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ドーナツの穴  作者: 久架 雪歩
一部
14/15

一部十話

長らくお待たせいたしました。

下書きを残していたつもりでしたが全て消えてしまっていたようで、ここまで書き直すのが少々大変でした。

書き直すにあたって読み返したりはしたのですが、どうしてもブランクの分文体が変わってしまっているかもしれません。そちら、大変申し訳ございません。

ではごゆっくりどうぞ。


4/18 編集

ちょっと読み返して文章が気になったところがあったので修正しました。

消えていたと思っていた下書きですが、まさか格納場所が変更になっていたとは……。これ含めて三話分書き直し確定ですね。


 不可解な食事を終え、ナイトは部屋に戻ってきていた。

 何かをルーに聞こうと思っていたことまでは思い出せたが、具体的に何を聞こうと思っていたかまでは思い出せないでいた。それもこれも、相席した彼――アギーリの存在が引っ掛かっているためである。『初心者狩り』、思わず余所行きの表情をするほどの警戒心。思えば思うほど、得体の知れない恐ろしさに苛まれるようであった。

 何か気を紛らわせる方法は、と思案を巡らせ。結局ナイトは無心で≪点灯≫と≪薄闇≫を繰り返し唱えることにした。没頭できる事があればそちらへ集中を傾ける方が良い。ナイトはミゼリコルディア領から出てこちら、あまり長くない時間でそのことを学んでいた。戦争を止める、と大言壮語を吐いておいて現実の自分には何の力もないことを痛感している。出来ることからやる、やれることがあるというのは精神的に安心することでもあった。

 その様子を見て驚いたのだろうか。ルーは僅かに目を見開いて首を傾げる。


「……熱心なのは構わないが、根を詰めるのはいささかよろしくないのではないかね? オイ、聞いているか」

「――」

 

 ≪点灯≫と≪薄闇≫、≪点灯≫と≪薄闇≫。ある意味で、ただ反復することはナイトの得意分野でもある。ナイトの得意属性は地属性であるが、ここまで繰り返し反復していれば慣れたものでもある。だが油断すると暴走しかねない。悪くない緊張感にもう一回、と術の構築を始めたところで顔を何かが覆った。柔らかい感触、それが布であることに気が付くまで少し時間がかかった。集中が途切れてしまったが、それは術の暴走を招くほどでもないようで。ナイトは何かの糸が切れてしまったことを自覚する。


「人の話を聞け。帰って来てからこっち、何か様子がおかしいぞ。何か不可解なことがあったなら共有すべきだ。それともその口は飾りだというのか?

 一人で悶々と悩んでいても良いことは無い。知恵というのは出し合うものだと相場が決まっているのだぞ」

「うぐ……」


 布を取り払う。ただの着替えのシャツのようであった。それを投げたルーは、しかしどこかナイトを気遣うような表情さえ浮かべていた。

 何から話すべきか、どこから聞くべきか。ナイトが言葉を詰まらせているとルーが深く息を吐く。


「青少年の悩み事はある意味で尊ぶものでもあるが、アドバイスできそうな年長者が間近にいるというのに頼らないのは悪手だ。いつぞやにも言ったと思うが、出来る事をそれぞれ分担することは協力体制と言って大事なことでもある。しかも俺たちはこれからダンジョンに挑もうというのだぜ?

 何を遠慮しているか知らないが、聞きたいことがあるのであれば聞くべきだ。もう一度だけ言おう、何か不可解なことがあったなら共有すべきだ」

「……さきほど食事をしている時、相席になって――」


 ルーの言うことも尤もである。ナイトは重たい口を開く。そも心が読める特殊能力を有しているかもしれないルーの前で悩む方が馬鹿馬鹿しい事に気が付いてしまえば、遠慮する方が無駄なのかもしれない。

 あらかた話したところで、ルーが目を細めた。


「『初心者狩り』を親切に忠告してくれた人物、ねえ……」

「その……お知り合いですか?」

「キミ、忘れているかもしれないが私はこれでも目覚めたばかりだぜ? そんなホイホイ知り合いどもが生きているわけないだろう。ヴィントはアレでも一応は本当に特殊な例でしかないんだよ。

