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228 システムの導き

【システムの導き】


宜しくお願い致します。

 チラチラと、白い物が空からダンスを踊りながら、舞い降りる。


 アリストラス皇國は、すっかり冬になっている。例年はあまり雪は降らないが、今年はいつもより気温が低い。この地域の魔力に乱れが生じている。

 エレクトラは宮廷の執務室で、前線に送る兵士の追加手配を行なっていた。気持ちは複雑である。こんな戦争に意味があるとは思えない。だが護らなければ、負けた王家は消滅し、その民達も根絶やしにされる。



「その呪いを解く方法があります」

 いきなり聞き覚えのある声がした。



「?! ……よい趣味とは言えませんね。何用です? 」

 視線を入口に向けると、いつの間にかスターズが佇んでいた。



「エレクトラ様は優しすぎる。私は見誤ってしまった……才能だけならば兄上様を超えるやもしれませんのに。その才能を優しさ故に眠らせたまま、覚醒なさらない……」



「……なんの話しです? 」



「他の巫女様方が、アレを動かします。もう時間の猶予がありませぬ。貴女様に迷いがあるならば、私が使うまでです」

 スターズはゆっくりとエレクトラに歩み寄る。



「アヴァロンの事を言ってるのか? アレは今の人類には過ぎた力……」

 


「アヴァロンでは有りません。あれはナルザラスと話しがついております。ただ前回は予想外の、邪魔が入った為に予定が遅れてしまった……貴女様は、【マルドゥク争奪戦】が何処で行われるか、ご存知の筈。だから躊躇われている」

 そのスターズの言葉に、エレクトラはゆっくり後ずさる。



「あの殺戮兵器を使った戦争など……どれだけの人命が犠牲になるか……わかって言っているのか? 」



「多少の犠牲など、超帝国の全てを手にする為には小事に過ぎない……さあ、お教え下さい。【超帝国旗艦メタトロン】のアクセスコードを! 」

 その瞬間、世界の色が変わった。明るかった執務室が暗い灰色に染まり、壁や天井は消え去り、暗黒の地平が現れる。



「心象結界?! 」



「さあ、渡して貰おう。貴方には荷が重い」

 暗い影がエレクトラに巻きつこうとしたその時、一気に世界の闇が祓われ、今度は朝日に照らされた金色の世界に変わる。



「なんだと? 私の結界を上書きした?! 」



「ヒロト!! 」

 その太陽に照らされたヒロトが地平線から現れ、エレクトラとスターズとの間に割って入った。



「待たせた! 」

 そしてヒロトとスターズの二人は睨み合い、そこに神霊力が渦を巻いてゆく。



「……貴様か……貴様の役割は【偽神】と【クライン殿下】を始末した時点で終わっている」



「そうかい? だが俺自身の心は納得して居ない」



「……【白銀の巫女】がメタトロンに乗ろうと、私が乗ろうと意味は同じだ。目的とするところは同じなのだ」



「全然違うさ。あんたは多少の犠牲と言った。でもエレクトラはそんなもの、望んでいない。為政者としては、あんたが正しいのかも知れない。だが俺はエレクトラに従う」


 

「私こそがシステムの意思だ。より強い皇帝を選出する為に超帝国のシステムが作り上げた……【白銀の巫女】がその義務を放棄するならば、スペアである他の巫女達か、我ら神巫の中から次代の皇帝を排出する。その為に私は八世代もクローンを繰り返したのだ。貴様如きに何がわかる! 」



「それは、あんたが世界を欲していると言う事じゃないのか?! 」



「私は世界を導きたいだけだ。超帝国が復活すれば、システムによる完全なる管理により、人類は争いから解放される」



「……なら何故、その超帝国は衰退したんだ? 完璧なシステムなら尚更だ。人は人らしく生きられないと、歪んでしまうんだ。管理されるってのは、向上心も無くなる事だろ? そんな社会、何の意味がある? 」



「意見の相違だな。システムの導きも得られない貴様ら召喚者には、わからぬ事だ」

 そう言ってスターズは何処からともなく巨大な杖を取り寄せた。


【システムの導き】をお送りしました。


(映画【トータルリコール】を観ながら)

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