240 機械獣ゴリアテ
【機械獣ゴリアテ】をお送りします。
宜しくお願い致します。
バイナスが周囲を見渡すと、僧侶騎士団の輪の外側に佇む六人を視認した。
「貴様ら、反逆するつもりか?! 」
六人の中心に居る男は、バイナスのそんな言葉を鼻で笑い飛ばした。
「反逆しているのは、貴方達だと思いますよ。巫女を補佐するべき貴方が、巫女を脅すなどと。愚の骨頂ですね」
左手で長い黒髪をかき上げて、孔明は右手を上げる。
その右手を下ろした瞬間、さらに幾人かの首が飛んだ。
「ひぃぃいい!! 」
数人の僧侶騎士が盾で首を守りながら後退りするが、それも意味無く首と胴体が離れてゆく。
「怯むな!! 魔法障壁で対応しろ!! 」
バイナスはそう言いながら、懐から数枚の札を取り出し詠唱を始めた。
「我ら僧侶騎士団が、強力な魔法戦士だとわからせてやるぞ! 」
騎士団の分隊長と思われる男がライトニングの呪文を放つが、呪文自体がかき消えた!
「な。なんだと? 抗魔法結界か?? ぇええい!! 神霊力の刃を直接浴びせてやれ!! 」
騎士達が剣を上段に構えて、神霊力を刃に練り込んでゆく。その刃を一気に放った! 凄じい炸裂音と爆風が周囲に広がってゆく。
やったかと、思った顔をした騎士の首が飛ぶ。爆風が止んだそこには、先ほどと変わらぬ六人が立っている。
「貴様らの技では、ラムセスの絶対物理防御壁は破れぬよ」
そう言って、痩身の男が右手を左側から右側に払うと、残った全ての騎士団員の首が飛び散った。それと同時にバイナスの詠唱も完成する。
「召喚!! この生贄を捧げ、エクアランの蓋を開けん!! 権限せよ! 古の機械獣!! 」
バイナスの詠唱の完了と共に、大空洞の天井に巨大な渦が発生し、その渦の中心に穴が開く。その穴からゆっくりと、青黒い硬質な何者かが、姿を現してくる。その体躯はゆうに二十メルデを超える。
「何だありゃ?! 童話の巨人か? 」
ミカエラは反射的にベレッタM9を抜きざま神霊力の込められた弾丸を三発放った。その弾丸は硬質的な音を立てて全て跳ね返る。
「アリストラス超帝国で作られた機械獣ゴリアテだ!! 」
勝ち誇った様にバイナスが叫ぶ!
「やるぞ! 君たちでは分が悪い! 後退しろ! 」
孔明が叫びざま、懐から呪符を取りだして、巨人に向かって放った。その脇を錫杖を構えたラムセスが走り抜ける。
「喧しい! 顔が良いからって、俺に命令すんな!! カリム! エルドア! ラムセスのバックアップに回れ!! 」
ミカエラは空間収納からアンチ・マテリアルライフルを取り出して、巨人と距離を取る為に走り出した。
「孔明様! 奴が動きだします!! 奴め、自分の部下の騎士達を生贄にしやがった! 」
惇少年が背中の大剣を抜き放ち、孔明を護る様に前に出る。
「崑崙を守護せし四方の龍よ! 我が敵は汝が敵なり! 」
孔明が九字を切ると、空に舞った呪符が形を変えて四匹の龍になった。一斉に巨人に躍りかかる!
縮こまった身体を伸ばす様に、手足を広げていく巨人は、その腕を凄じい速さでラムサスの頭上に振り下ろした!
その攻撃をかわしながら、その腕に向かって錫杖を叩き込む!
「ちぃ! 硬いな! ならば! 」
ラムサスが錫杖を大上段に構えて、神霊力を流し込む、すると錫杖に神霊力の刃が発生し、巨大な鎌となった。
大鎌を回転させ巨人の足を削りにゆく。唸り声をあげて膝をついた巨人の背中が割れて、そこからニメルデほどのサイズの蜘蛛が生まれ落ちた。それは人間を殺戮する為の機械蜘蛛だった。
「何だこいつらは?! 蜘蛛の化け物だと?! 機械で出来た? 」
カリムが右手を振るうと、不可視の糸が蜘蛛を絡めとる。超硬質のタングステン合金製の糸が機械蜘蛛の胴体を断ち切る事が出来ない。
「蜘蛛を糸で縛るとか、じょじょ冗談みたいなんだな、うん! 」
エルドアが近づくと、タングステン合金の糸が紅く高熱を発した! 機械蜘蛛の装甲が熱で溶け始め。そして遂に切断した!
「私の【妖斬糸】と、貴方の【ファイヤースターター】の合わせ技で行きますよ! 」
【機械獣ゴリアテ】をお送りしました。
(映画【レザボア・ドッグス】を観ながら)




