235 鬼神百鬼夜行
【鬼神百鬼夜行】をお送りします。
宜しくお願い致します。
蛟龍の攻撃は確実にレオニダスに効果を発揮している。幻獣種である蛟龍が、レオニダスの特殊能力である絶対防御に無属性のダメージを与えた……だが、
「……ファラクスを唯の防御陣だと思うな」
レオニダスがそう呟いた瞬間、傷ついたファランクスの装甲兵達の背後に更なる装甲兵のシルエットが浮かんで来る。
「ファランクスは、現世にいる我が部下達への想いを神霊力で具現化したものだ。我が意識を断ち切らぬ限り、どんなに傷ついても無限再生する。我が三百人隊は無敵なのだ」
最初にファランクスを構成していた人数は四十人ほどだったが、更に構成人数は増え続けている。
「厄介な……まだか玄武!! 」
朱雀には余裕は無かった。さらに増え続けるファランクスの中から、強烈な弓使いも現れ、その執拗な攻撃に耐えかねて、蛟龍も遂に地面に墜落したからだ。
「術が完成した、やるぞ」
玄武が地面に杖で何事かを書き記し、その紋様に呪力を流し込む。この大空洞全体に紅光が張り巡らされた。
「オン アロマカ ウンハッタ! 鬼神招来吽謙娑婆訶!!! 」
大空洞の至る所から、様々な鬼が湧き出して来た。それらがレオニダスと、チンギス・カァンに襲いかかる。
「何だこの化け物共は?! 」
纏わりつく鬼達をチンギス・カァンが吹き飛ばしてゆく。
「何だ?? 」
レオニダスが眼を細める先の鬼達の中から、二回りほど巨大な体躯をした鬼が出現する。他の鬼達が素手なのに対して、この鬼は金色に輝く剣を手にしていた。
「さあ、鬼神が生まれるぞ! 貴様らは終わりだ! 玄武!? 」
朱雀が傍の玄武に声をかけたが、既に事切れていた。
「貴様ら……玄武の最後の術だ! とくと味わうがいい!! 」
他の鬼達と見るからに違う巨漢の鬼が十体現れた。
「青龍! 白虎! 鬼神が降臨した。このフィールドから離れるぞ! 千場!! 」
「わかっている! 何だこいつらは?! 」
千場慶次も直ぐにこの空間の危険性を察知した。肌が泡立つ。
「かつて、我らの太祖が平安の都で猛威を奮った【闇の魔】と呼ばれた怪異を祓う為に、鬼神百鬼夜行と言う術を行った。長く失われた術だったが、私と玄武とでその一端を復活させた」
「一端? 完全では無いのか? 」
「我らが降臨させた鬼神は十体、そしてその触媒となった鬼達は百体だ。だが太祖が降臨させた鬼神は百体、触媒にした鬼は千体にも及ぶと言う」
だがその十体の鬼神がレオニダスのファランクスの装甲兵を薙ぎ倒してゆく。
「ぐっあ!! もののけめ! 」
遂にレオニダス本人に鬼神の剣が届いた! その一撃を盾で防ぎ、鬼神の肩口から縦に切り裂いた! だが直ぐにその傷口が塞がってゆく。
「くぅ! なんと!! 」
レオニダスがもう一本持つショートソードを抜き放ち、左から突きを放った鬼神の頭頂を叩き割った! だがその瞬間、他の数体の鬼神の剣に刺し貫かれ、天にそのまま持ち上げられた。
「レオニダス!! おのれ! 」
チンギス・カァンは、押し寄せる鬼達を【発勁】で打ち倒し、寄せ付けなかったが、殺到してきた鬼神の攻撃に防戦一方となった。
「術師でも無い貴様に、鬼神を倒せるものか! やれ! 」
朱雀がさらに真言を唱え、呪力を高めてゆく。次々と鬼神達がチンギス・カァンに連続攻撃を加えてゆく。
「おのれ! 我らの巫女を返せ!!!! 」
右腕を切り飛ばされたチンギス・カァンは、残った左手で鬼神を顔を掴み、握り潰した。
「愚かな男よ。その巫女に対する執着は、システムによって生み出された幻に過ぎぬ。ひゃぁあはは!! さっさと死んでしまえ!!?? 」
エメラルダスが高らかに笑った瞬間、胸に白刃が生えていた。口から大量の血を吐き出す。
「な、な何だと?! き、貴様!! 」
更に白刃が背中から押し込まれる。
「悪いな。これも計画の一部なんだよ。お嬢ちゃんは俺たちが有効活用させてもらう」
クラビスはそう言い放ち、さらに白刃を押し込む。
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