によって個人差があるようじゃ。ならば、妾は可能な限りエレクトラを支持する。皆には苦労かけるが、それで良いか? 」
「スターシア様がそれで宜しいのであれば、我らに異存などありません」
スターシアが差し出した手を、孔明は握り返し、満面の笑みを浮かべた。
【女王スターシア】をお送りしました。
(映画【真夏の方程式】を観ながら)




