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210 魔人達の饗宴

【魔人達の饗宴】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 部屋の中で声が反響する。



 アントニオ・サリエリの姿が空間の狭間から現れる。



 何も無い空間に切れ目が入り、そこから降りて来たのだ。




「お初にお目にかかる。どうかな私の演奏会は? 」

 サリエリは優雅にお辞儀をして敬意を払う。



「貴様、確かに始末した筈?? 」

 千場慶次は【神刀ロンギヌス】を構え直し、二人の男と対峙した。サリエリの術がわからない以上、部が悪い。



「傀儡ですよ。素晴らしいと思いませんか? 」



「傀儡? 人形使いか? 」

 バチカンのクルセイダーにも同じ様な術を使う者もいるが、本物と見分けがつかないレベルでは無い。だがあれは?



「人体をベースにしていますからね。滑らかな動きでしょう? 」

 サリエリがニンマリと笑う。



「サイコ野郎が」

 死体の(いじく)りなど、吐き気を模様する。

 ヨーロッパにもネクロマンサーなどのゾンビを作る外法を使う術師はいるが、唾棄すべき存在だ。

 自分自身、かなりぶっ飛んでいると言われるが、それでもカトリック教会総本山に所属する者として看過出来ない。



「音楽を極め、造形美術を極め、私は美しいものを追求する事が喜び」



「ならお前も剥製にでもしてやるさ! 」

 千場慶次がサリエリに向かって走る。

 その横合いから織田信長が千場の首を薙ぎ払いに来るが、それを掻い潜り、サリエリの懐にはいった!

 確かに斬撃がサリエリの肩から腕を切り飛ばした筈だった!



「?!! な?! 」

 斬り飛ばし、床に落ちたサリエリの腕が、人形の腕になっている。サリエリ本人の肩を見ると、そこには腕が有る。



「……貴様、本体と人形とが入れ替わっているのか?! 」

 流石に千場慶次は召喚者だけあって、術の本質を直ぐに看破する。ほ〜うっと感心した様に信長が笑う。

 眼を瞑った千場慶次の雰囲気が変わる。

 周りに発散していた神霊力が、内面に凝縮されて行く。その細く研ぎ澄ましたエネルギーを【神刀ロンギヌス】にゆっくりと通してゆく。

 身体から細い糸が放出された。目に見える訳ではない。千場慶次の意識が糸の様にサリエリに向かって飛び、サリエリの首に絡みつく。



「時移し斬り」

 コマ送りの様に千場慶次の姿が、一瞬にしてサリエリの後方に現れた。ナターシャも、信長ですらその瞬間を見逃していた。

 サリエリの首が断ち切れたのだ。そして今度は人形では無かった。それを見た瞬間、すでに千場慶次は、元の位置に戻っていた。



「……面白い事をするのう〜。理屈はわかるが、それをやる人間が居るとはな……いやはや」

 信長は心底感心した。サリエリが倒された事など、どうでも良い様だ。



「見えたのか? 」



「いや、儂も似た様な技を持っているからな……撃ち合ってみるか? 」



「……いや、やめておこう。我が主人の依頼とはいえ、そこまでの義理は無い。俺には他に目的があるからな。無駄なリスクは御免だ……それになんだ外のアレは?? 」

 千場慶次は執務室の外側にいる存在に気がついた。中庭に面した壁が轟音を立てて炸裂し、残った壁を突き壊しながら、その銀色に輝く巨大物体が入って来ようとする。



「ハヌマーンと言うそうだ。アリストラス超帝国時代に作られた殺戮兵器だ」

 信長の左の口角が上がる。その笑みは無邪気と邪悪の狭間に揺れ動く。



「とんでも無い物を持ち出したな。こんな物を何処で? 」

 千場慶次は、言葉とは裏腹に冷静だった。



「それを掘り起こした張本人がそこにいる」

 信長の視線の先に一組の男女がいた。



「貴様、裏切ったのか?! 」

 千場慶次は信じられない者をみた。

 そこには白衣を纏った若い男と、流れ落ちる美しい髪を纏め上げた女が立っていた。スレイン・東堂・マッカートニーは、申し訳なさそうな顔で、


「アリストラス超帝国の遺産が、この王城の地下に封印されていて、その調査を信長殿から依頼されたんだよ。素晴らしいだろ、この【ハヌマーン】は!外殻の素材一つとっても、世界の常識がひっくり返るぐらいの凄い物だ。こんな物を見せられたら、政府の思惑なんて馬鹿らしくなってね」


 




【魔人達の饗宴】をお送りしました。


(映画【レディ・プレイヤー・ワン】を観ながら)

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