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第伍怪 逆参り

 これは学生時代の私が、友達と肝試しをした際に出会った怪異のお話です。


 実際にあったことを書いておりますので、覚悟の上、お目通しを。

 高校を卒業してすぐの夏、私は友達に誘われて肝試しに行くことになりました。



 地元で有名な心霊スポット“K墓地”



 大きな敷地は円を描くように造られていて、一方通行の矢印があちこちに立てられています。


 そして、順路と書かれた矢印と逆方向に周ることを“逆参さかまいり”と呼び、それこそがここを心霊スポットと言わしめる所以となっているのでした。


 では、何が起こるのかと言えば……。



 逆参りを行えば、こちらに戻って来れなくなる──



 友達はその検証の為に、私を誘ってここに連れて来たようです。


 陽が傾き掛けた頃、友達が運転する車で逆参りを始めました。



「結局何も起こりませんでした。が、お約束なんだよ。肝試しは雰囲気を楽しむものだから」



 確かにこれが何度目かの肝試しだったが、何かがあったことは一度も無かった。


 こんな時間だから、流石にお墓参りに来ているご家族の姿も無く、私達は矢印とは逆方向に進み続けた。


 普通に敷地を周っても、十分は掛かろうかという広さを持ち、区画毎にお墓が並んでいる。



「そろそろ一周するね」



 声のトーンが少しだけ明るくなった友達を見て、何だやっぱ怖かったんじゃんと思っていると……。



「あれ? この辺……だよね?」



 出口は右側にあるはずなので、しばらく前から私も目を凝らして探していたのですが。



「……無いね。もう少し行ってみよう」



 私達が勘違いしているだけかもしれない。道が消えるなんてことは無いのだから。


 そんなことをお互い話しながら、再び車を走らせた。



「あっ、そうだ。ナビ見ようよ」



 肝試しだというのに怖さを紛らわす為、ナビの画面を音楽モードに切り替え、大好きなアニソンを流していた。



「もうびっくりさせないでよ。道が無くなるとかある訳無いじゃん」



 しかし──



「止まって! ……過ぎた。今、右に道なんて無かったよね?」


「ちょっと待って。バックする」



 後方の安全を確認しながら、ゆっくりとバックしていき……。



「やっぱりここだよ。ほら!」



 二人で何度も確認した。ナビ上では、目の前の茂みが道になっている。


 もしかしたら茂みのような車よけの可能性も考え、車を降りて動かそうということになった。



「これは……」



 私が言葉を続けようとするのを遮るように。



 ズル……ズル……ズル……。



 真っ暗な中、私達の車の後ろの道から、何かを引きずるような音が聞こえた。


 街灯のような明かりはもちろんなく、音だけが大きくなってくる。



「車に乗って!」



 友達の言葉に反応して乗り込むと、鍵をロックした。もちろん出口など無い道を走るしかなかったのだが。


 私は、幾度となく助けられた祖父からもらったお守りを握り締め、帰り道を下さいと一心に願った。


 ぐるぐるぐるぐる──


 何周したか分からない。それでも変わらず、後ろからは何かがやってくる。



「次行くよ。あそこに突っ込む。道あるんでしょ!」



 友達も恐怖がピークに達しているようで、強行突破を決めた。



「行くよ!」



 ナビに書かれた道に向かって、茂みに車ごと突っ込んだ。


 その時、私の握っていたお守りの紐が切れ──


 そして、次の瞬間、舗装された道路に出ていた。


 瞬き程の時間に何があったのか、私も友達も理解が追いつかなかったが、無事に帰ることが出来る喜びですぐさま胸が満たされた。



「もう肝試しはやめよう」



 そう話した友達は、今は会うことが出来ない場所にいます──

 このお話のラストに衝撃を受けた方もいらっしゃるかと思います。


 どうか、私達のように興味本位で心霊スポットに遊びに行くことは、お止め頂ければと切に願います。


 お読み頂いた皆様に、怪異が寄り憑きませんように。


 次回は、私の部屋で起きている怪異。箱のような空間の続きをお話致します──



 どうか安らかに──

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