オートマター
『これは一体どういうことだ?』
目玉の親父のようになってしまった前モントーロー公を回収してカナン大陸の門までやってきた。
『ここの門はカナン王国の観光名所になっているんだよ』
オニが丘の上に建っている門を見上げながら答える。
周りはカナン人だらけだ。魔導技術は公国よりも低いのかここへ来るまでに目ぼしいものは見られなかった。
『こんな人目のあるところで門を開いたら騒ぎになるんじゃないか?』
『俺たちの国にいるわけじゃないんだし別に騒動になってもかわまないだろう』
俺の肩に乗っている目玉が無い口を開いた。
マコトやサクラたちにはネイサンで待機してもらっている。俺が失敗した場合に回収してもらうためだ。
なのでここにいるのは俺とオニ、目玉だけである。
『確認するが攻撃されるのは門を開いて向こうへ行ったときで間違いないんだな?』
『ああ、あっち側に入った瞬間にドワーフが無属性魔法を放ってきて、それに当たると物質化されてこっち側にはじき出される。千里眼で見たから間違いない』
しかも入った時とは別の場所に出されると。そこがネイサン付近なのだ。
もしかしたらカイトやサラたちもそうやって飛ばされてきたのかもしれない。オニと目玉の記憶が失われていないのは無意識のうちにロックをかけたのかもしれないな。
門の前まで来てアイテム化されないために身体を細胞レベルでロックしていく。最後に自身の周囲に多重結界を張れば準備完了である。
鍵を差し込み扉を開く。
あいつらでさえ躱せなかったドワーフの攻撃だ。もう正面から受けてやろう。
これでダメなら他の手を考えるだけである。
俺は門の境界線を跨いだ。
目の前ではドワーフの魔法が俺の結界を貫通もアイテム化もできずに無力化されている。
どうやら部外者を排除するまで続けるようだ。
ドワーフに近づいてゆくあいだも間断なく魔法を放ってくる。
刀に成型した鍵の届く範囲内にまで来たが逃げるという選択肢はないようである。
ならばとドワーフを刀で貫きスキルにロックをかけた。
攻撃がやんだので結界を解くとオニと目玉も人型に顕現する。
「こいつ……、人形じゃねーか……」
「本物の人みたいだな。今にも動き出しそうだ」
【自動迎撃人形】「物質化」「擬人化」
ああそうか。
こいつは自分を物質化したのか。
ドワーフの人形をアンロックしようと思ったがどうせ記憶を失っているだろう。
結局右足と同化させスキルをいただいた。
どことなくネイサン冒険者ギルドの近くにある鍛冶屋の親父に似ている気もしたが他種族を見分けるのはなかなかに難しいものだ。
それにあの親父さんはすでに亡くなっている。今更確かめる必要もないだろう。
千里眼でこの世界を観察していた目玉によると文明の痕跡はあるようだが人は存在していないらしい。
目の前に広がる荒野が地平線の彼方まで続いている。
人類が絶滅したのかここを廃棄して他へ移ったのかはわからないがこの世界を調査する優先度は低そうだ。
俺は転移門を発動してこの世界を後にした。




