妖の軍勢 ⑦
【妖の軍勢 ⑦】をお送りします。
宜しくお願い致します。
ターミナルドックから直ぐに巨大な亜空間ゲートが設置してある。このゲートこそが、エヌマ・エリシュの門と言ったところか……
「各ドックに、一つゲートが有り、このゲートを潜れば、そこからは四つ巴の争奪戦です。先ほどパンデモニュウムの更に北側に、アヴァロンの反応がありました。皆到達したと考えるべきでしょう」
空間にエヌマ・エリシュ内部のマップを表示して、ヒロトは、今後の対応を説明する。
「遭遇したら、即ドンぱちだか? 」
ビリーは、ホルスターから抜き取ったワルサーPDP FS4のマガジンを確認しながら、くるくる銃をまわす。
9mm弾18発装填、ワルサーの最新モデルを、ヒロトの亜空間収納コンテナから探しだして、ご機嫌だった。
「お前は単純思考で幸せだな〜」
やれやれだぜ!っと、東堂詩織が呆れてみせる。
「先ほど女王スターシア様より入電があり、こちらと共闘して頂けるとの事です。なんとしても合流して、織田信長を止めねばなりません」
エレクトラの思いは既に決まっている。
「それに、【偽神】が復活した以上、あまり時間は無い。奴の再生が終わる前に蹴りをつける! 」
ヒロトは、前回偽神を倒し切れなかった自分を許せなかった。封印した為に、日の本が蹂躙されてしまった。
◆◇◆
比叡山ミサイル指揮所から、各ミサイル基地へのデータリンクが行われ、南アルプスの岩盤400mをくり抜いて設置された、地対地巡航ミサイル【ハウンド】が順次発射された。
「着弾確認! 次弾発射確認! 」
衛星軌道から映し出された敵勢力をポリゴン化し、デジタル表示して、個体を撃破すると画面から消える。この技術は【ファイヤーグランドライン】から転用されたシステムで、同じく【量子AIクリシュナ】が火器管制を管理運用している。
「太宰府に移した日本サーバーも良好です。インドとの連動も問題無く」
高柳参謀長はオペレーターの言葉に、少し安堵したが、中松准将の声に我に帰った。
「やはり通常弾頭では、効果が薄いな。いくら火薬量が増えても、直ぐに融合し復活して来る。参謀長が指摘した通りの……」
「やはり、完全な不死の存在ですね。生命体ではありません……まさか本当に存在するとは……」
高柳にも伝わる土御門の古い文献では見た事があるが、実在を確認したのは初めてだった。その昔、平安の世に現れた太古の穢れ。その【闇の魔】と呼ばれた穢れが、死人に取り憑き、都を蹂躙した。それを当時最強の陰陽師、安倍晴明が【鬼神百鬼夜行】の秘術をもって調伏した。たしか、【土御門】の四神の一人が、術式を現代に復活させたと噂で聞いた事があるが……
「あの調子で、数が減るどころか、人が死ねば更に増える。気が滅入るな。かといって本当に核融合弾は使いたく無い。重力子弾の準備には、もう少し必要だ」
自衛軍戦術研究所が開発した、一定範囲の重力バランスを極端に変動させる特殊弾頭だ。
「核融合弾頭は武蔵の巡航ミサイルに搭載される。陛下の許可が下れば……」
「それも、やむなしか……」
【妖の軍勢 ⑦】をお送りしました。
(映画【3度目の殺人】を観ながら)