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238 ちょっとインターバル 

【ちょっとインターバル】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 ビリーは歯噛みした。

 部隊をグランドロア国境付近に展開していたが、南方でアリストラスの銃士部隊が進軍中との情報が舞い込んで来た。出来るだけ戦闘は避けたいが、信長の手前、手を抜く事は出来ない。聞くところによると、新たな召喚者が部隊を率いていると言う話しだ。それもあのワイアット・アープだと言う。



「……腐れ縁だなや〜……メイデル、お前も居るだよな〜、そらぁ〜いるだなや〜 はぁ〜 」

 ビリーは最大限の溜息をついた。この男が、悩んでいる姿は珍しい。



「隊長……準備が整いました」

 副官のバイスが躊躇いがちに伝えて来た。



「直ぐに出立するだよ。目標はゴドラタン帝国国境。敵アリストラス軍の進軍を止めて、信長のゴドラタン越境を支援する」

 腹をくくるしか無いと思った。



「……渡世の仁義か……」

 そう、あの日に全てが決まった。自分自身の役割が……



「は? 何か仰いましたか? 」



「いや、何でも無い……敵軍の指揮官はやばい奴だ。気を引き締めるだよ」



「隊長がそんな事を仰るのは珍しいですな」



「百メルデ先の的に、短銃(ハンドガン)で当てる奴だよ。オラには無理だなや〜」



「なんと! その様な者が。隊長には無理なのでしょうか? 」



「流石に無理だなや〜。頑張っても九十五メルデが精一杯だなや」



「……凡人にはその差がよくわかりませんな……」





◆◇◆



 三国の国境が接するこの土地柄、古来より紛争が絶えなかった。

 ブランデン王国とアリストラス皇國との国境から約一日の距離にある草原地帯に、アリストラス軍が駐留していた。明日には国境を超えて、ゴドラタン帝国の国境警備軍を援護する。



「本当にビリーさんなんでしょうか? 」

 総司はヒロトの幕舎で、その相談をしたかったのだが、ヒロトにベタベタとくっついて離れないワイアットを見てげんなりした。



「部隊の調整をするのがヒロトの役割ならさ〜、あたいの調整をするのもヒロトの役割だよな〜」

 ヒロトの顎を撫でながら、そんな事を言う。



「……あのさぁ、仕事が出来ないよ……」

 ヒロトといえば、嫌がる割には女にモテる。嫌よ嫌よも好きの内って事なんだと総司は納得した。まあ、マーリンが居たら核撃魔法でも喰らってるところだろう……



「ごっほん!! あ〜っと、ビリーさんの事だけど、どうするんですか?? 」



「あいつ……何か別の目的の為に動いている節があるんだよ……そんな事を抱え込む様な性格じゃ〜無かったのにな」

 考え込むヒロトの腕に、自分の腕をワイアットが絡ませる。そうこうしていると、斎藤一が幕舎に入って来た。



「ヒロト、客人がお見えだ」

 いつもぶっきら棒で対応してくる。じつに可愛げが無い。



「客? 」

 問い返す間に、その客人二人が幕舎に入って来た。



「リプリス?!! 」

 思わずヒロトはテーブルの下に隠れてしまった。



「ヒロト様! なんですのその女性の方は? 」

 リプリスはいつもの様に人前では上品だった。人前ではだが……



「いや〜、新しい銃士部隊の隊長のワイアットだよ」



「そうなんですね。失礼致しました。私、ハイエルフの戦士団団長を襲名しました。リプリス・カン・ドリーアールと申します。テーブル下にお隠れになったヒロト様の妻ですの」

 リプリスの自己紹介に、ワイアットの左眉毛がピクりと跳ね上がった。



「……おい……聞いてね〜ぞ?! ぁあ?! 」

 ワイアットに、いきなり胸ぐらを掴まれてテーブル下から引き出されたヒロトの目はオロオロと泳いでいる。



「まあ、まあ、そんな乱暴な事をしては行けませんわ。例え二号さんだとしても、旦那様にそんな事」

 リプリスはあくまでも穏やかに話しをするが、総司にはそれが恐ろしくて堪らない。幕舎から逃げたいが足が動かない。気分的にはドラゴンと殴り合う方がマシだった。



「誰が二号だ! 誰が!! 」

 あわわわわっと消え入りそうな呻き声を発しながら、地面を這う様にして出口に向かうヒロトを、ここぞとばかりに斎藤が邪魔をする。


【ちょっとインターバル】をお送りしました。


(映画【オールド】を観ながら)

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