夢蛙(むあ)
梅雨明け記念の青春ホラー。本当は大雨の日に投降したかった。
ノベルアップ+では投稿ずみ。今後、マルチ投稿の予定です。
雨が続くと、僕は時々カエルの夢を見る。
有名な鳥獣戯画とか、河鍋暁斎の蛙図みたいな場面を想像してもらえればいいが、違うのは、夢のカエルは直立歩行するだけの擬人化されたカエルではない点だ。
いずれも身長は一メートル前後、頭部と胴体のはっきりとした繋ぎ目となる“首”がある。顔には平べったい鼻と、ほぼ正面しか見えない丸い目。
現実のカエルと同じなのは、粘膜に覆われている緑色もしくは褐色の皮膚か、発達した指の間の水掻きぐらいなもので、むしろカエルの特徴を持った人間、特撮番組に出てきそうなカエルをモチーフにした怪人が実像に近い。
そんな連中が、森の奥の沼に集って、思い思いに楽しんでいる。
頭から水面にダイブする者、岸の岩に腰かけて楽しく語らう雌雄、昨日までオタマジャクシだった幼体に泳ぎを教える成体。
ちょっとグロテスクだが、どこか牧歌的で微笑ましくもある光景。
このまま雨が何日も、ひょっとしたら何万年も降り続き、地球が完全な水と湿地のみの世界になったら、僕たちは蛙人間たちに取って代わられるかもしれない。