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220 災厄の王

【災厄の王】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 「その辺りも正直わかっていない。相転移のエネルギー体が、【ファイヤーグランドライン】のデジタル空間に突如現れた。それはVRMMOプレイヤー達から【災厄の王】と名付けられ、多数の犠牲者が出たが、その侵食を止める事は出来ないでいる。そしてその影響がリアル世界にまで及んだ。あとは君も知る通りだ」

 高柳誠司はストライカーにコーヒーを渡して、ビールで無くて、申し訳ないとおどけて見せる。



「なら異世界から来たそいつを何とかしなければ、この現象は止まらないと言う事だな」



「ああ。市ヶ谷サーバーに近づく事も困難だ。物理的に建物の周りをコンクリートで覆う作業は急ピッチでさせている……気休めだがな」



「それもあってな、いまアメリカ戦略技術研究所で、木星探索船に搭載予定だった相転移エンジンを使用した異世界転移実験を行っている」

 亜空間に物質転移させた時に発生する莫大なエネルギーを推進力に変換する技術を応用するとの事だ。



「【災厄の王】を元の世界に戻す為か? 」



「ああ、無茶苦茶だが政府にしても、藁をも掴む気持ちなのだろうな〜だが間に合うか? このまま行けばどうなる? 」

 ストライカーの疑問に答える為に、高柳はコンソールを操作して、モニターに表示した。そのモニターには緩やかだが、確実に周囲に対して侵食する様子がみえる。



「侵食をシミレーションした。市ヶ谷サーバーから真円を描く様に侵食し、これが一ヶ月後、三ヶ月後、そして半年後」

 そのモニターを見ると、一ヶ月で山手線の内側が、三ヶ月後には八王子、半年で東京都はおろか近隣の県にまで侵食が及ぶ。



「緩やかとは言いたく無いな……そのまま進むと日本はおろか、地球その物を包み込む……」

 ストライカーは薄寒い物を感じた。



「もし仮に、【災厄の王】に意識の様な物があるなら、何らかの目的もあるのかもしれん。その角度からもインドの【クリシュナ】が探っている」



「俺は駐在武官として谷崎総理に会いに行く。高柳、今度焼き鳥でも食おう」





◆◇◆




 幕舎を出たヒロトは小高い岡に登り、眼下に広がる戦場に目をやる。また自分は殺戮を行おうとしている。ナイアス大陸に骨を埋めると覚悟した筈だ。罪を背負うと決めた筈だ。震える右手を左手で押さえた。父さん……ユイ………………マーリン、



「所詮、血塗られた道だ……ならば」

 そう呟いたヒロトは眼を瞑り、そして、



「集え爆炎の精霊、我は汝の主人にして、爆炎魔法の代行者、そして暗黒世界を従える者……」

 ヒロトは滔々と詠唱を開始した。


 

 




「?! 凄じい暗黒の魔力! 魔導団につぐ! 全力で絶対魔法障壁を張れ!! 」

 アハローンは敵アリストラス軍の更に奥から、凄じい魔力発動を感知し、一級警戒を発令した。そして自らも魔法障壁を展開する。





「……魔は闇に、炎は我が手に……」

 ヒロトの魔力集中が完了した。全ての魔力が右手掌に集中している。



「罰はいつか受ける……真・氷魔爆炎波動(リ・ダムドネシオン)!!!!!!! 」

 ヒロトが右手を空高く掲げる。その掌から打ち出された光が、更に成層圏にまで飛ぶ!!

 その光が幾つもの光に分裂し、地上に向かって落ちて行く。その光の粒はそれぞれが巨大な炎の渦となって、地上の【蒼炎の軍】に襲いかかった!!!





「ば、馬鹿な!?? なんだこの魔法は?? うぐぅ! 」

 衝撃に耐えながら、アハローンは驚愕に眼を見開いた。こんな力は魔神のそれだ。普通では無い。多重絶対魔法防御壁を次々と破壊して、連続した巨大な爆炎の渦が炸裂し、その火炎流は周囲を焼き尽くした!! 爆炎の渦が着弾した半径百メルデは地獄と化した。それが次々と落ちて来る。


 真っ黒な黒煙が戦場を覆う。ヒロトはガックリと膝を落としてその情景を見入った。そして全てを飲み込み、立ち上がって幕舎へと戻って行った。




【災厄の王】を、お送りしました。


(映画【アキラ】を観ながら)


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