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169 やり切れぬ思い

【やり切れぬ思い】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 総司は跳ね飛ばされた身体を空中で捻って着地した。

 視線はコートの男から外さない。

 男は、ヒロトの眼を真っ直ぐ直視している。


「ヒロトさん、こいつ術師です。それに召喚者か? 」

 総司は直ぐ体制を整えて、男の右手側から間合いを測っている。



「ほう? 召喚された事を知っている? 貴様らは何だ?? 」

 レザーコートの男は、少し興味を持った様だ。



「俺たちも召喚者だからさ」

 ヒロトも総司とは逆に左手側から間合いを詰める。



「なら何故この異世界の番犬の様な事をしている? 」



「人殺しなど容認出来ない! 」

 ヒロトは魔剣サザンクロスの切先を男の顔に向け、突きの構えを取る。



「俺たちは搾取する為にこの地に来た。奪うのは当たり前だ」

 男が右手を振るうと、右手側の空間から、鎧に覆われた巨大な腕が現れる。そして同様に左手側からも。男の手の甲に紋様が浮かび発光する。


(何らかの召喚術か? )

 ヒロトは一気に男の懐に飛び込んで、凄まじい突きを放った。が既に男はその場に居ない。



「ヒロトさん! 後ろです!! 」

 総司の叫び声と同時に男の太刀筋が頭上から降ってくる。

 それを物理防御結界で弾き、横に剣を薙いだ!

 その斬撃を男は鎧腕で防御する。



「これを躱すか?! 」

 男は笑みを浮かべて、更にヒロトに追撃する。そこに総司が横から割って入り、必殺の一撃を放った!



「閃光剣!! 」

 愛刀【菊一文字】が閃光を放ち、男を衝撃波が襲う!

 爆散した土煙の中、ゆらりと男の影が揺らめく。

 男を不可視な盾が覆っていた。



「朱雀……余計な事を」

 いつの間にか、男の側に一人の女が立っていた。



「撤収します。呪物は手に入った。将門公(まさかどこう)は我らの手の内に」

 朱雀と呼ばれた妖艶な女は、踵を返して男の袖を掴む。



「え〜、もう帰るの? 」

 レザーコートの男は身振りで、残念がる。



「白虎が【風見鶏】を探せとウザい。行くぞ! 」



「待て!! 」

 ヒロトが叫ぶが、男達の転移を止める事は出来なかった。





◆◇◆




 アリストラス皇國、皇都ロイドヘブンに到着したのは、それから七日後の昼前だった。直ぐに皇王エレクトラ陛下に謁見する事になる。重鎮達の前では、女王然とした態度だが、後から自室に来る様に次女長のサーシャが伝えに来た。



「よく無事で! 」

 エレクトラは総司と握手して、少し涙ぐんでいた。総司は少し照れた笑顔で多くは語らなかった。公務では決して見せない弱さを、ヒロト達の前では見せる。



「ヒロトも大役ご苦労様」



「いや、結局ビリーを連れ帰る事が出来なかった。俺の不手際だよ」

 ビリーを連れ帰れなかった事は痛恨の極みだ。織田信長が率いる軍が近づいてくる。



「ナターシャの事は、グラウス陛下から聞き及んでいます。私以外の【巫女】は、超帝国のシステムの影響を受けて、マルドゥク争奪の為に動いています。三人の巫女を葬れば、アリストラスの全てが手に入る。【災厄の渦】で超帝国の正当な後継者だったお兄様が亡くなり、そのスペアである【四人の巫女】が玉座を巡って争う……そう、これも【災厄の渦】と同じく呪いです」



「他の三人の【巫女】を殺さなければ止まらないのか? 」

 それでは、ナターシャはどうなる?



「何よりも先に、【マルドゥクの壺】を手にすれば、或いは呪いを止められるかもしれない……でも、それは賭けです」

 自信のない顔でエレクトラは申し訳なさそうにする。



「止める事が出来る可能性さえ有れば、それは確率が五割と言う事です。賭けとしては充分に成立する。それで、その何とかの壺は、何処に? 」

 ヒロトは少しの光明を見つけ、手繰り寄せる手立てを考え始めた。


「アリストラス超帝国の言い伝えでは、【エヌマ・エリシュ】に有ると言われています。ですが、肝心のそれが何処に有るのかは、わかっていません。兄ならば何か知っていたかも知れないけど……」








【やり切れぬ思い】をお送りしました。


(映画【海の上のピアニスト】を観ながら)

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