大戦への足音
【大戦への足音】をお送りします
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「彼奴等、なにかする気だの……同じ陰陽を学んだとは言え、時代が代われば技もかわる」
漆黒の狩衣を、纏った初老の男は、白くなった髭を撫でて、ククッと笑をこぼす。
「この地の技に詳しいのか? 」
白銀の鎧に身を包んだ存在は遠くを見つめながら問う。
「小手先の技など知らぬがな…我が加茂の一族が、日の本に伝えた呪法の残滓の様な物かの。お主の様な南蛮の者には縁のない事よな。我れの技は、技にあらず。神に成り替わるための道筋よ」
さらにククックっと笑い、眼下に広がる地上の灯りを見下ろす。
「神になる事が、貴殿の目的か? 我とは真逆だな…」
鎧兜の奥に紅い光が灯る。
「其方の目的はなんだ? 」
初老の男は、何もない空間から錫杖を出現させて左手に掴む。
「我か? 我の目的は、我を裏切った神を殺す事よ…」
「その目的、我が手助けしてやろうかの。手始めにこの都を火の海に沈めてな。所詮我らは、あの男の外法によって蘇ったのだ。呪いなら呪いらしくやらねばな」
そう呟いて、二人はゆっくりと地上に向かって降りていった。
◆◇◆
「高エネルギー反応、急速接近!! 」
オペレーターの叫び声で、作戦室の空気が一変した。
「来たか?! 」
高柳参謀長は、広域マップモニターに表示された二つのエネルギー体を凝視した。
「一つは魔導反応! もう一つは!? 陰陽反応です!! 凄まじく強い反応です! 」
示された陰陽反応は、土御門一門の誰よりも強い反応だった。
「博人と同じレベルの反応だと?? 私が対応します」
高柳参謀長は、白い鞘の太刀を掴み、作戦室から出て行った。外では、上空から降下する何者かに対して、対空砲火が連続して火を吹いたが、不可視の障壁に遮られ効果は無かった。
「ふむ?! 面妖な武器だの。だが意味は無い」
対空砲火の中を、涼しげに降下しながら、男はゆっくりと音もなく大地に降り立った。
「千五百年もたてば、この様になるか……」
「うぬの生きた時代から、千五百年か。ならば、我の生きた時代より七、八百年といったところか……どうやらお出ましだな」
二人の魔人の前に、一人の陰陽師が立ち塞がる。
「念のために確認するが、ここへ何しに来た? 」
いまは自衛軍総参謀長としてでは無く、土御門一門の陰陽師、高柳義孝としてここに居る。
「ほう? 貴様、陰陽の術を使えるのか? 」
初老の男は、高柳の狩衣姿を眺めて、この時代の術師に、少し興味が湧いた。
「質問に質問で返すな。日本人だな? その漆黒の狩衣、加茂一族に連なる者か? 」
「加茂を知っているのか……ならば、この様な術も知っているか? 」
初老の男は、何もない空間から、その手のひらに呪符を出現させた。その呪符に紋様が浮かび上がり、その呪符が高柳義孝に向かって飛ぶ!
「呪禁呪符?! 貴様、なに奴!! 」
「死にゆく者に、名乗る必要など無いと思わぬか? 」
【大戦への足音】をお送りしました
(映画【カラダ探し】を観ながら)




