224 悪魔召喚
【悪魔召喚】をお送りします。
宜しくお願い致します。
ヒロトは嵐に身を任せる様に浮き上がり、ジャンヌの姿を目の当たりにした。目から血を流し、白いドレスを赤く染めている。
「ジャンヌ……少し手荒くなる。ゆるしてくれ」
ヒロトは目眩しに爆裂魔法をジャンヌの目の前で連続炸裂させた。左手に纏わせた、ほのかに緑色をした神霊力を叩き込む瞬間を捉える為だ。
「そこ!! 」
ヒロトが左手の神霊力をジャンヌの背中に向けて放つ!!
そのエネルギー体を受けたジャンヌの体を不可視の膜が覆う!
ジャンヌがエネルギー波を放とうとするが、そのエネルギーが全てジャンヌへと跳ね返る。
「【風獣】を使って、攻撃がジャンヌに全て向かう様に覆い尽くした! おっさん!! 」
「おっさん言うな!! 」
武蔵が一気にジャンヌの額の宝石を真っ二つに断ち斬った!!
その瞬間、刻が止まったごとくに、ゆっくりとジャンヌが落ちてゆく。
◆◇◆
「女め! しくじりおったな!! 」
アハローンは、閉じていた瞼を開いて、溜め込んだ神霊力を解放した。周囲にドス黒い気が広がって行く。体力の無い者はそれだけで生命力を失ってしまいそうだ。巨大な青白く輝く魔法陣がアハローンを中心に展開され、己の神霊力をその魔法陣に流し込む。
「我の兄や、あの女は神【ヤハゥエ】に愛されていた。奴らの力は神の力をこの物質世界で代行する事ができる。我はその神に見捨てられたと感じた時に別の存在と契約した……そう、悪魔と呼ばれる存在と」
アハローンが何事かを呟くと、魔法陣から赤黒い腕が伸びて来て、地面に手をつき、そして身体を魔法陣の中から引き出そうとする。
「これが我が悪魔の王と契約した力……【悪魔召喚】」
魔法陣の中から上半身を引き出し、この世界に顕現する。
総司の背中に悪寒が走り、【菊一文字】を青眼に構える。
「第三階位悪魔【ベリアス】。二十七柱の上位悪魔の一柱だ! 人間ごときに止められはせぬぞ!! 」
黒い巨大な翼を広げ、この地上に完全顕現した。周囲にドス黒い魔力を撒き散らす。
「その辺のデーモンとは格が違うね」
総司は、それでも躊躇いなく一歩を踏み込んだ。それは神の領域に届くと思われる最速の一歩だ。【ベリアス】は一瞬、総司の姿を見失ったが、右手から一刀を振り下ろす総司の身体をその腕で吹き飛ばした。
「ぐぅふうう!! 」
口から血飛沫を飛ばしながら後方に吹き飛ばされた総司は、猫の様に一回転して着地した。
「ほう〜?! グックククク、人間の分際でよく耐えたな」
【ベリアス】と呼ばれた存在は人の言葉を喋った。初めはヘブライ語だったが、途中で補正し、日本語で話し出す。
そして人差し指を総司に向け、その指先に魔力を集中させる。直ぐに危険を察知した総司は右に飛ぶ!
総司が居た場所が炸裂した!!
次々と炸裂場所が移動して行く。総司を追尾しているのだ。
「事象補正が必要だな。少し感覚がずれている。ふむ、まだこの世界線に慣れていないからか……」
そんな事を呟きながら【ベリアス】は更に威力をあげて行く。
だが総司はそんな攻撃にも汗一つかいていない。
「北辰一刀流……紫電!!! 」
神速の抜刀術で、逆に攻撃に転じた! ベリアスの右腕を斬り飛ばす!!!
燃え上がる自らの腕を眺めながら、ベリアスはフンっと鼻をならす。すると一瞬で右腕が肘から生えて来た。
「無理だぞ! 上位悪魔に物理攻撃など効くものか!! 」
そう嘯くアハローンの耳に突然声が聞こえた。
「お前なら効くだろう?! 」
いきなり左上に現れた武蔵の一刀が、アハローンの登頂から股間までを真っ二つに斬り裂いた!!!
一瞬苦悶の表情を浮かべたアハローンだが、ニヤリと笑い霧の様にかき消えた。
【悪魔召喚】をお送りしました。
(映画【継承】を観ながら)




