超帝国の残滓 ⑨
「博人! 貴方のためなのよ! 全てが手に入る! この世界線にある超帝国の遺産も、向こう側へのアクセス権限も全て! 」
目の前にいる母の形をした異形が、両手を伸ばしてくる。それを見た博人は、背中に走る悪寒を振り払い、人差し指と中指を立てて、左から右へ一閃した! その瞬間、母だった顔の頬に横一文字の赤い傷が生まれた。
「うぁあ!! な、なにを?? 博人! この母に向かってなんて事を!! 」
「結衣に近寄るな!! 貴様は母では無い! 欲の為に娘を殺すなど、親では無い。そんな物は、消えてなくなれ!!! 」
黄金色の輝きが、博人の身体を包む!
「す、素晴らしい! ノヴァ現象か! ただの術師ごときには、到達出来ない神の領域だ! さあ、私と共に! 」
スーツを着た男も、右手を博人伸ばす。
「黙れ!! 貴様らは同じ事を言っている! 消えてなくなれ!!! 」
白光が世界を包んだ。
長い夢を見ていた、結衣と二人で、白い砂浜を進んでいる。、いや、砂浜ではない……これは、白骨化した骨が砕け散ったものだ……その上を二人はまだ見ぬ場所に向かって歩く。歩けなくなった結衣を、背負い、さらにどこまで続くかもわからない道なき道をゆく。意識がだんだんと遠くなり、闇が覆った。
気がついた場所は、とても狭く、暗い、声が反響する。遥か上に空が見える。月の明かりだけが、世界に差し込む。
「ここは? 結衣?! 結衣! 」
「うっぅ! 」
反応があった事に、博人はホッとした。ここは多分、神社の裏にある空井戸だろう。
「僕は、母さんを……殺したのか? 」
自然と涙が溢れた。そしてまた、意識が、闇の中に堕ちていった。
◆◇◆
「うっぅ……夢? ……いや、これは記憶……その記憶を改竄されて、夢を見ていた……」
頭を振りながら、ヒロトは辺りを警戒する。何故こんな改竄された夢を? システムが強制したのか? 実際にあの時、あの男は居なかった。そうあの場に天草四郎時貞は存在していなかった。あの時、自分達兄妹を殺そうとしたのは、
「母さん……」
いままで、阻害されていた記憶が再編されてゆく。
「土御門の術で、記憶封印されていた?? 父さんの術か? ……俺が、超帝国の末裔?? 」
周囲を見渡すと、同じ様に皆が倒れている。このフロア自体が、記憶に何らかの作用をおこす術が施されている。その作用のおかげで、土御門の記憶封印の術が解けた。そして、
「……夢を見ていたのですね……」
「エレクトラ……君は、ここの事を? 」
「文献で知っていました。【真実の鳥籠】そう呼ばれています。【マルドゥク】に至る為の儀式の間です」
「心に濁りが有れば、それを洗い流し、修復する。そんなシステムです……ヒロト……何を見たのですか? 」
全てを見通す様な目で、真っ直ぐに見つめてくる。
「……気づいていたのか? 俺が超帝国の末裔だと」
まだ頭が少し痛む。
「最初の、召喚の時から……力の有る者を召喚すると言っても、貴方は異質過ぎた。全ては神すら取り込んだシステムの導きだった。我が兄を消し去る為の……」