 ……それが本名なのだとすれば。残念ながらアタシには心当たりがない人物だな」


 当然の疑問をぶつければ吠えるような反論が帰って来た。……だとするとヴィントは本当は何者なのだろうか。いつぞやルーが言っていた人のせいで造られたアンデッドだとか、その類のような可能性もあるということだろうか。愉快でない想像に身震いを一つすると、どこか呆れかえった目線でルーが肩を竦める。


「ヴィントは、アレはヒトだよ。オレが保証する。

 ……冒険者ギルドでなく、聖術ギルドの人間だというのであればその名は本名である可能性が高いね。キミの話が正しいのであれば、冒険者ギルド以外のギルドは身分がしっかりした人物でないと所属が難しいのであろ? であればその何某は俺の知らない人で間違いない。……だが、キミの話を鵜吞みにするのであれば。確かに怪しいね。その御仁」


 疑いは自分だけが抱いたモノではない事実は、ナイトにとって安心を齎した。何がどう引っ掛かるのか、ナイトにもはっきりと言語化出来ないのが。悔しくも思われた。

 ルーは僅かに眉を寄せて思案を重ねる。――そういえば護拳などの調整は終わったのだろうか? 道具類は片付けたのか見当たらないが。


「目撃証言が無い、証拠が明確に残っていないのに、犯行タイミングだったり犯人が二人以上であると推定できるのか? オレなら犯人の推定人数も出来ないほどに痕跡を綺麗さっぱり消すし、そもそもそんな噂を流されない程度に綺麗にやるだろ。案外ソイツが存外犯人だったりしてね。

 キミ、丁寧にそいつに色々教えたんだろ? じゃあダンジョンからの帰りは十分注意しなきゃならないか。……面倒な」

「その、すみません」


 思わず謝ると、ルーは殊勝な態度を見せたナイトを鼻で笑った。


「ハ。別に謝らずとも結構。初心者しか標的に出来ないチキン野郎を、まさかアタシが返り討ちに出来ないとでも? あの森での出来事を忘れた、などと記憶領域が爪の先ほどもないことは言わせないぞ。あれからまだ一か月も経っていないのに私たちの出会いを忘れる、だなんて随分と薄情なことを言うね?

 言っておくとキミの目の前にいるヤツはゴブリンエンペラー程度なら単独討伐可能と豪語する存在だということを、まさか忘れたわけでもあるまい?」

「うるさいな、アンタに負担しかかけてないと思っただけなのに」

「雛鳥は親に給餌してもらうものだ」

「それは流石に言い過ぎでは!?」

「キミは」


 さすがにその雛鳥がナイトのことを示していることくらいは分かる。いやな気付きである。あんまりな言いように思わずナイトが反論を試みれば。ルーはさざ波一つない水面のような。あまりにも静かな顔をしてナイトを見上げた。――その雰囲気がそうさせたのか。

 言葉がどこか重たく響いたような気がした。


「まだそれで良いと思うよ、アタシはね。

 そら色々言いたいことがないとか、面倒を覚えていないとは言わないさ。だが、キミはこれから自立しようとしているわけだ。誰ぞの手を借りたって別に構わない時期なんだよ。どうせいづれはその程度の些事は自分で片付けるようになるさ。片付けられるようになるさ。だって、オレについて回ってんだぜ?

 自分で言うのもなんだが、俺は持っている手札に関して、特にその種類の多さには一定の自信がある。そんな俺が種々様々教え込もうとしている今のうちに、ありとあらゆる事柄を学ぶべきだ。俺からだけじゃなくて、あるいはキミの敵から壁からでもこの際構わない。悪い事だっていい事だって、卑怯なことだって正しいことだって、世界には色々存在する。それら全てに触れることは流石に出来ないだろうが、それでも構わないさ。要は学ぶ気の有無だ。学んだなら、確実にそれはキミの血肉になる。

