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212 特別遊撃師団

【特別遊撃師団】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 軍馬の蹄の音が大地に響き渡る。


 まだ暗い道なき道を行く。


 城塞都市カルーナから出発した軍勢は約一万騎。対する【蒼炎の軍】左翼は約十五万。どう考えても無謀な戦力差だった。



「まともに戦うつもりは無い。俺は嫌がらせをしに行くんだ」

 そんな事を冗談の様に言い切る男は、軽鎧に身を包み凄まじい速さで馬を操る。その愛馬も、男の指示によく着いてくる。いや指示と言うより、男の思考を読んで動いている。



「今回は妖魔軍と違って、統率のよい軍隊です。上手く行きますか? 」

 副官のジレは、よく九郎のスピードに着いてくる。流石に【災厄の渦】を乗り越えた軍の副官だった。



「俺たちが今回、馬鹿(おちょくる)にするのは、軍隊じゃあ〜ない。それを操っている指揮官達だ」

 


「あぁ! 」

 ジレは九郎の思考に追いついた。



「兵隊なんて、一つ言えば一つ、二つ言えば二つを成す。その指示が正しいならいい……だけど、指示が間違っていたらどうなる? 」

 この源九郎判官義経という男は、たまたま今回は一万騎の兵を率いているが、たとえそれが千騎でも同じ事を嬉々としてやるだろう。そしてその笑顔を見ていると、成功する事しか思い浮かばない。この天才とまた片端(くつわ)を並べる事を誇りに思った。



「今日の夕刻までには例の終結地に到達するぞ! 馬をへばらせた奴は、罰ゲームだからな! 」

 その声が聞こえた将官達は、一様に顔を青くした。

 その一言で一気に気合いが入る。

 絶対に罰ゲームだけは、避けたい。絶対に!!!

 と言う顔だった。




◆◇◆





 【蒼炎の軍】左翼の行軍は、言うなれば軍隊の見本と言える物だった。正に王道。百人隊を形成し、その統率された個体が集まり、群を形成している。槍隊、弓隊、装甲兵隊、軽装機動隊、騎馬隊、補給隊、そして将軍を護る親衛隊。その中で騎馬隊に所属する一人の男に耳打ちする者がいる。その声は直接脳に響いてくる。指向性の念話だ。



『【影】か? 』

 【影】とはプレイトゥ商会の当主カノンの私設諜報機関である。皇國の財政は裕に及ばず、ナイアス大陸南方域全ての経済を牛耳るプレイトゥ商会の裏の顔と言ってもいい。

 


『特別遊撃師団、動きまして御座います。会敵予想は、明日の早朝、三の刻』



『わかった。何人連れて来た? 』



『五十人で御座います。少しづつ潜り込ませました』



『予定通りだな……奴が動き次第、俺も動く……一つ、ヒロトに伝言を頼む。右翼軍に例の女が居たと伝えろ。どうやら【蒼炎の巫女】に召喚されている。精神制御から解放するには、【蒼炎の軍】の指揮官であるチンギス・カァンを斃すしか無い』

 男は、馬上から前方の暗雲を見つめながら、未来の不確定さを、呪った。




◆◇◆




 その日の夕刻、城塞都市カルーナから、北へ一日半走った谷間に、一万騎の軍が到着した。既にその場所で野営準備に入っている軍が居た。ゴドラタン帝国軍第一軍五万の軍勢が集結済みだった。

 帝国軍の誘導に従って、九郎とジレ、そして主だった騎士達は、第一軍の将軍幕舎に到着した。



「カルーナからの強行軍、ご苦労だった。ゴドラタン帝国皇帝陛下になり代わり、その労をねぎらわせて貰う。私はこの第一軍を預かるライラック・バルバロッサである」

 ライラックの差し出した手を、九郎が握る。九郎も握手と言う文化に慣れて来たようだ。



「アリストラス皇國軍、特別遊撃師団長、源九郎判官義経。硬苦しいから、九郎でいいぞ! 」

 九郎の軽いノリに面喰らったが、表には出さずにライラックは先を促した。



「挨拶は程々に、早速明日の作戦を確認したい」

 ライラックは軍略地図に敵の駒と、味方の駒を指し示す。今回の戦略、戦術は当初からゴドラタン皇帝と、アリストラス皇國の軍師であるヒロトの二人が立案した作戦である。その内容は大枠は知っているが、その盤面にまで至る道筋は、目の前に居るこの源九郎判官義経の裁量に任せると言う、承服しかねる内容だった。



 


【特別遊撃師団】をお送りしました。


(映画【キル・ビル】を観ながら)

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