一部七話
良い事があったので筆がかなり進みました。お待たせして申し訳ありません。
今回はいわゆる身分証明書を獲得した二人が、今後の方針を確認する回です。今のところもう数話程度大きな動きが無いと思われます。
それではごゆっくりどうぞ。
現在、ナイトは隣国コレール王国ルヴェールにいる。位置としてはミゼリコルディア領のお隣だ。そこの冒険者組合にて冒険者登録を行い、そしてこの街にある初級ダンジョンに挑む予定。らしい。
らしい、と言うのもここまでが順調すぎて現実感に乏しい。昨日までと、歩いている街並みが違う。それこそ百八十度違うと言っても過言ではない。そもそも立場からして違うのだ。ただの平民として、この街を訪れるとはまったく、夢にも思っていなかった。
ある意味、夢見心地でいるとルーが嗤った。
「キミ、間抜け面が酷いよ?」
「ぐ……」
少し考え事をしていて、ぼんやりしてしまっただけだ。そう反論したかったが、余計なことを言うと倍の倍くらいの罵りが返ってきそうだった。大人しく口をつぐむと、受付の女性――マリアというらしい――はお手本のような笑顔を浮かべた。
「ええと、お二人は冒険者登録をするのは初めてですよね?」
「ええ。この街で登録、初めてなんです。どのように登録するのですか?」
「お二人は文字は書けますか? あっ、コレール語でなくて大丈夫です」
ナイトに向かっての、あの悪意溢れるような言い回しは鳴りを潜め、ルーは丁寧に受付へ声をかけた。ナイトにもその優しさが欲しいところである。――実際は受付に対するルーの無表情と、ナイトに向ける僅かな微笑みとは天と地ほどの差もあるのだが、ナイトはそれに気付いていない。
ナイトもルーと同じくこの街での登録が初めてだ。文字も書ける。頷くと、受付は聖力紙を出してきた。
――聖力紙とは。聖力で編まれた紙のようなものだ。紙の形として形成されるまでに特殊聖術が込められる。その込められた特殊聖術の内容によって発揮される効果が変わってくる。
例えば契約に使われる聖力紙だと、契約が破られた時に罰が下るように、等である。
今回はどのような性質のものであろうか。受付が話し出した。
「書けるのでしたら代筆は必要ありませんね。
こちらの項目に名前、こちらの項目に年齢の記載をお願いします。両方とも分からない場合、名前は今決めた物でも構いませんし、年齢はおおよそで問題ありません。
おおよその年齢も不明な場合は、書かなくて良いですよ」
――冒険者は前科者でも受け入れるので、例えば路地裏で産まれた孤児でも冒険者になれる。ある意味、救済措置と考えて間違いないだろう。だからどの国も冒険者という存在を、ある程度許容せざるを得ない。他とは違い、確固とした身元が無くてもなれる職業なのだから。
その場合、正確な年齢や名前が分からない事が多い。名前は必ず親が付けてくれるわけでもないし、そもそも明日を生きるために必死な子供たちは、自分の生まれた日など覚えている余裕はない。そのためこのように明確な確認を含む登録ではなく、任意の部分を含む登録となる。
ここが職人組合と冒険者組合の大きく違うところだ。職人組合は、確固とした身元が必要になる。何か事故が起こった際に責任を負う者が必要になるからだ。身元が不明な人間に、重大な責任を負わせられない。閑話休題。
彼女は微笑みながら次の項目を案内した。
「次に、こちらの項目にどのような事ができるか、どのようなことが得意かを記載してください。この場合戦闘に関することが好ましいです。
聖術が使える、とか。素早い動きが出来ます、とか。その程度の簡単なことで大丈夫です。この項目は、我々が何かお仕事を依頼する際に、この人はこれが出来るからこれをお任せしようといった、判断材料の一つになります。
もちろん他の判断材料もありますので、虚偽申告はダメですよ」
