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219 異変空間

【異変空間】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 東京都市ヶ谷某所



 空には不自然な黒雲が渦を巻き始めて三日目の昼、陸上自衛軍市ヶ谷駐屯地中央司令部に軍上層部との会合の為に一人のアメリカ人が到着した。こざっぱりしたスーツを着用しているが、筋肉の付き方から、軍人だと直ぐにわかる。彼が到着して直ぐに行った事は、この部隊の制服組トップへの挨拶ではなく、現場のオペレーションルームへ直接乗り込む事だった。



「まて! 許可なく入る事は出来ん! 」

 このオペレーションルームの警備責任者が男を止めるが、男の後ろに居た別の男の顔を見て、通す選択をする。



「…….なんってこった! 空間が歪んでいる。VR空間からの影響で、リアル世界の空間が歪むなどと……」

 アメリカ人はコンソールを叩きながら舌打ちをした。市ヶ谷は【ファイヤーグランドライン】のサーバールームを中心に半径五百メートルは立ち入り禁止になっている。



「ミスター! 困りますな〜、たとえ貴方でもこのオペレーションルームは第一級機密事項」

 制服を着た五十代の男が中に入って来た。



「中町陸将、このシステムは何だ?? 」

 さらにモニターを操作すると、陸上自衛軍、アメリカ陸軍、インド陸軍、などの共有情報画面が出て来る。各軍の戦力が事細かく……



「やれやれ……」

 この男は、アメリカ第十三環太平洋艦隊所属、ストライカー大将。今回の異変についてはペンタゴンから介入を止められている筈だが……

 


「アジア太平洋条約機構が発足して五年。加盟国の軍事を一元管理する為の試作プロジェクト。ここはそのオペレーションルームの一つだよ。まだ先ほどもお伝えしたが、第一級極秘事項だ」



「?! それとこの【ファイヤーグランドライン】と何の関係がある? 」



「【ファイヤーグランドライン】は【戦略戦術戦闘AIクリシュナ】を各国のシステムに実装する為の、テストフィールドだよ。我らは【ファイヤーグランドライン】での膨大な戦闘データを蓄積研究し、クリシュナにフィードバックしている」



「信じられん……いつからそんなシビリアン・コントロールをする様になったのだこの国は?? 議会承認などして無いだろう?? 」

 ストライカーは目の前のテーブルを両手でブチ叩く!



「冷静になりたまえストライカー。久しぶりだな」



「高柳幕僚長? どうして? 」

 部屋に入って来たもう一人の男を見て、ストライカーの表情が少し和らいだ。



博人(ヒロト)がハイスクールを卒業して以来だからもう三年になるか? 」



「……博人(ヒロト)の葬儀に出れなくてすまなかった……」

 現世とナイアス世界の時間の流れには違いがある。ヒロトがこの現世で死んでからまだ一年しか経っていない。ナイアス世界ではすでに三年経過している。



「早くに母親を無くし、塞ぎ込んでいた博人(ヒロト)に、君が軍隊格闘技を教えてくれた事で、博人(ヒロト)も強くなった。あれの最後は、良い顔をしていたよ」



「あの子には天賦の才があった……あれ程の逸材はもう現れ無いだろうな……アカデミーで全教科トリプルAの生徒は、後にも先にも彼だけだった」

 ベテランの特殊部隊員と混じって訓練しても見劣りするどころか、全てを凌駕するポテンシャルを発揮する。まさに戦闘の申し子と言える。



「君にそう言って貰えると博人(ヒロト)も喜ぶ」



「だが何故だ? 何故博人(ヒロト)を【ファイヤーグランドライン】などに入れた?? 」

 ストライカーにすれば、何故こんな危険なVRゲームをさせたのかが疑問だった。



「元々何重にもチェックを行って、危険は無かったんだ。ヒロトが【異世界】と呼称される世界線に飛ばされたのは、向こう側から呼ばれた為だ。それが偶々(タマタマ)ファイヤーグランドラインに居たと言う事だったんだ」

 がだその事を思うと、どうにも割り切れない。



「偶然が重なった結果と言う事か……だが今回のこの空間の歪みや、【クリシュナ】への影響は、【風見鶏】達が、強引に向こう側へ転移したせいでは無いのか?? 」




【異変空間】をお送りしました。


(映画【ミスト】を見ながら)

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