189 エヌマ・エリシュに続く道
【エヌマ・エリシュに続く道】をお送りします。
宜しくお願い致します。
バラバラに炸裂したグノーシス・アニマは、それでも尚、自ら身体を繋ぎ合わせようとする。身体の一部と一部が触手で接合し合う。そしてその触手は攻撃にも転じた。無数の黒い刃となって、クリスに襲いかかった。
「キモいわね! ひつこい奴は嫌われるわよ!! 」
クリスは壁面を走り触手をかわす! 触手が次々と壁面に突き刺さるが、上手くクリスは攻撃を交わしていく。さらに触手の束が巨大な腕を形造り、クリスを叩き落とそうとする。
「フン! その程度か。ならこれを受けてみよ! 」
天井に逆さにはりついたクリスは、自らの羽衣を広げる。羽衣はオーロラの様な輝きを大空洞の空間に広げてゆく。すると、グノーシス・アニマの動きが止まった。そして自らの身体に触手を巻きつけて、自らを締め上げる。
「クリス! グノーシス・アニマを操るだと?……どうやら君を見くびっていたな。流石は女神の転生体と言うべきか。それが【女神の羽衣】の能力か……」
「直ぐに貴方も調伏してあげるわ! 」
さらに羽衣の輝きをナルザラスにも向ける。まともにのそ輝きを受けたナルザラスは、だが笑みを浮かべたままだ。
「貴方?! どうして? 」
「どうして【女神の羽衣】の力が効かないのか? 種子も仕掛けもあるんだよ。だが当然教えられないがね。今回は引くとしよう。だがアヴァロンは必ず頂く」
そう言ってナルザラスは霞の如くかき消えた。
「クリス様! 」
「お兄様の指示ですわ。陛下も全てご存じですのよ。ライラック様」
クリスは体に付いた埃を払いながら、ライラックの前に音もなく舞い降りる。
「何とか耐えましたね」
「いえ、封印は解かれてしまいました。流石はナルザラス。ただでは帰らないと言ったところですわね」
アヴァロンの外部装甲に光が走った。いつの間にか、アヴァロンにエネルギーが通っているのだ。
「再封印は可能でしょうか? 」
「私には無理ね。ひょっとしたら、アリストラス皇國のヒロト殿ならあるいは……」
◆◇◆
広大な広間の中央に丸いテーブルを置いて、三人が向かい合う。その中で、純白のドレスに身を包む女性は余りにも可憐だ。まだ幼さの残るその横顔を見つめながら、ビリー・ザ・キッドは、何の因果がと思う。システムに強制されているとは言え、実の兄と戦わねばならないとは…….まるでエレクトラとクラインの様に……
「ナルザラスが失敗しました」
ナターシャ・リ・ボナパルト・ゴドラタンは、悲しみを讃えた表情を見せるが、この感情の起伏もシステムがコントロールしているのか、ビリーには判別出来なかった。
「儂は始めから期待などしていない。戦場で勝ち、そして手に入れる。それ以外の方法など無い」
ビードロのマントを羽織った男は、目の前の葡萄酒を煽る。
「アヴァロンが無ければ、【エヌマ・エリシュ】には到達出来ません。そう聞き及んでいます」
「その【エヌマ・エリシュ】だか? 何処にあるんだなや? 」
「かつて超帝国の最初の首都が置かれたロード・グランデ。それから千年経った頃に超帝国は遷都を行います」
「それが【エヌマ・エリシュ】か……」
「超帝国魔導科学の絶頂期に、外宇宙に渡る為の船を建造し、その外宇宙機動艦隊の拠点でもあったとの事」
「だからアヴァロンとか言う船が必要か……」
「アヴァロンのメインプログラムに、整備ドックに帰還するコマンドがありました。それを起動させれば、オートで【エヌマ・エリシュ】に向かう事が出来ます」
「全ての巫女を倒すか、または傘下におさめる事が第一条件だ。その為には、方法は三つあるが、さてどれから始めるかの」
「信長さんよ、勿体付けるなよ。どうすればいいだか? 」
信長とビリーが同時に葡萄酒を飲み干す。
【エヌマ・エリシュに続く道】をお送りしました。
(映画【ラストレシピ】を観ながら)