ナイトは少し考えて聖術が使える旨と剣を扱える旨を記載した。ルーの記載内容を横から少し覗くと、素早い動きが出来る旨の記載をしていた。他の項目を書く気は無いようだった。
書き終わったのを見たか、受付は頷く。
「では最後にこの紙に聖力を注いでください。それらの情報を元にギルドカードを作成します。ギルドカードについては説明した方がよろしいでしょうか?」
「その前に聖力が注げない場合はどうしたら良いですか?」
ルーが首を傾げる。受付は少しだけ驚いた表情を見せたが、すぐに元の微笑みに戻った。
聖力の量が少なすぎて扱えない人、というのはやや珍しい。そういった人は病弱であることが多い為、幼い頃に死んでしまうことが多いからだ。それでも環境に恵まれて生き延びられる人もいる。そういった類いなのだろうと判断されたに違いない、受付はルーの紙を受け取った。
「ではギルドカードには聖術適正無し、と記載させていただきます。現在の健康状態はいかがですか?」
「体が小さくて困っている以外は特に何もありませんよ」
「分かりました、ではそのように手配させていただきます」
受付が何やら作業を始める。それを眺めながら、ルーはナイトの爪先を軽く踏んだ。親指を的確に踏まれ、ナイトは僅かに涙目になる。
小指でもなく、わざわざ的確に親指を踏むのだから。これはわざとなのだろう。ルーは小さい声でナイトに声をかけた。
「いっ……!」
「何、ぼうやりしているのだよ。さっさと紙に流す」
「うぅ……はーい」
呻きながらナイトは、紙に聖力を流す。――今さらだが魔力を流す、という言い回しをしなかった。やはりその辺りは弁えているらしい。
紙が僅かに光り、縮小。そして光が消えると同時に、それは小さい正四角錘の物体に変化していた。物質が明らかに変化している。この現象は初めて見るナイトは、受付へ不安そうに声をかけた。
――ルーは若干不満そうな顔で欠伸をしていた。
「ええと……? あの、マリアさん……?」
「あ、注ぎ終わったんですね。それがギルドカードです。主にペンダントをはじめとした装飾品に加工して、常に身に付けてもらいます。
ギルドカードにあなたの聖力を注ぐと、先程記入していただいた基本情報や、戦績、依頼達成数などの情報の表示が行われます。身分証にもなりますので、無くさないでくださいね。無くした場合は再発行手数料銅貨二十枚です。聖力紙って、高いんですよ?
また、依頼に関する情報の更新は組合側で行い、戦績については聖力値の変動で計測いたします」
「聖力値の変動?」
「ええ、戦闘になると聖力が昂りますので。あ、ケンカ程度では聖力が強く昂ることはありませんから、ケンカして戦績を多く見せようとしても無駄ですよ。
まぁ、闘技場くらい激しい戦闘になれば、魔物相手の戦闘でなくても聖力は昂りますけど」
戦闘になれば聖力が昂るのは知らなかった。
――闘技場とは。
全ての国や都市にあるわけではないが、ここルヴェールにはあるらしい。ミゼリコルディア領にはなかった。用途としては主に冒険者や傭兵など、腕試ししたい者たちが集う場である。腕試しをしたい者たちが集まるだけあって、どの試合も迫力がある。見るだけでも自分の戦闘に多少役に立つと聞いたことがある。ただ時には死人が出ることもあるらしい。ナイトはそんな物騒な催しには参加したくない。自分の命が、惜しいのだ。
目線だけでルーを伺えば、深く息を吐き出した。
「俺だってそんな暑苦しいところ嫌だよ。というか、現実になりそうだから止めてくれない?」
「はい……まぁ、ギルドカードがどんなものかは分かりました。でもこの人、聖力が注げるほどないのに身分証になるんですか?」
「ええ。これは身分証も兼ねており、亡くなった方の確認も出来る仕様ですから。戦歴については、相手の魔物の魔力を計測することによって、正確性には欠けますが他の方と同じような使い方が可能になります。
