216 重装甲の三百人
【重装甲の三百人】をお送りします。
宜しくお願い致します。
二人の偉丈夫を中心に神霊力が渦を巻いてゆく。
一度距離を取り、再度鍔迫り合い! ぶつかった瞬間、脳にまで響く衝撃が周囲の人間を襲う。
ウィリアムからもう一度距距離をとり、右側から斜めに斬り降ろす! その攻撃範囲を紙一重でかわしたレオニダスは、左下から右上に斬り上げる!
お互いに紙一重で攻撃をかわすが、剣に纏わせた神霊力の刃が、お互いの肌に傷を付ける。
たが、リーチが長いだけウィリアムが少しづつ押し始めた。
「……成る程な、貴様程の男が世の中にいるとは……現世では味わえなかった事だったな……だがこのままでは部が悪い様だ。ならば我が部隊を使わせて貰うぞ! 」
そう言ったレオニダスは、踵を返して
後ろに下がり始める。先ほどまで、後方で陣形を組んだまま微動だにしなかった三百人の重装甲兵が左右に分かれて前進を開始した。巨大な盾を前面に、その隙間から槍を突き出した装甲兵迫ってくる。そしてレオニダスを中央に包み込む様にして、もう一度一つの塊と化した。まるで小さな要塞の様だ。そしてレオニダスの神霊力と、重装甲兵達の神霊力が共鳴を始めた。
「なんだ?! 何が起こっている?! 」
ウィリアムが眼を細めて状況を探る。レオニダスを中心に、その神霊力が増幅されている様だ。ウィリアムは、上段から一気に大剣を振り切り、真空の刃をその正面に叩き込む!
「?! あれを弾くだと!? 」
その時、後方から騎馬軍団の蹄の音が感じられた。
その騎馬軍団が、レオニダスの重装甲兵に対して、ぶつかるでもなく、すれすれをすり抜けながら、剣を次々に叩き込んでゆく。その動きに敵は翻弄されるが、あまりダメージは与えていない。
「九郎か! 」
ウィリアムもその九郎の動きに合わせて愛馬に跨り、その場から離脱を開始した。ぐんぐんと距離を離して行く。
「なんだあれは?! 」
九郎が別の敵部隊に突入しながら問いかける。
「あれはレオニダス。古代ギリシャ時代の大英雄だ」
「あの重装甲兵は? あれに奴の神霊力が共鳴してたぞ?! 」
「多分、あれはレオニダスを守る重装甲親衛隊。ファランクスと呼ばれるギリシャで猛威をふるった当時最強の陣形だ」
レオニダス一世。紀元前四百八十年ごろ。古代アギス朝スパルタ
(都市国家スパルタ)の王。ギリシャの都市国家群の中でも、軍事国家としてギリシャに覇を唱える。当時ギリシャと対立していたペルシャとの戦いの中、ギリシャ都市国家連合軍七千と、自らスパルタから率いた三百の重装甲親衛隊だけで、二十万の敵軍と相対し、敵軍から鬼神の如く恐れられた。他の都市国家群と違い、強権的な軍政を敷いたことで広く知られ。現代での【スパルタ教育】の語源となった。
「か〜ぁ! だからあんなに硬て〜のか」
九郎は更に速度を上げて、方向を右手に変える。
「あぁ、どうすんだ? 」
「なんも」
「なんもって、何もしないのか? 」
「ほっときゃいいよ。俺たちの仕事は敵の撹乱と分断だ。奴等はゴドラタン軍に対して質の良い餌になる」
そんな事を悪びれもせずに言う。
「貴様は、かわらんな〜。 だがそれが確かに最善かもしれんな……」
「とりあえず、分断は上手く行った。後は後続に任せて一旦合流する」
九郎は直ぐに指示を伝達する。戦闘に関しては実に無駄が無い。
「全騎、紡錘陣形にて合流! そのままゴドラタン軍とは反対側の森に入る! 」
◆◇◆
「合図です! 」
偵察隊からの報告で、ライラック・バルバロッサは即反応する。
「全軍! 【蒼炎の軍】に向かって進軍を開始する。魚鱗の陣! 」
その一声で統制の取れた軍は素早くその陣形に変化する。
ライラックが戦場に到着した時には、既に敵軍は至る所に発生した炎の道と、九郎の部隊による攻撃で混乱の極みにあった。
「本当に分断した?! 奴め……これが召喚者か……全軍、突撃を開始しろ! 敵勢力を各個撃破する!! 」
【重装甲の三百人】をお送りしました。
(映画【300】を観ながら)




