222 人間共よ、悔い改める刻だ
【人間共よ、悔い改める刻だ】をお送りします。
宜しくお願い致します。
ジャンヌ・ダルクが四枚の白い翼を広げて天を仰ぎみる。
すると、空を覆った暗雲が、ジャンヌを中心にして、
晴れ渡り、
天から眩い光が降り注ぐ。
だがジャンヌはその光の奔流の中、苦悶の表情を浮かべている。
『人間共よ、悔い改める刻だ……神罰の炎を受けるがよい!! 』
ジャンヌが右手を水平に差し出すと、その掌に銀色に輝く槍が握られた。それを一気に地上へ放つ!
凄じい爆裂と衝撃波の中、全てが消し飛んだかに思えたが、総司が薄らと眼を開けると、青白い魔力を帯びた結界によって、その爆裂の威力が相殺されていた。絶対魔法防御壁がジャンヌの魔力を吸収、相殺していた。
「ヒロトさん!! 」
総司が遠目にヒロトの姿を見た。
『ヒ……ロ……ト……』
その名前を聞いたジャンヌは更に表情が歪む。
「?! 消えた?! 」
武蔵が瞬きした瞬間、ジャンヌの姿が忽然と消えた。そして消えた筈の殺気が、また現れる。ジャンヌはヒロトの上空五メルデに滞空していた。
『貴様は何者だ?? 』
「俺を覚えて無いのか?? 俺だ、ヒロトだ! それに総司や、おっさん! 皆んな知ってるだろ?! 」
「ヒロトさん!! 」
息を切らせて千鶴子が追いついて来た。
「千鶴子! どうしてこんなところに! 」
「私も守られているだけは嫌です。それに彼女は苦しんでいる」
千鶴子の視線の先には、苦しむジャンヌがいる。
『……うっぐ……し、しらない……知らない!! ぅが! 』
ジャンヌは両手で頭を抑えつけ、身悶えした。
「彼女の記憶は何者かに閉ざされています。そして心の中の憎しみだけを増幅されている」
手を合わせてその瞳はジャンヌの心を射抜く。
「あの額の宝石! あれが制御の核です。あれさえ破壊すれば」
「元のジャンヌに戻るのか、ならやる事は決まっている!
」
ヒロトは背中の魔剣サザンクロスを抜き放ち、精神を研ぎ澄ます。
『ぅぐぐぐぅがぁぁああああああ!!!! 』
唸り声を上げたジャンヌの神霊力がさらに膨らんでゆく。
『死に行け!! 下郎共!!! 神失楽砲撃破!!!!!!! 』
そして爆発的に膨れ上がった神霊力の臨界点に達した時、そのエネルギーを炸裂させた! 神霊力が物質化した光の羽が周囲に炸裂する!! それを絶対魔法防御壁で防ぎながらヒロトは、
「千鶴子、他の騎士団員達と一緒に退避しろ! ジャンヌは俺と総司、おっさんでとめる!! 」
凄じいエネルギー弾の雨の中、千鶴子に魔法防御壁を重ねがけし、お尻をたたいて、走らせる。
「きぁあ! もう! 生きて帰ってきて下さいね! 」
「ああ! 死ぬ気は無い! 」
ヒロトは飛翔呪文で一気に飛び上がり、ジャンヌを牽制する。
「ジャンヌ! 思いだせ! そんな物の制御に負けるな! 」
ジャンヌを傷つける訳にはいかないが、手を抜けば一気にやられる。どうしても防御に徹するしかない。
『我に命令出来るのは、【主】のみ! 貴様ごとき下郎の言葉など!! 』
ジャンヌが翼を振るうと、光の羽がヒロトに向かって飛ぶ!
ヒロトが展開した魔法無効化城壁に光の羽が触れた瞬間、その部分の魔法効果が消失する。
「力を削られる! ぐぅ!! 押されているだと! 流石だ! 総司、まだか?! 』
総司はジャンヌを制御下に置く何者かを探していた。神霊力の発動地点を探っているのだ。
「あれか!? 」
小高い丘の上に胡座をかき、杖を額にあてて神霊力を集中している者を総司は捉えた。
「奴が元凶か! 」
敵の騎兵から馬を奪い、小高い丘目掛けて両軍の間を走り抜ける。
「女め、何を手間取っている。まさか我が【十の災い】の制御に歯向かうつもりか?! 」
アハローンは更にジャンヌの魂の拘束を強めてゆく。
【人間共よ、悔い改める刻だ】をお送りしました。
(映画【十戒】を観ながら)