……ですので、ダンジョンや道端に落ちているギルドカードをもし見つけたら。それは組合まで持ってきていただければ幸いです。その分の謝礼も、一応は設定されています」
あまり敏くない自信のあるナイトも、何となく理由が分かった。冒険者は常に命の危機が間近に存在する。いつどこで死ぬか分からないのだ。
多少暗い気分になっていると、ルーが軽くナイトの脛を蹴る。
「キミは自分の命のためにも、早く中級の術を使えるようになってほしいねぇ? 出来ることが増えるのだよ?」
「痛い痛い痛い痛い、分かりましたよ! 分かったから蹴るのは止めろ!」
――無事、ルーの分もギルドカードとして形作られた。二人はそれをペンダントの形にするよう組合に依頼。完成は明日だとのこと。ダンジョンに挑むにはギルドカードが必須だ。入り口付近での提示が求められる。
今日はミゼリコルディア領からやって来たこともあり、夜が近い。大人しく宿を取ることにした。評判は悪くない、価格も大人しい。三段階評価で言えば辛うじて中くらいの宿が取れた。
流石に飛び込みで二人きりの部屋は取れなかったらしい。そればかりは仕方ないと小さくナイトが溜め息を吐くと、ルーが肩を竦める。
「まぁ、個室ってのがそもそも贅沢なんだよ。ミゼリコルディアでの宿が特別だったと思ってくれたまえ。この街は賑わっている方だから今回のように先客がいても奇妙じゃない。そもそもミゼリコルディアでの宿はやんごとない事情で二人きりにしてもらっただけだからね。
……私たち含めて三人部屋なだけマシさ。場所によっては、なんと驚いたことに二十人まとめて同じ部屋で仲良く雑魚寝とかもありうるんだぜ?
しかもその八割が筋骨隆々の野郎ばっかとかね。鉱山が近いとよくあるよ?」
「うわぁ……嫌です……」
それを聞いて、ナイトは腹から声が出た。筋骨隆々の人が多い状況でその部屋だと、部屋の内部がとても暑そうで、また狭そうである。ぜひともそうした状況は避けたいところである。
ナイトの同意を聞いて、ルーは肩を竦めた。
「俺も嫌だね。そんな状況になるなら野宿の方が逆に快適だ」
「いや、僕は室内の方がいいです……」
「薄情で贅沢者め」
小さくナイトを罵倒し、ルーが割り当てられた部屋の扉を開く。
開いたと思ったら一度閉じた。すぐに閉じた為、ナイトには中に何があるのか分からなかった。首を傾げて、ナイトはルーの顔を覗き込む。そこはかとなく嫌そうな顔をしていた。
「……アンタ、何してるんです?」
「……とうとうアタシ、幻影が見えるようになったかもしれない。ちょっとオレの目に何かゴミが入ってないか見てくれないか?」
「特に赤くなっていたりはしませんが」
「じゃあ正常ということ? おかしいな……」
呟きながらルーは、もう一度扉を開ける。今度はナイトにもしっかり見えた。扉の前にヴィントが綺麗な笑顔を浮かべて立っていたのだ。ルーの嫌そうな理由が氷解したが、同時にナイトは天を仰ぎたい気分になる。ミゼリコルディアでの口論の際、険悪な空気が流れていたのをしっかりと覚えている。
流石にその状態で幻影がどうとは言っていられないらしい。ルーは顔をしかめた。
「……何でキミがここにいるんだい?」
「それは私の台詞ですわぁ! お部屋を間違えているのではなくて?」
燃え上がるあの花のような、特徴的な赤い髪。先ほどは見えなかったことを考えると、扉の前で話している間に移動していたらしい。ともかく、ヴィントは思い切り上から覗き込むように見下ろして――身長差があるから、ある程度は致し方ない――ルーに口喧嘩を仕掛けた。
「お部屋の番号すら読めないほど耄碌しまして?」
「残念無念。実は間違えていない。キミは宿の親父さんを疑うほど人間不審が加速したかな?
