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231 仕掛け匣

【仕掛け匣】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 エレクトラとヒロトの目の前に光輝く透明な(ハコ)がある。中には確かに古い巻物が安置されている。どう言う理屈かわからないが、透明な匣の中心部に浮かんでいるのだ。その匣に触れる事は出来たが、開け方がわからない。

 光のカケラの様な透明の素材が無数に散りばめられ、それは恰も光の柄模様を作り出していた。


「スターズにも開けられなかったのですね」

 エレクトラが解錠の呪文を唱えても、意味は無かった。

 どの様な素材なのか、わからなかったが、ヒロトにはその匣に見覚えがあった。確かあれは……


 幼い頃、母に手を引かれながら連れて行かれた……


 たしか、箱根……


 これはその時に見た細工……



「……寄木細工……」



「ヨセギザイク? なんです? 」



「私の故郷の伝統的な細工物です。本来は小さく加工した木のパーツを組み合わせて模様を作る。これはその細工を生かした仕掛け匣です」



「仕掛け匣? 」



「この柄を構成するパーツを動かして、正しい手順を辿れば匣が開く……これは呪力によってその動かし方が解る様に出来ている」

 ヒロトは眼を閉じて、何やら呟き、そして最初のパーツをスライドさせた。



「動いた! 」

 エレクトラはヒロトの顔をマジマジと見つめた。この方は何処まで……



「弱い呪力でも動かせる。まあ、この世界に呪力を扱える者が殆ど居ないから、確かに機密を護るには最適か……」

 そんな事を言いながらでもヒロトはパーツをどんどん動かして行く。



「これが最後です。これをこう上に上げて、そしてこれを引くと」

 カチャリと音がして、蓋がスライドしてゆく。



「巻物自体は呪力の塊だな。漢字で何か書いているけど、よくわからない」

 ヒロトは巻物を広げて中身をあらためる。そこには古い中国の漢字で埋め尽くされていた。



「……やはり……」



「読めるのですか? 」

 エレクトラも覗き込むが、暗号化されている様にしか見えない。



「多少は……これは古代中国の仙術に関する奥義と、日本の呪力に関する奥義を融合させた指南書です」



「仙術? 」

 またエレクトラの知らない言葉だ。



「生きたまま不老不死になる術を探求する者達が使う術です」



「アンデットの様な? 」



「アンデットとは違います。あくまでも生きているので。生きた体に神気を取り込んで、肉体を不老不死にする術です。そしてその境地を目指す者達が使う術を、神仙術と言います。あと、呪力と言うのは古代日本で発達した鬼道と呼ばれる、言わば呪いを体系化した術の源ですね。呪力と言っても様々で、良い物も有れば、悪い物もある。良い物は祝詞(ノリト)と、呼ばれ神と交信する為の聖なる言葉です。また悪い物は、その名の通り呪いです。この書物はその両方の相反する力を融合させる為の指南書みたいな物です。言わば陰陽道の根幹にあたる重要な事柄ですね」

 【災厄の渦】で紛失するのを恐れて、晴明が事前に保管していたのか?



「それをたまたまスターズが手に入れた? 」


「?! なんだ? この術は? 」

 巻物の最後に何やら呪符の様な記載があり、その呪文は他の言葉使いよりも新しい。そう自分でも読めるほどに……読める? 何故? 何故読める? 術式が頭の中に流れ込んで来た。この術式は??



「再生術?? いや、魂の再構築か? ……これは……」

 あまりの事にヒロトは絶句した。そんな事が可能なのかと自問してみたが、


「異界に漂う魂を霊力に変換し、この世界で再構築する?! 何という……」



「ヒロト? 」



「必要な物があります。ひょっとしたら同じ物をビリー・ザ・キッドも探しているのかも知れない」

 


「ビリーさんが?! 」



「【災厄の渦】最終戦で、【偽神】との戦いで行方がわからなくなった一振りの刀……」



「それはまさか? 」



「はい、【妖刀村雨】です」




【仕掛け匣】をお送りしました。


(映画【ボーン・アイデンティティ】を観ながら)

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