173 黒龍の軍
【黒龍の軍】を、お送りします。、
宜しくお願い致します。
斎藤一。新撰組創設時からの古参隊士。新撰組副長助勤兼、三番隊隊長である。兵庫の無外流皆伝。さらに関口流柔術もおさめる。新撰組剣戟指南もこなす隊の三剣士。天才は沖田総司である。だか剣の道において、恐いのは土方歳三と、斎藤一だと言わしめた。
会津戦争において、最後まで奮戦し、後に警視庁に入庁し、西南戦争にも参戦した。退職後は、東京師範学校(のちの筑波大学)にて、生徒に剣術指南を行う。新撰組の隊士の中で、明治の動乱を
生き抜いた数少ない人物。
「まだだ! もう一本!! 」
斎藤一は、早朝からヒロトと模擬戦を既に六本行っていた。全て斎藤の負けである。最初にヒロトに負けてからと言うもの、毎日この調子だった。
「斎藤さん、駄目ですよ。次は私の番です」
総司が流石に戯れて、割り込んで来た。
「総司は、既にこの世界で余分に戦闘経験を積んでるだろう? まだまだ俺の番だ! 」
斎藤は全く譲る気はない様だ。既にヒロトに斬りかかっている。
ヒロトは、それを軽くかわして斎藤の脇腹に木刀を振り抜く!
「ぐぅうお!! 」
たまらず斎藤がのたうち回るが、それでもまだ目はギラついていた。
「ちょっと! たんま!! 休憩!! 」
たまらずヒロトの方が根を上げた。斎藤を軽くあしらっている様に見えるが、少しでも気を抜くと逆にやられるのは自分自身だと理解していた。斎藤一も並の剣士では無いのだ。
「ゼ〜え、ゼ〜え……存外……体力が少ないな。もう終わりか? 」
斎藤は強がる言葉を投げつけるが、肩が激しく上下していた。
「おい、類人猿と一緒にしたら、旦那が可愛いそうだろ? 」
ワイアットが、そんな事をのたまわるから、ややこしい。
「誰が類人猿だ、誰が! ガルルルル!! 」
「きぁ〜! 恐い〜! 助けて旦那! 」
そんな事を言いながら、ヒロトにベタベタとくっついてくる。かなり気に入った様だ。
そんな馬鹿なやり取りを無視して、カルミナ団長がヒロトに耳打ちする。
「奴らが、ライアット公国を素通りした」
「……そうですか……成る程ね……わかりました。今から軍議を開けますか? 」
「そのつもりで来た。シリウスも先ほど到着した」
「わかりました。行きましょう」
◆◇◆
修練場近くの、会議場に全員で移動した。中には巨大なテーブルがあり、すでにエレクトラとシリウスが待っていた。
「皆さん揃いましたね。では始めます」
エレクトラが。そう言いかけた時に、もう一人入って来た。
「スターズ殿? 珍しいですな」
カルミナが問いかける。軍議にスターズが参加する事は殆ど無い。
「私とて【神巫】の端くれ。【黒龍の軍】が動いたならば無関係では無い。速やかに三人の巫女を倒さなければならない」
スターズの声に感情の、起伏は無い。淡々としている。
「私は倒すと言うより、倒さずに済む方法を模索したいと思います」
エレクトラは目を瞑りながら、皆に語りかける様に話す。
「だが、現に【黒龍の軍】は、向かって来ているのだろう? 」
ケルン教団のリアンカ大司教はナイアス大陸南方地域の広域地図のグランパレスを指差す。グランパレスは外側を大氷河が、内側には大森林が広がる。
「いや、奴らはライアット公国を素通りして、ナイアス大陸西方地域に向かっている」
カルミナは軍略杖で、西方地域の戦闘国家エルファンを指す。
「……引き摺り出す気ですね……」
ヒロトは右手を顎にあてて、地図を凝視している。
「引き摺りだす? エルファンをか? ヒロト? 」
シリウスはヒロトに話しかけるが、反応が返って来ない。
「あるいは、トーウル王国をか……」
ヒロトの思考は更に深い領域に入っていった。既に周りの声が聞こえていない。
「ここは? 」
斎藤一が、山と山に囲まれた地域を指刺す。
「ここはグラーブ高原だ。北はブラーム山脈、南は山を越えればパルミナ連合王国の砂漠地帯が広がる」
ヒロトは斎藤の視線を感じた。多分同じ事を考えたのだろう。
「信長はそこを戦場にするつもりだな……」
【黒龍の軍】をお送りしました。
(映画【陽気楼】を観ながら)
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