 ――それらを人は経験と呼び、成長と呼ぶ。そうだろう?」

「……だから今は雛鳥に甘んじて、見て覚えろ。と?」

「まさしくその通り。キミも分かるようになったな」


 激励に慣れていないのだろうか。難解な言い回しではあったが、きっとそう言いたいのだろう。何とか汲んでやればおおよそ合っていたらしい。妙な達成感すらある。

 はぐらかされたような感覚さえあるが。ナイトはそれら全てを吞み下して。それから一つ頷いた。


「……ありがとうございます。取り敢えず目先のダンジョン攻略が大事ですね」

「その通り。

 ところで私に聞きたい事柄は思い出せたかね。今は気分が良い、答えられる範囲であればなんだって答えようじゃないか」

「アンタは何歳です?」

「喧嘩売っているのかね」


 なんだって、と言ったのはルーの方であるのに。随分と理不尽である。両手を上げて降参の姿勢を示すと、ルーは渋々といった体で怒りの矛先を収めた。

 改めて。ナイトは何を尋ねようとしたか思案を巡らせる。――そうだ。そういえば。


「『ゴブリンとオークのオーガスト』――って、名前のダンジョンらしいですけれど、具体的にはどういう場所なのでしょうか?」

「…………ああ、あそこ今そう呼ばれているの。随分と洒落た名前じゃない、オーギュストとは」

「はて?」

「いや、こちらの話。

 そうだな……どこから話すべきか……」


 思案を巡らせるルーはベッドに寝転んだ。





「そうだな、まずキミが知った事実を話してくれ」

「……えっと、全部で五層あって初心者用のダンジョンで、攻略難易度が一番低い……といったところですかね」

「出てくるモンスターは?」


 聞かれ、ナイトはなんとか記憶を掘り返す。あの冒険者はなんと言っていたか。確か――。


「一層目がゴブリン、二層目がゴブリンとホブゴブリン、三層目がホブゴブリン、、四層目がホブゴブリンとオーク、五層目がオーク。だったか、と?」

「なるほど、その辺りは私の認識と同じようだ。要は層が深くなるほど手強いモンスターが出てくる形式だ。

 初心者向けと言われているのは一層目のゴブリンが低知能で落ち着いて対処すれば倒すのは簡単であるところだね。ただし、それはそのままゴブリンが弱いという話をしているわけではない、というのは分かるかね?」

「……えっと、すみません。魔物との戦闘は一度もしたことなくて、何がどの程度の強さなのか具体的にはまったく……」


 正直に白状すれば、しかしルーは納得したように頷くのみだった。


「マ、それは予想していたから問題ない。恥じることではないよ。この街に着くまでも随分とイージーモードだったからね。キミキミ、最悪はあの程度の道のりでも盗賊などに襲われて死ぬって可能性があることを忘れてはならないよ。

 ゴブリンはキミのような魔物と矛を交えたことのない、本当にただの初心者だと、誰かの手助けが無いと倒せない程度の強さだと言えば分かるかな?」


 何を言わんとせんとするか。うっすら分かって来たような気がする。

 ようは戦闘に対する慣れの話の部分なのだろう。槍も振るい方を知らなければただの長い棒であるのと同じように、戦いに慣れていない者は呑まれる、という問題か。その読みは当たっていたようで、ルーは続けた。


「分かったようだね。その通りだ。ゴブリンは成人男性どころか下手すると子供よりも小さい。だがね、それが一番厄介なのさ。

 近くで見たり、あるいは慣れてる奴が見るとそうじゃないけどね。遠くから慣れてない奴が見るとヒトの子供に見えることがあるんだ。だから慣れていない初心者だけで潜るのは危険でもある。子供と思って保護しに行こうとするとゴブリンでした、それで戦闘になりました、殺されました。なんて、よくあるパターンだ。

 どうしてこのダンジョンが初心者用と言われるか。――戦闘に慣れさせるため、疑いの心を持たせるため。そんな辺りだな」

「……なんか、ゾッとしました」

「脅かしたからな。ちなみにより上位の魔物にはそれこそほぼ人にしか見えない擬態をするヤツもいるから。疑いを持つのは非常に大事だぞって話でもある。ゴブリン如きに騙されるようじゃ冒険者向いてないよっていう奴もいる。