そんな人間不審が加速するほど人とまともに関わり合いになっちゃいないクセに、さ」
ルーも負けじと対抗をする。ナイトはにわかに頭が痛み出した気がしてきた。この二人にとって、口論は挨拶の代わりだと言うのだろうか。絶対に嫌である、そのような慣習は。
ルーもミゼリコルディアから発つ時に、ある程度反省したものだと思っていたのだが、気のせいだったのだろうか。
「ちょっと、お二人とも。これ以上は他のお客さんにも迷惑になりますから、部屋の中で話しませんか?」
「おや、珍しく名案を提示するのだね。良いよ、とても良い。キミの成長しようと努力する姿勢を、オレは高く評価しよう。そのまま真っ当に成長していってくれ。
――と、言うわけでそこを退き給え。邪魔だ。少しは謙虚な姿勢を持った方がいいんじゃないかな?」
ナイトの言うことに一理ありと考えたのだろう。渋々道を開けたヴィントに、ナイトは改めて頭を下げた。ルーは一瞬足を止めたがそれに対して何も言わないことから、多少は申し訳なく思っている。と、良い。そんな希望的観測を抱きながら、ナイトはこっそり溜息を吐いた。
「本当に申し訳ないです……」
「……貴方に謝っていただく筋合いはありませんわぁ。本当に貴方、厄介なモノに目を付けられましたわね」
「おい、いつまでそうやって突っ立ってるつもりだよ。さっさとこっちに来て今後について確認するんだよ。
ヴィントも人のに手を出してるんじゃない」
ベッドに腰かけるルーは、どこか不機嫌そうにナイトへ声をかける。ヴィントは悪意を表出させた笑顔でルーを見る。また火種が生まれたか、と構えたナイトだったが、幸いにも両者共に口火を切らなかった。
恐る恐るナイトは、ルーの隣のベッドへ腰かける。するとヴィントが思い出したかのようにルーへ声をかけた。
「あ、わたくし街を見て回りますの。どうぞ、ご自由に」
「深夜帯まで帰ってこなくていいぞ」
「まぁ、酷い。それよりは早い時間に帰ってくるつもりですの。わたくし、アナタよりは不良ではありませんので」
「オレだって不良ではないのだけれど」
「酒場とかに入る方は不良ですわ! ……あなたも、この方との付き合いは十分注意した方がよろしくてよ」
ヴィントはナイトへ溜息交じりに忠告を投げると、そのまま軽やかな足取りで部屋を出た。その忠告は、どこかとても重い響きを伴っており、ナイトは首を傾げる。面白くなさそうに顔を顰めるルーは、ナイトを睨み付けた。
「……あの狂人の言うことはあまり本気に捉えない方が良い。話半分も信じれば、それはお人好しって言うんだぜ」
「――考えておきます」
ナイトはこっそり溜息を吐いて、肩を竦める。
それを見なかったことにするらしい。ルーは立てた膝の上に肘を付いては首を傾げる。その目はナイトに焦点が合っておらず、どこか遠くを眺めているようだった。
「明日からの方針について話そう。先にキミにも言った通り、初級ダンジョンに潜る。……実はあの初級ダンジョン、私の知り合いが作成したものなのだけど」
――ちなみにダンジョン作成時期は推定千年程度前になる。さらりと聞いた衝撃の発言に、ナイトは僅かに固まる。またダンジョンを意図的に作成する方法は無いとされている。色々な意味でありえない発言である。
だが、どこかを眺めているルーはナイトの様子など意に介さず、話を続けた。
「実は隠しルートが存在する。しかも複数。どこまでその隠しルートの存在が知られているかは不明だけれど、状況を見て活用させてもらおうと思う。掃除がてらね」
「掃除がてらって……その隠しルートとやらはどれほど広いんですか」
「アホか。掃除って言っても文字通りの意味じゃなくて、湧きすぎた魔物退治の意味だよ。ダンジョンから魔物が溢れかえってない、初級ダンジョンとして機能しているというのであれば隠しルートから魔物が抜け出ていないということ。共食いかなんかで強力な個体が出現している可能性が高いから、俺の肩慣らしにもちょうど良いの。
……というか、大体百年一単位で放置されていたようなところだぞ? 埃まみれどころか所々崩落している可能性が非常に高いのだよ。そんなところを呑気に掃除なんてしていられないのだが?」
