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221 囚われの聖女

【囚われの聖女】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 広域殲滅魔法の破壊力は、絶対魔法防御壁を多重に展開した【蒼炎の軍】の前線部隊を、ほぼ皆殺しにした。黒煙の立ち込める戦場を見つめるチンギス・カァンは歯噛みした。



「余が読み違えるとはな……貴様らの無念は儂が晴らす。アハローン! レオニダス! 行くぞ! 」



「は! 」

 二人の偉丈夫が草原の覇王に従い前線に向かう。



「アハローン、儂を外道だと思うか? 」



「いえ、王は最善の一手を放つだけで御座います」



「……あの女を放て」



「御心のままに……」




◆◇◆




 突入を開始した第一特別抜刀大隊は敵前衛部隊を蹂躙した。沖田総司の動きが鬼神の如く猛威を振るった。横薙ぎの一刀で、数人の兵士が引き裂かれて行く。



「ひいいい〜っ!! 」

 腰を抜かした敵兵士が這う様にして逃げ出す。



「逃げ首は放っておけ! 逃げ首を刈り取るは恥ぞ!! 」

 総司はそう言い放ち、向かって来る者だけを容赦なく切り捨てて行く。



「総司! 感じるか?! 」

 総司は武蔵の言葉で、妙なプレッシャーを感じ、敵軍の更に奥を見る。



「あれは?! 」

 敵の敗残兵の更に後方から黒く蠢く物が凄じい勢いで近づいてくる。巨大な蛇の大軍が逃げる敵兵士達にも見境なく襲いかかる。



「いつぞやの蛙人間と同じか?? 奴らの術の一種だな」

 その大軍を目にしても、武蔵は嬉々として向かって行く。






「我が【十の災い】を切り抜けれるかな……さあ、今度はお前だ! 奴らを殲滅せよ」

 アハローンの静かな物言いが、女の脳内に忍び込んで来る。その言葉に、あがらう事が出来ない。

 女はゆっくりと宙に浮き、高速で飛翔した。





「なんだ? この神霊力は?? 凄じいパワー?! これはまさか?? 」

 ヒロトは慌てて幕舎を出て、空を見上げる。遥か敵軍の中央から接近してくる飛翔体をその目にした時、すでに前線に向かって走り出していた。




「今度は何だ?! まだ何か来る! 」

 総司は大蛇を切り捨てて前方の空を見た。その飛翔体が総司の頭上で停止し、ゆっくりと高度を下げる。




「なんで?! 貴女は、ジャンヌ!! 」

 そこには天使の翼をたたえた、ジャンヌ・ダルクその人が居た。

武蔵が思わず二刀を抜いた。




◆◇◆






「……いけません! その女性は?! 」

 御船千鶴子は、ヒロトが幕舎を出て行った背中に言葉を投げかけたが、既に遅かった。



「あれは……闇に染まっている」

 千鶴子の瞳が見開かれた。その視線の先の映像が、凄じい速さで、前方に飛ばされる。ヒロトを追い越したその先に。



「これは、ヒロトさん達の仲間なの? だけど……何かが欠落している」

 このままではいけないと思った時には、身体が勝手に動いていた。



「千鶴子殿! 危険だ! 」

 シリウスの静止も聞かずに、ヒロトの後を追って千鶴子は走った。






「確かにジャンヌ・ダルク……だが? 」

 ジャンヌ・ダルクを前にしてヒロトは直ぐに異変に気がついた。全く顔に生気がない。あの快活な彼女の姿は微塵もなく、そこに浮かぶ存在は、まるで別種の得体のしれない者だった。幼少の頃から相手を観察する事には長けていた。僅かな瞬間で最大限の情報を分析する。ジャンヌの額に輝く何かが付いている。



「何だ? 」

 それは紅い宝石の様な物。



「アレが埋め込まれて、彼女の意識が閉ざされています。何とかアレを取り除かなければ! 」

 千鶴子が走り寄って叫ぶ。



「こんなところに! 危険です! 直ぐに下がって! 」

 総司が思わず愛刀【菊一文字】を構える程に凄じい殺気を感じる。



「いいえ、彼女の未来が見えて来ません。このままでは救えない」

 千鶴子は幼少の頃から、目の前の人間の未来の有る無しがわかってしまった。目の前の女性の未来は暗闇だった。だが今ならまだ引き寄せる事が出来るかも知れない。何者かに運命を強制されているのだ。

【囚われの聖女】をお送りしました。、


(映画【シン・ゴジラ】を観ながら)

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