 アタシはそこまでは思わないけどね」


 何でもないように語るルーが今一番恐ろしい。それこそ経験値の差、というものだろうか。ルーはその人にしか見えない魔物にも出会ったことがあるのだろうか。あるのかもしれない。そんなベテランとダンジョンに潜れるのはある意味で僥倖なのかもしれなかった。

 雛鳥。さきほどの会話を、ナイトは不意に思い出した。こうした些細なところからも学べることは学べと言いたかったのだろう。覚えるべきことが多く、今から不安になっているのは致し方ないだろう。


「ちなみに、それが隠し通路よりも手前の話だ。

 隠し通路の奥は一応層に別れてはいるが、基本的には出てくる魔物はランダムに近いだろう。というか、現状どうなっているか全くの未知数だ。隠し通路開けたら一瞬でオークナイト級の強敵がわんさか出てくることだってありうる。アタシが最後に潜ってから相当な月日が経っているから、もしかしたらオークだかゴブリンだかのアンデッドが湧いていたとしても不自然じゃあない

 あるいはゴブリンエンペラーとか本当に出てきたりしてな」

「――ソレ。それが不思議です。ダンジョンの魔物って最大生息数が決まっていたりはしないんですか?」


 一瞬の引っ掛かり。そのままにナイトは質問を投げた。

 だって。不思議ではないだろうか。ダンジョンは神が造りたもうた代物であるなら、最大値が設けられて。それと結界の効果でダンジョン内の魔物が外に溢れ出ない仕組みになっていないのだろうか。ルーの口ぶりではどうにもそうだと断言できないような言い方ではなかろうか。

 聞かれると思っていたのだろう。どこかいたずらめいた表情すら浮かべ、ルーは言う。


「そこまで都合よくヒトの事情なんか、神が勘案してくれるわけないだろ?

 ダンジョンの正体は強大な魔力だまりだ。魔力は国の中心から溢れ出るモノである、と私は言ったと思うがね。国の各地に、効率よく魔力を流すにはどうしたらいいと思う」

「……道を作る?」

「正解。これには言い方があるが、いったん魔力の通り道と呼称しよう。

 魔力の通り道を通して各地へ魔力を流す。だが世界には様々な災害がある。例えば地震、戦争、地盤崩落」

「戦争って災害で良いのか?」

「人が起こす災いで良いだろ、あんなモン。

 ――さまざまな要因を引き金として、魔力の通り道が崩落したり。あるいは単純に街の場所が変わったりで魔力を流す方向を変えたりしなければならないのは分かるかね。

 それらの影響で魔力が濃く滞留する場所が出来る場合がある。ソレが魔力溜まりと呼ばれる現象だ。……元は戦場だった場所でアンデッドが大量発生した、なんて話もある種の魔力溜まりが起こす現象の一つであるね」


 ゾッとする話である。アンデッドの大量発生の原因も、まだ研究中だったとナイトは記憶しているのだが。ルーの持つ知識は、全てが真だとするならばあまりにも革命的だ。しかるべき場所に持ち込めば、或いは大金が得られる可能性すらあるというのに。それを行わずにただ一人、ナイトへ教えることの。なんとも途方もない無駄な作業を行おうとしているのか。いっそ、呆れすら覚えてしまいそうである。

 一度頭を振って。それから呆れを頭の隅へ追いやった。


「そういえば、アンデッドは人の漏れ出た魔力で生まれるとか、アンタ言ってましたもんね。そういうことも起こりうるわけか……」

「その通り。

 その魔力溜まりが起こす現象は他にも色々ある。例えばオリハルコン生成に関わったりとか。良いことも起こりうるけれど、下手に突いたらとんでもない事故も起こすから注意するんだぜ。まあただの魔力溜まりは本能的に避けるように出来てるから早々大事故を起こさないだろうけど」

「何故?」

「ポーション酔いの原理。急激に魔力を浴びると酔うだろ?

