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215 火炎航路

【火炎航路】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 ちょうどその頃、この軍勢の南側前方でも【白銀の軍】の突入が開始された。副団長ジレの部隊五千機である。突入を開始して直ぐに部隊を二つに分け、ジレが直接指揮する二千五百騎は、敵軍勢の分断の為、斜め左に突入する。



「止まるな! 止まれば袋叩きにあうぞ! 敵の側面に突破して、直ぐに再突入する! 」

 突然、凄じい勢いでジレ隊が突入して来た為、まだ就寝中の【蒼炎の軍】左翼前方は強硬状態となった。プレイトゥ商会のカノンの放った特殊部隊【影】が、敵の見張りである当直兵を、闇で暗殺し続けていた。その為にジレ隊が突入するまで発見が遅れる事態となった。



「騎馬弓兵も一斉射後に直ぐ離脱せよ! 止まるなよ、速さが全てだ!! 」

 二つに分けられたもう一隊は、弓攻撃専門の騎馬弓兵だった。この隊も左側向かって突入し、左端から右手に向かって火矢の一斉射をおこなった! 

 油を染み込ませた火矢は凄じい勢いで辺を蹂躙する。炎に包まれる野営地は混乱の極みに達した。



「炎の道を作るぞ! 全騎敵中央に向かって転身!! 右手に向かって更に火矢を放て!! 」

 炎で敵部隊を分断してまわる。炎に巻かれない様に、馬足は落とさない。迷いもなく突き進む。



「そろそろ、敵も纏まりが生まれる筈、?! 」

 前方の中央の幕舎の周りに、重装甲の兵士達が隊列を組んでいる。エルファンは遊牧騎馬民族。重装甲の甲冑は珍しい。いや何処か別の文化圏の匂いがする。そしてジレは、その部隊に近づく男を目に止めた。

 その重装甲の部隊の直ぐそばまで男は近づいていた。遠目にアリストラスの騎馬隊が見える。






「ジレか? 上手くなったものだ。俺もうかうかしてられんな」

 男は背中の大剣を抜いて、一気に敵重装甲兵士達に向かって馬足を速める。



「敵襲!! 一騎来ます!! 」

 重装甲兵の一人が気がついて叫ぶ。その声とほぼ同時に数人が前に出て、男の進路に立ち塞がる。



「良い判断だ。それに良く訓練されているな。だが! 」

 男が褒めるのは珍しい。だがしかし実力に差があり過ぎた。男が大剣を振る衝撃波で、兵達は吹き飛ばされた。その向こうに、幕舎から出て来た、見るからに雰囲気の違う男を目に捉えた。



「奴が指揮官か?! 」

 その男が出て来ただけで、重装甲兵達の雰囲気まで変容した。



「?! なんだ? 」

 男の馬が、男の意思に反して立ち止まった。敵の指揮官の気配に怯えてしまっている。重装甲兵が作った巨大な盾の壁。その中心が割れて、指揮官が真っ直ぐに歩いてくる。

 大剣を持った男も、馬から降りて、ゆっくり歩みを進める。

 指揮官らしき男の方は、やけに古風な甲冑を身につけている。古代ローマ時代の物か?



 対峙する二人、



「お互い召喚者だな。我はアナクサンドリデスの息子にして、スパルタの王となる男。名をレオニダスと申す」



「?!、レオニダス一世か?? ギリシャ軍七千と、自らのたった三百人の部隊で、ペルシャ軍二十万と闘った? あのレオニダスか? 」

 男は呆然となった。寝物語に出て来る古代の英雄に会えた喜びで、口角が緩んでいる。



「我はそんなに有名か? 」



「あぁ、有名だよ。俺は子供の頃、あんたの話しを聞かされてワクワクしたもんだ。俺もあんたみたいに強い男になりたいってね」



「そうか……それで強くなれた様だな。気配でわかるぞ」



「あんたにそう言われて本望だ。感謝する! 俺は、イングランド王国軍騎士団、第一特撃大隊長ウィリアム・マーシャル! 」

 ウィリアムは凄じい踏み込みで、一気に距離を詰める。

 お互いの剣に込めた神霊力が重なり合い、その衝撃で二人の立つ地面が陥没する! 周囲にも衝撃波が伝わり、周りの幕舎を吹き飛ばした。お互いに鍔迫り合いを引かない。さらに陥没する範囲が広くなる。



「ひさびさに血が沸き立つ! 多分、うぬとは生まれた時代が違う様だが、内なる物は同じだな! 」

 レオニダスは思わず笑みをこぼした。







【火炎航路】をお送りしました。


(映画【マークスの山】を観ながら)

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