「というか、そんな危険そうなところに散歩感覚で僕を連れて行こうとしないでくださいよ!」
つい声を荒げると、ようやくナイトへ焦点を当てたルーがニンマリと嗤う。その瞬間、ナイトの背筋に嫌な予感が駆け巡った。
脚を組み替えたルーはお手本のような綺麗な笑顔を浮かべて、反対側へ首を傾げ直す。
「だが、オレたちがやらないと誰がやるんだ? どれほどの年月放置されている道かは知らないが、その道の存在を、本当の初心者が見つけてしまう前に、対処できる者が対処する以外に、安全な対処方があるとでも思っているのかね」
「……で、でも僕が足手纏いになる可能性だって十分あるじゃないですか」
「確かに隠し通路内の魔物がどれほどの強さかは分からない。ただ、精々ゴブリンエンペラー程度だろ? ヒトと同程度の知能を持ち、魔法も戦闘技術も持ち合わせている凶悪なゴブリンだ。
だがね、私に言わせればそれは程度なんだよ。ドラゴンゾンビ三体とかに比べれば遥かにマシなんだよ。俺にとってはあのダンジョンで起こり得る変異体、強化個体なんて、その程度だ。そんな護衛が一緒に行くって言うのに、何を怖気づいているのだね。キミは性根までチキンなのか?」
そこまで煽られ、ナイトは奥歯を強く嚙み締めた。確かにルーは強いだろう。そこまでの危機を予測しながら肩慣らしとしてダンジョンに挑むつもりなのだから。
だが、ナイトにそこまでの覚悟が無かった。命のやり取りなんて、無い方が良いに決まっている。ナイトがぼんやりと考えていた未来に、このような危機感は全くなかったのだから。
その事を言うか言うまいか迷っていると、ルーが溜息を吐く。
「……ま、ついこの前まで訓練程度のことしかしてなかったお坊ちゃんには、確かに酷な話だろうってのは分かるさ。ただ、キミ、私についてくるって決めたのに、どうして危機が付きまとわないと思った?」
「……僕、アンタについていくって決めましたっけ」
「おいおい、そこからかよ」
気のせいか、ルーが脱力をしたような気がする。だが、ナイトにとってはなんとなく、ルーと共に居たいと思っただけだ。危ない橋を共に渡るか否かは、また別の問題ではなかろうか。
首を傾げていると大きい溜息を吐いたルーは、ナイトが付けている腕輪を指さした。
「キミは戦争を止めたいといった。そのためには万が一のことを考えて強くならなくてはならない。しかも時間もあまりないんだぜ? こっちには。だからザコをちまちまちまちま倒してる暇はないの。しかも魔力の器強化だったら、強い魔物を相手にした方がどう考えても効率が良いでしょうがよ。
本当だったら今日この後ダンジョン行った方がいいかもしれない、というところを、キミの休息と情報収集に割くの。オーキードーキー?」
「ええと……あの、僕が悪かったです……前提の今の状況が見えてなかったです……すみません……」
そういえばそんな話だったような気もする。ここまでの道程が色々と衝撃的過ぎて、失念していた。そっと目を反らすナイトに、ルーはもう一度大きい溜息を吐いた。
「分かればいいのだよ、分かれば。
それで、この後の話だ。キミの魔力量を確認を行う。現状の確認だから、少なくても気にするなよ。そして、それからキミは夕飯。私は必要な道具の調達と情報の収集。キミは私の帰りを待たずに寝ていいからね。
そして明日だが、日が昇る頃宿を出る。可能な限り早めにダンジョンに潜って、最短で最奥に向かう。ダンジョン内は可能な限り急ぎたいから、ゆっくり歩いている余裕は無いと思うように」
「……隠しルートは最奥にあるんですか?」
「ああ、うん。だから隠しルートに入るまでのザコはサクッと倒すよ」
そのなんでも無さそうな発言に、今度はナイトが溜息を吐くのであった。――最奥にはボスがいるということを、ルーは考慮していないらしい。
書きたがりがまたしても出て来るとは思っていなかったんです。
次話は鋭意執筆中です。
かなり余談ですが、先日ありがたいことにご感想をいただけました。筆がかなり早く進んだのもいただいたご感想のお蔭です。
この場をお借りして改めて感謝を伝えさせていただければと思います。ありがとうございます。