 症状はもちろん個々によって変わるけれど、どうせなら最初から酔わないに越したことは無い。だから本能が避けるように出来ている。だが、ダンジョンはその現象が起こらない。それは溜まった魔力が、魔物の生成と生成された魔物がダンジョンより外へ出ないための結界維持という形で消費されているから」

「――つまりダンジョンに魔力が供給され続ける限り魔物が出現し続ける?」


 ルーはその回答に、指を鳴らす。どこか機嫌の良さそうな雰囲気に、ナイトはどこか充足感を得た。


「大正解。仮名上層五層分は冒険者たちが頻繁に掃討して周っているからね。だから今まで問題は生じなかった。

 だが消費魔力は強い魔物の方が多くなる傾向にある。まあ強い魔物の方が内包魔力が多いのは常識だからね。一部種族はその内包魔力の多さを競い合うともいうし。中々に面白い文化を彼らも築いている。その辺りもいつか遭遇したら教えてあげよう。

 ……隠し通路の向こう側も五層分。つまり半分以上の魔力は下層五層分が消費しているはずだ。繰り返すようだが、下の階層の方に強い魔物が出る構造だからね。あのダンジョンは。上層の方は新米冒険者たちの魔物を狩る頻度が高いと言えど、流石に間に合っていないだろ。消費が追い付いていないはずだ。最下層はゴブリンなんて塵のように思える強者が君臨しているのだから」

「ちなみにアンタの記憶の限りで良いですが最後一番下に出てきたのは?」

「オークロード」


 ――オークロードと言えば。

 上級冒険者でも死闘になることがあるとされているオーク族の中でもトップに近い種である。オーク、オークウォリアーと鍛錬を積んで進化していったオーク族の中でも、強い個体同士が番い、子を成して。更にその子が鍛錬を積んで、と繰り返した結果誕生する個体。成り立ちが成り立ちだけに総数は多くないが、その手強さはまさしく王と呼ばれるに相応しい。

 ……しかし、オークロードとゴブリンエンペラーとではゴブリンエンペラーの方が手強い。オークロードはオーク種の統率も行うが、気質として自らが前線に出るタイプ。対してゴブリンエンペラーは何よりも己が生き残ることを最優先とし、時に配下のゴブリンを囮に逃げることもある。どちらが厄介となれば、やはり後者に間違いないだろう。

 だが当然それはオークロードが弱いという話でもない。ナイトは自らの頬が引きつるのを自覚した。それが君臨しているダンジョンだなんて、冗談じゃない。


「本当に初心者向けダンジョンなんですか?」

「最下層まで行かなければ、初心者向けであることには変わらない。あそこは本来初心者から上級者まで対応可能なダンジョンなんだよ。言ったろ、上層と下層には隠し通路が間に挟まってるって。

 そらなんで隠し通路で下層部分が隔離されてるかって、初心者が迷い込まないようにしてあげるためだからだよ。『初心者』であれば五層突破時点でもうそれ以上の攻略は不可能だ。隠し通路は魔力を注ぎ込むことで解放される。五層にいる魔物だけで手一杯で、そこから奥へ進む魔力は残っていない。通りたくばここへ注ぐ魔力量以上のリソースを持ってこい、ってヤツさあ」

「親切なんですね、ダンジョンマスターは」


 理にかなった設計である、冒険者を育てるのであれば。難易度が高ければ高いほど実力が無い者は脱落する。全てのダンジョンが同じ難易度なのではなく、それぞれランクが付けられているのも、どこか納得できるようである。

 要はそうなるように調整されたからという訳だ。ある意味で件のダンジョンに手を加えた者――ダンジョンマスターは優しい人物だったのだろう。


「……甘いヤツだったさ、アイツは。さて、話を――いや、何の話だったか?」

「アンタが脱線させたのに話の本筋忘れてしまったんですか?」

「そういうなら適度なところで止めたまえよ」


 眉を寄せ。腕を組んで首を傾げる。ルーは溜息すら吐いて思案を始めた。

 ナイトは窓の外を見る。……すっかり夜の色に街が染まっていた。だがまだ眠るには早いだろう、眠気が遠い。もう少しだけ聞ける情報を聞こうと、ナイトはルーへ向き直った。



書いていてあの人があまりにも饒舌に話し出すので、書いているこちらも何を話しているか分からなくなってしまいました。

次回も半分くらいあの人の喋りが続くかと思いますが、よろしくお願いいたします。

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