アマテラス①
「我らの世界と繋がっておるゲートを封印するために、この女の身体を使って守護を命じたはずだが?」
『そ、それが、封印はこの者によって解かれてしまいまして……』
サクヤはバツが悪そうにまごまごしている。
地下迷宮にあったゲートとこのゲートの向こうは日本なのか?
「おいあんた、俺たちは召喚されて日本からこの世界にきたんだ。あんたが憑依している身体を解放してゲートを通らせてくれないか」
アマテラスはまるで虫けらでも見るかのように俺たちを睥睨している。
つい無礼な言葉遣いになってしまった。それで機嫌が悪くなってしまったのだろうか。
だがアマテラスは俺たちが住んでいた日本の神様だ。きっと助けてくれるに違いない。
「小童、このゲートの向こうは確かに我らのいた世界と繋がってはいるが日本ではない。地球が属する銀河とは別の場所で、このゲートを通って日本へ帰るのは不可能だ」
「あんた神様だろ?それぐらいどうにかできないのか?」
どうしても口汚くなってしまう。
アマテラスの態度や言葉の端々から俺たちに対する嫌悪感が伝わってくるからだ。
自ら治めている国の民に対するものではない。
「確かに日本へ送ってやるのは容易い。が、それはできん相談だ」
「何だと?」
「お前らのように、人の手に余るスキルや魔法などというものを身につけた異物を日本へ入れるわけにはいかんからの」
言葉がでない。
まさか自分が生まれ育った国の神様に見捨てられるとは思わなかった。
「わかった。あんたには頼らないからサクラを返してくれ」
アマテラスは俺を見据えている。
「それはできんな。この娘の身体は実に具合が良い。娘を媒介してこの世界に干渉することができるのでな」
干渉だと?植民地にでもするつもりか?
ここには俺たちの建国した国がある。仲間も……は既に亡くなっているがその子孫がいる。俺の子も孫もひ孫も……
「……ならば力尽くで奪い返すとしよう」
俺が言い終わらないうちにサクラがアマテラスに斬りかかったが見えない障壁に阻まれた。
「サクヤ……、寝返ったか?」
アマテラスがサクラの中にいる者を睨みつける。
『ち、違います!サクラちゃんの自我が強すぎて制御できません!』
「はあ、お主には荷が重かったか」
黒田誠は障壁へおもむろに近づくとドアをノックするようにコンコンと叩きだす。
なにやら思案顔をしていると思ったらそのまま障壁をすり抜けてしまった。
「ふーん、こんなもんか。もうめんどくせーからこいつやっちまおうぜ」
「一応神様だからね?殺しちゃだめだよ?」
俺は鍵の刀で障壁を粉微塵にした。
「人の分際で神に楯突くか……」
門から顕現したアマテラスが口を開く。
「来い!スサノオ!」
背後からハクのうめき声が響き渡った。




