指輪の精霊 〜タンザナイト6〜
タンザナイトの指輪に精霊が宿っている。
手入れをしてピカピカにすると、白いまばゆい光が2つ、まるで瞳のように現れる。
「車の運転がうまく行くように、魔除けみたいに右手の薬指にはめているのだけれど、なんかちょっと怖いな……」
でも効果は抜群!十年無事故無違反。
「ありがとうね!」
キラキラ。光が応える。
夜中、不思議と眠れなくてキッチンの椅子に座ってお茶を飲んでいたら、いきなり停電した。
「うわ!」
動けない。ふと指輪に呼ばれて、見ると、石の中にカンテラを持った少女が見えた。
「停電の間だけお話しましょう」
少女が私と同じ空間に現れた。
カンテラの淡い灯りが二人を照らす。
ちらりと指輪に目をやると、いわゆる鏡で鏡を映したときのように無限空間が広がっていて、思わず目を回しそうになる。
少女はくすくす笑っている。
「マスター。いつも大事に扱ってくれてありがとうございます」
「……そのう、あなた指輪の精霊?」
「そういうことにしておきましょうか」
否定も肯定もしないのね?
「運転のときに守ってくれてるでしょ?」
「はい。マスター」
なんかね、ときどき色の浅黒い手が運転してる幻みるのよ!
「運転、代わりにやってくれてるとき、あるでしょ?」
「みんな交代で楽しんでやってます」
「みんな?」
「はい」
「そんなに何人もいるの?!」
「はい」
ふっ。
電気が復旧した。
少女は姿を消していた。
狐につままれたような気分で不意に眠気がやってきて、寝室へたどり着き、ベッドに転がり込むと、そのまま朝まで熟睡した。
「夢……だったのかなぁ?」
指輪は相変わらずキラキラ輝いた。