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162 紅蓮の名のもとに (改訂-1)

【紅蓮の名のもとに】をお送りします。


宜しくお願いします。

 一条の光が天から差し込んでくる。

 この頃、少女から大人の女へと変貌しつつある。文官などは婿選びに奔走しているが、彼女は興味がなかった。夫を持つ事に興味が無い訳では無く、ある人以外の男性を迎える事に対して興味がないのだ。エレクトラはカイラースの執務室で皇國の業務をこなしていた。この執務室を使うのは三年ぶりだ。もう三年たったと考えれば感慨深い。



「ワイアット・アープ……貴方は今から千年前のアリストラスにて召喚された十剣神の一人。当時世界を崩壊に導こうとした魔神を倒された」



「?! 千年前だって? 正気かい? 」



「当時の貴方の年齢は、伝承が正しければ、二十八歳。いまから七年後に、またアリストラスに召喚されます。但し、今から千年前にですが……」



「段々頭がこんがらがって来たよ。って事は、一旦現世に戻って、また七年後にアリストラスへ召喚される。それも千年前のアリストラスに。って事だね」

 召喚者はやはり恐ろしく理解が早い。



「はい。貴方の事は後世、ようするに現代にまで語り継がれています」  



「ワイアットさんって有名人なんですね」

 千鶴子がそんな事を言うもんだから、どんどん調子に乗る。


「さすが俺様! 既に英雄になっていたとはな! 」



「総司が三年前に来ていたのは本当か? 」

 斎藤一はワイアットを無視して、エレクトラに問いかける。この駐屯地で、総司から訓練を受けたという騎士に出会ったのだ。



「総司さんは、三年前の災厄の渦の際に、私が召喚いたしました。当時、十人の召喚者がケルン神に選ばれ、転生者との激闘の末に、見事【偽神】を倒したのです。アリストラス軍の特別遊撃隊の中核を担ったのが総司さんでした」

 召喚者は目的を達成すると、召喚された時、場所に戻されるとの事だ。総司はなにも語らなかったが……総司は結核を発病して、幕府の御殿医である松本良順先生の療養所にいる。



「…….そうか。総司が…….」

 いまは肺を患っている。それを考えたら、それ程の大業を成した事は武士として誉れだろう。


「はい。彼は若いのに素晴らしい人格者でした。騎士団の者達からも慕われています」



「今回も、その災厄の渦とやらなのか? 」



「いえ、理由が判別出来ないのです。ただ心当たりはあります。貴方様方だけでなく、他にも召喚されている方が大勢おられる事だけは分かっています」



「他にも大勢召喚されているのか? 」

 カズキが話しに割り込む。



「カズキさんですね。ファイヤーグランドラインから召喚された」

 エレクトラから思わぬ言葉が出た。


「?! 【ファイヤーグランドライン】を知っているのか? 」



「はい。【偽神】を倒したヒロトさんと言う方が四年前に召喚されました」



「あのヒロトが神を倒した?! 四年前だと?? 」

 どうやら、こっちと現世では時間軸がずれている様だ。それは当然か……世界線が違うのだからな。




◆◇◆



 氷雪に覆われたこの国の中心たるクリスタルパレス。


 世界が氷に閉ざされても、ここだけは絢爛たる光を放ち続けると言われている荘厳な建造物。細長い柱とガラスの集合体でできた外壁はアリストラス世界でも異彩を放つ。ナイアス大陸北方に位置する、グランドロア聖教連合法國。北方六カ国を纏めるグランドロア聖教、その頂点に君臨するグランドロア法皇が政務を執り行う場所。それがクリスタルパレスである。そのクリスタルパレスでも限られた者しか立ち入る事を許されない場所がある。それが紅蓮の祭壇と呼ばれる聖なる場所だった。そこでは法國で特別な祭事が執り行われる。そしてその祭事を行うのが紅蓮の巫女と呼ばれる存在だった。



「紅蓮の陣営の召喚が終わりました。あとは鍵だけで御座います猊下……」

 真紅の法衣に身を包んだこの世の者とは思えない美女が語りかける。言葉全てに魅了する術が込められている様だ。



「貴様の召喚に引っ張られて女神ケルンも召喚を行った様だぞ。敵の後押しをしたのではないのか? 」



「お戯れを……あの様な異教徒の神などとるに足りませぬ。敵の体制が整う前に我が陣営を整えまする」



「だとよいのだがな……全てはシステムのお導きだ。心してかかれよ」



「は! 紅蓮の名のもとに」




◆◇◆



 

 ゴドラタン帝国の帝都スタージンガーの大通りから外れた酒場街。さらにそこから横道にそれる場所に異国の風貌をした若い男が倒れていた。その男を小さな身体つきの少女が引きずる様にして、一件の酒場に連れてかえると、一刻ほどで目を覚ました。



「……ここは? 」

 酒場のカウンター奥にある仮眠用のソファに横になっていた。顔を冷たいタオルで拭ってくれた様だ。



「気がついたかい?! まだ安静にしてなよ! あんな場所で寝てたら、みぐるみ剥がされるよ」



「君は?! 」



「私はリン・ツォ。この酒場の主人の娘だよ。あんたは? 」



「私は新撰組一番隊 沖田総司」



【紅蓮の名のもとに】をお送りしました。


(映画【里見八犬伝】を観ながら)


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