表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/147

237 土御門

【土御門】をお送りします。


宜しくお願い致します。

「バチカンもアレを霊的な存在だと? 」

 高柳は何が事実であってもそれを受け入れるつもりだった。全てが、既にあり得ない事なのだ。今更一つ増えても大差は無い。



「そうですね。アレは霊的な何かです。ですが、我々の世界で言う悪魔や悪霊の様な存在ではなく、そう、もっと人工的な何か……」



「人が作ったと言うのですか? 」

 ストライカーは背中に冷たいものが触れる感覚を味わった。



「或いは、神が作り給うたか……」



「……例えそうだとしても、アレを野放しには出来ない。いつ孵化するかわからない。いつ孵化してもおかしくない」

 九条は現在までの状況や経過時間から、孵化するまでのタイムスケジュールを、あと三ヶ月と算出した。だがそれはあくまでも予測でしかなかった。



「ここに私が呼ばれた理由もその辺にありそうですね。アレを封印するおつもりか? 」

 アルザス枢機卿は、胸元のロザリオを右手に握り込みながら、答えを探している様だった。



「はい。その通りです。もしアレが霊的存在であるならば、この世界のハイテク兵器は通用しない可能性もある。まあ、試す勇気はありませんがね……」

 ストライカーは、大きなため息をついた。後ろに控える参謀達にも思うところは有るだろうが、言葉を皆、飲み込んだ。



「とてもクルセイダーだけの力では封じ込めは出来ないでしょう。そう、クルセイダーだけではね……確か高柳殿は、日本の皇室にも繋がりが御座いますね? 彼の方にご相談されるべきだと思いますが? 」



「……あの御仁は、既に一線から退かれたお方……」



「まあ、そんな事を言っている場合では無いでしょう。法王の名で、手紙もご用意いたします。あとは、大陸の超大国……」



「中華帝国にも?? 」 

 防衛軍の幕僚達がざわつく。



「事ここに至っては、国同士の思惑など……環太平洋機構が発足して以来、ホットラインが途切れて久いが、そんな事を言っている場合ではないでしょう」

 確かに世界そのものを飲み込む可能性のある存在相手だ。



「彼の国の、霊的暗部を動かす必要がある。その為にも皇室の御助力が必要不可欠」



「わかりました。それは私にお任せ下さい。必ず【土御門(ツチミカド)】を動かします」



「ならば私は例の件に協力しましょう」

 九条の言う例の件とは、アメリカ戦略技術研究所が進めている木星探査船に搭載予定だった相転移エンジンを使って、【災厄の王】を異空間に転移させる計画だった。



「助かります。あれは相転移を固定する段階で煮詰まっていた……教授の【波動理論】が必要不可欠となるでしょう」

 ストライカーが部下に目配せすると、資料データの入ったチップが運ばれて来た。



「こんな事でも無ければ、理論だけで一生を終わっていたところだよ。予算無尽蔵で実験が出来るなら、願ってもない。スレインがこの場に居ればさぞ悔しがっただろうな」



「例の世界に転移した彼らから連絡は? 」

 高柳が、米軍からカズキ達を相転移させる話しを聞いた時に、ひょっとしたらヒロトがまだ向こうで存在していて、コンタクト出来るのでは? と甘い考えがうかんだものだ。



「一度あったキリだ。もう全滅しているかもしれん……予定であれば、そろそろ特異点を発見して、戻ってくる筈だが……」

 ストライカーはお手上げだという手振りをして見せた。



「そうか……」

 


「諸君、ちょうどあと1時間後に、新国際連盟の会合がムンバイで行われる。その後で、かの国の女王陛下と我が国の大統領とで話し合いが始まる。プロテスタントからも霊的暗部を合流させるとの事だ」

 ストライカーが部下から受け取った暗号文を読み上げた。




「皮肉だな、世界が纏まり始めている。こんな事は、宇宙人が攻めて来ない限り発生しなかっただろう」

 高柳はふと、窓の外の月明かりを見つめた、



【土御門】をお送りしました。


(映画【死霊館】を観ながら)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