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167 異界からの使者 (改訂-1)

【異界からの使者】をお送りします。


宜しくお願い致します。

「どうしたんだ? 黒龍の巫女に何かあるのか? 」

 グラウスの様子は普通じゃなかった。手が震えている。

 夕日に照らされた横顔に悲壮な表情を浮かべ、


「……黒龍の巫女は……ナターシャだ」



「え、ナターシャ?! 」



「ナターシャが黒龍の巫女と判断されたのは半年前だ、ボナパルト家は、約百五十年前にアリストラス皇國から嫁がれたクローラ様の血が入っている。巫女と判断され、その直ぐ後に【神巫】であるナルザラスから儀式を受けた」



「目覚めのか?! 」



「そうだ。覚醒の儀式によって、超帝国の歴代の巫女の記憶継承がなされた。そしてナターシャは、その記憶に喰われてしまった……システムに負けたあの子は、超帝国皇帝になる為だけに行動している」



「ならば、織田を召喚したのはナターシャか。ナターシャは何処にいる? 」



「わからぬ……四ヶ月前から行方がわからなくなった。そして、その一月後には正体不明の軍が生まれる……」



「それがブランデン連合軍か」



「ナターシャがゴドラタンに刃を向るなら、俺はそれを止めねばならない。ナターシャがエレクトラ陛下を殺すと言うなら、俺は盾にならねばならない。うぉぉおおおおおお!!! 俺はどうすれば良いのだ??!! 」

 グラウスは両手の拳をテーブルに叩きつける!


「ナターシャを元に戻す方法はないのか? 」



「わからない……だがひょっとすると、エレクトラ陛下ならば或いは……」



「ならば俺がエレクトラに会いに行くよ」

 ヒロトは窓の外の夕日を眺め、総司と目で申し合わせ、席を立った。





◆◇◆




 一旦、焼き鳥屋【暁の鳥】に戻って、総司から現世での事を聞いた。肺結核を患い、新撰組から離脱し、幕府の御殿医である松本良順先生により、千駄ヶ谷にて匿われ居た事。近藤勇がつい前日、千葉の流山で新政府軍に捕縛された事。そして、板橋にて斬首された事などを聞いた。

(史実では近藤勇の斬首から二ヶ月後に総司は病で行く。本来なら肺結核の末期の筈……現世に戻れば、今度こそ死が待っている)



「……身体の調子はどうなんだ?? 」



「それが、こっちに召喚されたら肺病が治ってるんだ。もう死ぬだけだった私がほら、この通り! 」

 放り投げた徳利(とっくり)を空中で縦に真っ二つにしてしまった。だが剣は鞘に収まったままだ、鍔鳴りすら聞こえない。



「こら!! 店の物を勝手に壊すな! 」

 奥で調理をしていたリン・ツォに怒られて、シュンっとなって小さくなってしまった。新撰組の剣鬼と呼ばれていたとは思えない。


「いい子だな」

 ヒロトがニヤニヤしている。


「あの子が助けてくれたんだ。頭が上がらないよ」


「総司は女に慣れてる割に、好きな子には意外とおとなしくなるよな? 」


「……恩義があるだけさ……」


「……兎に角呑もう! 明日はロイドヘブンに向かうからな」




◆◇◆




 ヴァイアの街は【災厄の渦】の爪痕から復興をしつつあった。外国からの商人で溢れ、昔以上に活気に包まれていた。その喧騒から離れた路地裏でちょっとした騒ぎが起きていた。



「……どうしても、教えてもらえませんか? 」

 黒いレザーコートに身を包んだ長身の男が、カタギには見えない大男を高く持ち上げ、壁に向かって男を抑えつけている。正確には空間から生えた鎧腕に襟ぐりを掴まれて、持ち上げられている。



「……あいつらは、ヤバイんだ。組織が崩壊したといっても、まだ中枢は闇に潜って生きている」



「小さな木箱に見覚えはありませんか? 中には髑髏が入っている。こんな文字が頭に書かれた」

 そう言って男は人差し指で空間に文字を書く。その文字が発光して、空間に浮かび上がった。



「し、知らん! 」


「どうします? 知らないって言ってますよ。朱雀ちゃん、殺しちゃっていい? 」



「好きにしろ。呪物反応は捉えた。やはりこの街にある様だ。【平将門】の依代はもう直ぐ手に入る」

 朱雀(すざく)と呼ばれた女は舌舐めずりしながら満面の笑みをこぼした。



【異界からの使者】をお送りしました。


(映画【007 慰めの報酬】を観ながら)

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