1話 かったるい筆記試験
「お、大きい、、、」
その枷池学園は世界最高峰の『守者』を輩出する、その功績に似合う大きさをしていた。縦13km、横9.5km、5階建てもの大きさがある。右手に受験票を持ちながらその大きさに圧倒されていると、
「大きいですねぇ。」
と、上から声がした。
「ちょ、いつの間に出たんだ。ソウホ!」
と驚きながら聞くと
「そりゃあついさっきですよぉ。それにそう思うんなら魔界に『帰』せばいいじゃないですかぁ。」
と、僕から悪魔を『帰す』ことができないのを知ってるくせにこんなことを言ってくる。
はぁ、勝手に出てきちゃって。全く悪魔は浮いてたりするから目立つんだよな。それになんか地味に透けてるし。身長30cmくらいのソウホなら鞄の中にくらい入るだろ。
「ほら、鞄の中に入っとく。ギリギリ入るだろ!」
「ちょ、無理に押し込まないでくだs、むぎゅ」
暴れながらも鞄の中に入っていった。
ふぅ。入ってよかった。ソウホが小さい方の悪魔でよかった。大きい悪魔なら僕より大きいものもいるからな。一息ついて学園へ入ろうとすると
「ほーーすーーいっ!」
後ろから突撃された。
「よっ!歩帥。」
ーーー少し痛い。
「そんな顔すんなよ。俺とおまえの仲じゃん。」
「僕は刹那と突撃し合う仲になった覚えはない。」
と、正論をいうと
「まあまあ、これから受験すんのにそんな不機嫌になるなよ。」
と、はぐらかしてくる。誰のせいだと思ってるんだ。
すると突然刹那は学園の方に向かって叫んだ。
「強鷹刹那、東京都に降臨!これから俺の伝説が始まるぜ!」
そういえば刹那は厨二チックな奴だった。しかし、これから受験なのにもう伝説始まるのか。落ちたらどうすんだろ。
そういう伝説になるのかな?「強鷹刹那の転落人生」的な?それは、すごい悲しい話だな。・・・ちょっと読んでみたいけど。刹那は僕の娯楽のための生贄となったのだ南無南無。
「なんか失礼なこと考えてね?俺は絶対合格するからな?」
まあ、見た目に反して頭いいからな。不良感出まくってるのに。ピアスとかしてるのに。
「また変なこと考えたろ。それに歩帥が落ちないっつう保障ねえからな?頑張れよ?せっかく村から東京にきたのに不合格ちてさよならは悲しすぎっからな?」
「はいはい。鋭意努力します。」
「国会かよ。」
ツッコまれた。
「まあ、頑張ろうぜ。じゃあ学校に入るか。」
「えー、これから筆記試験を行うよ。試験官の灰雲歓幾です。この後に実技もあるけど、それだけじゃ無理だからだめだぞ。まあ頑張ってね。じゃ、配るよ。」
灰雲先生は、優しそうな人だった。本当に。いつも刹那とかソウホとか、ダル絡みしてくるような人と一緒にいるから優しさに感動しそうだ、、、僕大丈夫か?
それは置いといて、筆記試験だ。筆記試験は100点満点のテストで、基本的な教養から魔法の種類、魔生物の種類や倒し方などが出てくる。
『(1)成暦とは何によって始まったか?』
これは、簡単な基本的な教養の部分だな。『魔力の異常拡散と魔生物の出現』と。
『(12)赤魔法炎属性の最上級魔法とは何か?』
これは、魔法だな。炎か~、あまり見ないんだよな~。」えーっと確か、、、《永続獄烈火ですよぉ。》
そうそう、インフィニ、、ってなんでソウホが声掛けてくるんだ?!感覚合一だからまだいいけど。
《歩帥ちゃんが鞄の中に押し込んだんじゃないですかぁ。》
、、、そうだった。とりあえずまだ鞄の中に入ってるんだよな?
《一応ねぇ。歩帥ちゃんが注目されるの嫌いらしいですからねぇ。》
その配慮は嬉しい。ってか答え言わないでくれないかな。カンニングみたいなるの嫌だからさ。
《別に誰も見えないし聞こえないからいいじゃないですかぁ。》
僕はカンニングした的なことを思うのが嫌なんだよ。入学いった後に罪悪感がくるじゃないか。もういうなよ!
あー集中集中。『(22)C級魔生物『ゴブリンメイジ』は近距離、中距離、長距離のどこから攻撃するのが適切か?』
ゴブリンメイジか。C級の中だと弱い部類だな。まあこれは近距離だね。ゴブリンメイジ単体はそこまで強くないけどね。
・・・・・・
「はぁぁ。筆記とかめんどくせー。」
刹那が疲れ切った表情で言ってくる。
「まあ、刹那ならわかるだろ?本読むのとか好きだし。」
「分かるとか分からないとかそういうんじゃないんだよ、めんどいんだよ。ったくも―、何であんな分かり切った問題に答えなきゃならねえんだよ。しかも何で男なんだよ。試験官。」
僕は女の先生だったけど黙っておこう。ってか分かり切ったとか言うな。最後の方は僕は解けなかったんだぞ。これだから天才は、、、まぁ、次の先生は確か
「あー、次は女の先生らしいからさ。」
「おお!」
目に見えて明るくなる。単純だ。大丈夫なのか刹那。なんか飴玉一個で誘拐されそう。まぁ、誘拐しても貧乏村の男とか需要ないだろうし刹那に返り討ちに合うだけだと思うんだけど。
「まあ、うん。しかも次は実技だから、そっちは好きでしょ?両手斧使って暴れんの。」
「暴れてない。ちゃんと考えたうえでやってっから。あれはな、あえて暴走してるように見せかけて頭の中で計算をしまくって効果的に攻撃するっていうのならいいな。」
「願望じゃん。」
結局暴れているんかい。
「まあ、勝てばいいんだよ、勝てば。どっかの偉そうな人がいってた気がするじゃん。勝った方の勝ちだ、って。」
何処の何奴だそんなことを刹那に吹き込んだのは。
「強ければいいんだ!力こそパワー!筋肉こそマッスルなんだ!」
なんか、凄い力説してくる。でも特に何も言ってない。結局何がいいたいんだ?
それにしても次は実技か。あまり目立ちたくないんだけどな。刹那&ソウホが黙ってないだろうからな。
あれ、そういえばソウホは?
profile 碁城歩帥(Gojo Hosui)
・住所 :R県玖持村
・誕生日 :5月24日
・年齢 :17歳
・家族構成 :不明
・装備武器 :片手直剣(市販)
・利き手 :右
・好きな食べ物:イカフライ
・その他 :山を独りで歩いて居たところを強鷹論祇(刹那の父)に発見され、強鷹家で過ごすこととなった。ズボンのポケットに生年月日と名前が入っていた。
読んでくれてありがとうございます。