175 会敵予想 (改訂-1)
【会敵予想】を、お送りします。
宜しくお願い致します。
グランバルド大砂漠を辺りきり、今度は荒涼とした原野をゆく。
この部隊は元々、砂漠の民ではなく、この男自ら各地から集め、選りすぐった者達で構成した部隊だ。砂漠の民は、全て奴の配下だと考えた方がいい。それは危険なのだ。そう考え、この一年で独自の軍を整えた手腕は並ではなかった。そしてこの馬の扱い。凄じい速さで駆け抜ける。
「どうか? 」
美影身は隣の副官に声をかける。
「皆、よく着いて来ています。流石です」
布で顔を、覆った副官は馬足を美影身に合わせる様に進む。この美影身に着いて行く事自体、この男の力量も並ではない。
「もう少しでグランパレス大森林だ! 全騎、気を抜くな! 」
さらに馬足を早めてゆく。
「……あのお方は何処に行かれたのでしょう? 」
「あれの事は言うな。考えあっての事だろう。それに多分、全て織り込み済みだ」
何処から絵を描いていたのか判断出来ないが、多分そうだろう。
「この俺の理解が及ばないところからか……癪にさわる」
一瞬だけ口元に笑みを浮かべたが、さらに速度を上げて掻き消えた。
◆◇◆
その一報は、【黒龍の軍】がグランパレス大氷河に入って六日目に届いた。ヴァイアの街を経由して、ロイド・ヘブンに届いたのだが、その報告が到着するよりも早く、ヒロトは行動に移していた。
報告がロイド・ヘブンに到着するのと、ヒロトがヴァイアの街に到着するのがほぼ同時だった。速度を重視した為に、連れて来た兵力は、騎馬を中心に2000騎のみだが、後からライラ団長率いる黒豹騎士団が既に出立している。
「ここから、パルミナを通り、トーウル王国に入っる」
ヒロトが軍略杖で、床に広げた地図を指し示してゆく。
「会敵予想は? 」
総司は、しゃがみ込んで指でトーウル王国の山岳地帯をなぞる。
「ここだな」
ヒロトが指し示す場所をみて、周りの主だった騎士達が騒めく。
「そこはトーウル王国の王都グリアナです。、まさか? 」
「いや……トーウル王国第一軍は、全滅したと思った方がいい。そこから【黒龍の軍】の移動速度を考えると、もう王都に着いている筈だ」
「まさか……」
黒豹騎士団から選抜された騎士達は皆、信じられないと言う顔だった。
「だから、実際に防衛線を引くなら、パルミナ国境だ。俺たちがトーウル王国に到着した頃には、王都は落とされているだろうな」
ヒロトの予想に、みな静まり返っていた。その沈黙を破ったのは斎藤一だった。
「だが、奴らの補給はどうなるのだ? 兵站が続かないだろ? 」
「ああ、その通りだ。だから奴らは引き返す」
「引き返す?? 」
「この戦の本質は、領地の取り合いじゃ無い。軍を潰す事自体が目的なんだ。もっと言えば【巫女】を殺せば済む戦なんだよ。だからトーウル王国の王都を奪う事自体に意味はない。奴……信長の考えは、ただ単にこっちの戦力を削る事にある。だが奴がそのまま来た道を戻るのか、もしくはパルミナの支城を潰しながら戻るのかは、わからない」
信長が、元来た道を戻るなら、空振りになる。だが奴の性格上、より面白い道を、選ぶ筈だ。
「奴は、必ずパルミナを通る。それも悠々とだ」
ヒロトはそう確信した。
◆◇◆
グランバルド大砂漠を抜けた五千騎の軍は、グラーブ高原に入ってみて改めて戦慄を覚えた。徹底的にやっている。本来、ある程度敵を屠れば、戦意を刈り取れる。だから出口を開けて敗走させればいい。だが信長はそれを許さなかった。出口が塞がる事を見越して、徹底して敵を殺戮し尽くした。
「……なんて事だ……」
顔を布で覆った副官は絶句した。
「いや……間違ってはいない……これは見せしめだ。これでトーウル王国軍に恐怖を植え付け、今後の自軍被害を抑える事になる」
「だからといって……隊長は納得出来るのですか? 」
「ああ、出来るさ……同じ事を昔やった事があるからな……」
【会敵予想】をお送りしました。
(映画【ミザリー】を、観ながら)
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