158 新たなる召喚 壱 (改訂-1)
【新たなる召喚】をお送りします。
宜しくお願いします。
ナイアス大陸東方国家群。
この地は太古よりアリストラス超帝国との間で戦争が絶えなかった地域で、未だに地域内で小競り合いが絶えない。武士団と呼ばれる東方独自の軍事力があり、群雄割拠が続いている。
ナイアス大陸南方国家群。
アリストラス超帝国の正統なる系譜であるアリストラス皇國を含む五カ国は先の災厄の渦を乗り越えて、安定した治世を送っている。
ナイアス大陸西方国家群。
グランバルド大砂漠が地域の約七割の面積を占める。遊牧の民が起こした新興国家エルファンが支配を行なっている。更に西に向かうと、そこは蛮族が支配する暗黒大陸へと繋がる。
ナイアス大陸北方国家群。
この地にはケルン信仰とはまた別体系の宗教があり、その宗教指導者が治める連合国家が地域のほぼ全土を掌握している。国土は一年のほぼ七割が雪と氷に覆われている。
ナイアス大陸中央。
この地にはグランパレスと呼ばれる大氷河とロード・グランデ大森林が広がる。元々はアリストラス超帝国の巨大な帝都ロード・グランデリアがあった場所だ。人の作りし偽神【虚なる神】の暴走によって最初の大災厄が引き起こされ、アリストラス超帝国の崩壊の引き金となった。それ以来、この地は【禁忌の大地】とされ人が住まない地域となる。
この世界は自分が居た世界と合わせ鏡になっている事はある程度把握した。ナイアス大陸南方はインドに近い場所だ。気候風土に違いはあるが、それはこの世界に満ちる神霊力によるためだと理解した。この三年間、各地を見てまわり世界の知識を吸収し検分を広めた。時間は幾らでもある。
「……あの時と同じ違和感がある……また何かが始まるのか? 」
ヒロトは日差し避けのローブを頭から被り、グランパレスからナイアス大陸の東方地域に足を踏み入れて一月がたった。乾燥した大地はアメリカの荒野に似ている。
「……本当にあの男がここにいるのか……」
ヒロトは眩しいそうに晴れ渡った空を見上げた、
◆◇◆
神託の杜で美しい女性が膝をついて祈りを捧げている。ドラゴンのスタンドグラスから流れ込む光の奔流が、さらにその女性の美しさを際立たせる。天界より降臨した女神だと言っても信じられる光景だろう。
「やはり……誰かが召喚の儀を執り行っている……もう始まるのですね……」
そう三年前の災厄の渦で、偽神はこの世界から消え去った。それ故、女神ケルンも異世界からの召喚を執り行う必要がない。だが実際に召喚は執り行われた。
「この神託の杜にも、誰かが来られる……三年前の召喚の儀式の効力がまだ残っている……」
エレクトラは召喚者が降臨する【司祭の聖堂】に向かって歩き出した。
「……続きが始まってしまう 」
◆◇◆
母成峠に布陣してすでに一週間が過ぎた。新政府軍の猛攻は休む事なく続く。隊士もかなり減らされてしまった。だがこの会津の人々の顔に絶望感はなく、いつも笑顔で接してくれる。だからこそ自分はこの地に留まりつづける事を選んだのだ。会津藩を捨てて蝦夷に向かうと土方は決めた様だが、俺はそんな気分にはなれなかった。あくまでも新撰組は会津預かり。その会津の為に戦う事こそが、武士の誉れだと思う。土方はこの近藤さんが残した新撰組こそが全てだ。だから彼の考えもわかる。俺たちは袂をわかつ決心をした。それに対して土方は何も言わなかったが、背中はさみしそうだった。
「総司は元気かな……」
突然男のまわりに光がさしてきた。雨が降っているのに自分のまわりだけ光が差し込んでくる。
「なんだ? これは? 」
光が収束していくと、自分の身体が朧げになって浮遊する様な感覚に襲われた。目眩がしたと思った瞬間、男の意識が真っ暗になった。
◆◇◆
カーボーイハットを被った彼女は、腰の銃を確認しながら少し神経質な視線を構内に飛ばす。ここに自分を付け狙う男がいる。自分が一人になるのを見計らって跡をつけて来たのだろう。殺気を隠さずに近づいてくる。俺を狙っているつもりだろうが、逆に誘き出されたのは貴様の方だと言わんばかりの殺気を込めた。
「……フランク・スティルウェルだな‥‥モーガンの仇」
彼女は腰の銃を抜き、近づいて来たスティルウェルのこめかみに狙いを付けて叫ぶ!
「あの世でモーガンに詫びを入れろ!! 」
引き金を引いた瞬間、世界は凄じい光の世界に包まれた。
「なんだ? 奴は? 」
彼女が光で眩んだ目をゆっくり開けると、世界は一変していた。その瞬間意識が遠のいていく。引き金を弾き、奴の頭を弾いた感覚はあった。
【新たなる召喚】をお送りしました。
(映画 OK牧場の決闘を観ながら)