217 次のステージ
【次のステージ】をお送りします。
宜しくお願い致します。
【蒼炎の軍】の伸び切った野営地を、九郎が切り分け、分断した。それをゴドラタン帝国軍第一軍が各個撃破し始めた。敵軍は、炎の道が邪魔をして合流が難しい。魔導部隊が手分けして消化にあたっているが、炎の勢いが激しく進んでいなかった。
「敵勢力、さらに分散していきます。凄い! あんな用兵は見た事が無い」
物見の兵が、興奮気味に双眼鏡から眼を離せないでいる。
「流石だな召喚者! 我が軍は分断された敵【蒼炎の軍】左翼を各個撃破する!! 第一から第五まで騎馬隊を出せ! 」
ゴドラタン帝国軍第一軍は、魚鱗の陣のまま前面に騎馬隊を先行させ、敵軍の真横から突撃を開始した。分断され細切れになった敵勢力に、ゴドラタン帝国軍五万の軍勢が襲いかかった。炎の道が邪魔をして、敵は後方に下がれない。
「ライラックが動いた! 我らは後方に逃れ様としている敵勢力に横撃する。一箇所だけ、逃げ道を開けてやれ! 」
九郎は止まる事なく、更に後方に回って敵を追撃する。散り散りになった者達には見向きもせずに、敢えて大きな軍の塊に向かって行く。世界は九郎の狩場と化した! 当初敵軍十五万に対して一万で始めた戦闘は、既に九万対六万にまでバランスが変化していた。
そして更に敵の数は減り続けている。
だがエルファンの民は、ナイアス大陸有数の騎馬民族だった。その民は同時に優秀な騎馬兵でもある。少しづつだが、混乱から出する者達が集まり、この狩場から離脱し始めた。
「流石だな。ここで狩り尽くしたいが、無理だな」
九郎の予想通り、この狩場からエルファンの騎馬隊が一万五千騎ほど離脱した。
「ライラック軍、更に中央に向けて進軍。敵中央軍が離脱を開始しています」
レオニダスの隊も離脱した様だ。あの重装備でたいしたものだ。
「我らは、予定通り【蒼炎の軍】本軍を迂回して合流地点に向かう! 」
九郎は直ぐに次の行動に移った。
◆◇◆
「九郎が次のフェーズに移行する。流石に早いな。使い魔を飛ばせ! 」
ヒロトは戦略モニターの各軍のステータスを確認しながら、次の行動指示を行ってゆく。ヒロトは、この三年間にナイアス大陸を歩き回り、詳細なマッピングを行った。その広域マップを呼び出して、索敵範囲を広げて行く。
「……やはり……」
索敵範囲を中央域にまで広げると、そこに紅い点滅がある。
「ここは……ロードグランデ大迷宮……そこに紅点が点滅する……嫌な予感がする……」
ヒロトは【災厄の渦】を思い出した。その戦いの中で、忘れもしないこの点滅……
「転生者がいる……」
「転生者だと?! 」
ヒロトの呟きに反応したシリウス団長が、空間モニターとヒロトの顔を見比べれる。
「同じ反応が出ている……」
「何かの間違いではないのか?? 」
シリウスもモニターを凝視して、我が眼を疑う。
「いや……つねに量子電脳アップルシードの自己診断プログラムが発動している。間違いは…….無い」
ヒロトは持っていたペンを指で折ってしまった。まだ生き残りがいたのか??
「?! 何だ? 消えた?? 」
少し眼を外した瞬間に紅点は消えてしまった。
「いや、ここを見ろ! 」
シリウスが示したところに、新たな紅い点滅が発生していた。
「転移魔法? ……ここは? 」
ヒロトは広域マップの所在地を確認する。
「やはりこの場所は、エルファン。まさか【蒼炎の巫女】に接触する気か?? 」
だが今更、転生者が巫女と接触する意味があるのか? すでに【災厄の渦】は終わっている。だが転生者が存在すると言う事は、まだ呪いが生きていると言う事だ。流石にヒロトでも、エルファンの王宮内のマッピングは出来ていない。
「巫女が転生者を使っている可能性は? 」
シリウスはヒロトから空間モニターの使い方を学んで、入力されたデータの中から、蒼炎の巫女の詳細を表示する。
「それは無い。彼女達は、本来【災厄の渦】を止める側だ。召喚者ならいざ知らず、転生者を使う事は決してない」
なら転生者が巫女を狙っていると考えるべきか……
【次のステージ】をお送りしました。
(映画【狂った果実】を観ながら)




