185 スレイン・東堂・マッカートニー
【スレイン・東堂・マッカートニー】をお送りします。
宜しくお願い致します。
ロード・グランデ大迷宮から、西に30デルの地点。山の中腹にある窪地で、東堂詩織は野営準備に入っていた。【風見鶏】からの連絡を受け取り、ナイアス大陸東方域で合流する手筈となった。キャンプの準備と、周辺警備とに部隊を分けて取り掛かる。
「働かざる者、何とやらだぞ、兄上」
詩織は、腰に手を当てて、スレイン・東堂・マッカートニーに冷たい視線を送る。
「いや〜ぁ、愛しの我が妹から、そんな視線を送られると、何だか〜こぅ〜、ゾクゾクするねぇ〜」
スレインは、自らを両手で抱きしめる仕草をして、鼻の下を伸ばす。
「変態か! 変なことしたら、兄上のアレを切り落とすからな。食事の支度ぐらいしろよ」
「そう言う事はクローディアがやってくれるから〜」
そう言いながら、小型のデバイスを操作する。この地域の地形データに、出没するモンスターの情報を重ねて分布図を作成している。
「そういえば〜、風見鶏達って、返り討ちにあったんだって? 」
「あぁ、あの千場を手玉に取る奴がいるとはな。まあ、本気ではなかっただろうがな……」
「なるべく、そんな変な連中とは遭遇したくないね〜。出来ればアレは使いたくないし」
「アレを持って来ているのか? 亜空間収納には大き過ぎて入らないだろ? 」
「やり方はあるよ。僕を誰だと思ってるんだい? 」
「普通の女じゃなく、高性能ダッチワイフを連れて歩く変態兄上だろ? 」
クローディアを横目にそんな事を言う。現在クローディアは省エネモードで、クローズしている。
「流石に生殖器官は付けてないんだよ…….身体の約半分の容量が戦闘に特化した機能だから」
「自衛軍も合衆国軍も、そいつの情報が欲しくてたまらないみたいだな。先月も私の所に内密に打診があったよ。無視したがな」
最先端すら超えた技術が凝縮したオーパーツと呼べるテクノロジーの塊だった。そんな話しをしていると、ベースキャンプの外側からアサルトライフルを使用する音が聞こえ始めた。
「何だ?! また化け物か? 」
東堂詩織が、音がする方向に向かうと、巨大な熊の様な、牛の様な化け物が暴れている。特殊部隊員がアサルトライフで応戦するが、貫通まで至らない。躊躇いも無く、東堂詩織がホルスターからSTIコンバットマスターを抜取り、化物に二連射したが、やはり弾かれてしまう。
「九ミリ弾なんかだと弾かれるか!? 対戦車ライフルを出せ! 」
そんな指示を飛ばす詩織の横を影がすり抜けて、化物に踊りかかった! 天高くクローディアが舞、化け物の背中に音もなく着地して、右手を化け物の背に添える。すると、化け物の背中が膨れ上がったかと思ったら、皮膚が炸裂した!!
グゥッゥウウウウウウグゥオオオオオ!!!!
凄じい雄叫びをあげて、化け物がクローディアを振り払い、後足で立ち上がった。
近くの街で雇った案内人曰く、ベヒモスと言う化け物だ。普段は迷宮の中層にいる。
また音もなく着地したクローディアは、左手を水平にベヒモスに向ける。一瞬鎮まり返った次の瞬間、左手掌から、青白い稲妻が放出され、ベヒモスを包み込んだ!! 肉が溶解し、骨まで黒焦げになり、地響きを立てて倒れ込んだ。
「こんな凶悪な奴まで居るのか?! だがクローディアの最初の攻撃は何だ?! 電撃は理解できるが……」
詩織はベヒモスの死体の炸裂した背中を見ながら、攻撃方法の予想が出来なかった。
「企業秘密だよ。まだ特許申請前だからね。自衛軍に関係する人間に教えられないよ〜」
スレインは受け答えをしながら、ベヒモスとの戦闘データの解析に余念がない。
「被害報告! ベースキャンプのセキュリティ・レイアウトを再度見直せ! 」
東堂詩織は各小隊長に指示を飛ばす。
「兄上! 地形スキャンは終わったのか? 」
「ああ、スキャン完了したよ。サテライトシステムと連動、防衛兵器を起動させた」
【スレイン・東堂・マッカートニー】をお送りします。
(映画【風と共にさりぬ】を観ながら)




