開かない扉
三つの大陸を隔てる海域を守護する黒龍から魂魄を回収した。
「あんなにでっかいドラゴンを倒しちゃったよ……」
「ユウ!俺たちが組めば最強だぜ!」
黒龍を討伐した堀井が唖然としている。
オニの刀を振るってはいたが堀井だけでも勝てたかもしれない。それほど堀井のスキル「最後の審判」は傑出している。
堀井の放った斬撃は、躱されたという結果を改竄されて黒龍の鈍く光る鱗を断ち切った。
ファイアブレスによって火だるまにされたという結果は、改竄されてなぜか黒龍の頭部が燃え上がった。
「イミがわからないネ」
と、俺に背負われているハクが呟いていた。
今回はサクラも同行しているため連れてきたのだ。ハクはサクラと離れ離れになるのは嫌らしい。
『ハクちゃんだけ仲間外れなんて可哀そう!』などとポンコツ女神サクヤが騒ぐので仕方なくおんぶしてここまで飛んできたのである。
『マスター、どうやって海の底まで行くのですか?』
「うーん、どうしよう?」
といっても周りの空間を固定してそのまま海に潜るしかないのだが。
「んじゃ、俺が門を持ってくるからここで待ってて」
マコトはそう言って海に飛び込んでいった。
「え、……持ってくる?」
上級仙人ともなると呼吸など必要ないらしい。
三十分ほどして海面に影が差したと思ったら、マコトが門を建て付けた遺跡ごと持ちあげて飛び出してきた。
「ただいまー」
「お、おかえり」
「力技過ぎだろ!」
「イミがわからないネ」
とりあえず影魔法で遺跡を収納して南の大陸まで転移門を使って移動した。
南の大陸の門があった荒れ地に影収納から風化してボロボロになった石造りの遺跡を取り出す。
遺跡といっても教国にあった大聖堂を一回り小さくしたような大きさでしかない。
扉のない入口から中に入ると外観とは裏腹にまっさらな門が奥の壁に据え付けられている。
そこには地下迷宮の門と同様に、扉に埋もれるようにしたサクラの姿があった。
そのサクラは紅白の巫女服を着ていた。
「間違いないな、「巫女装束」のスキルをもったサクラだ」
サクラと門扉を分離しようと鍵を差し込む。
「あれ?反応がない……」
これまで鍵の効果が及ばなかったことなど一度もないのだ。
「別に驚くことでもないんじゃないか。鍵が鍵魔法の上位にあるように、この門が鍵の権能よりも上回っているというだけだ」
前モントロー公のマルボロがそう斟酌した。
「サクヤよ、なぜこ奴らと一緒におる」
それまで微動だにしなかった扉の中のサクラが口を開いた。
「お前には門の番を申し付けたはずだが?」
『ア、アマテラス様……』
アマテラス?
あの日本の神様のアマテラスか?




