ゲート
帝国に到着してフィンと別れる。
結局フィンのスキルは「手加減極」と「剣術」を入れ替えるだけにした。魔改造してやろうと思っていたがフィンから予想外の抵抗を受けたため最小限にとどめたのだ。欲のないやつである。
北東の大陸にあるトーリ火山へ向かっってもらったマコトを見送って自身も南の大陸へ旅立とうとしたところオニから念話が届いた。
『カナン大陸にある門をくぐったら刀になっていた件について』
『は?』
気づいた時には既に刀になっていたという。
『一瞬だったからよくわからないが誰かいた気がする』
『ふむ……、で、お前は今どこにいるんだ?』
『たぶんローゼン王国のネイサン近郊にある森の中かな、どこか見覚えがある』
ネイサン?そういえば「擬人化」付きのアイテムはすべてネイサン周辺で手に入れたものばかりだ。
リーナやサラたちのことも気掛かりである。彼女たちは子供を産んだ後で眠りについた。死んだわけではないようだが目覚めることはなかったという。今はハコの次元収納におさめられている。
サクラも地下迷宮で一時期眠りについていた。子供を産んだわけではないのでリーナたちと状況は異なるがなにか条件でもあるのだろうか。
とりあえずオニのことは盗賊ギルド自治区で隠居している前モントロー公のマルボロに千里眼をつかって探してもらうことにした。
南の大陸に向けて飛び立ち海上を南下する。
水平線に南の大陸が見え始めたときまたしても念話がはいった。
『ただいまマルボロ様!』
『ん?誰?』
『おいー、忘れるなんてひでーな!ゲオルグだよ!なんかマルボロ様の友人とかいうやつに助けてもらった』
『ゲオルグ!マコトに助けられたってことは門の向こうにいたのか?』
『向こうは人が住めるような環境じゃなかったよ。入った途端に身体が溶け出してさ……、ほら俺って不死身じゃない?だからさ破壊と再生を繰り返してた』
格好つけた言い回しをしているが単に再生が追い付かなかっただけである。
帰ったら酒でもおごってやろう。
南の大陸の門を目指して飛翔する。
青々と生繁っていた木々は中央に近づくにつれて疎らになっていった。
所々で廃墟は目にしたが人影は見当たらない。
門に到着し上空から見下ろす。
まるで爆心地である。その中心に門の残骸がぽつねんと佇んでいた。
他にあるものといえば門が立てられていた歪な円状の岩床だけである。
残骸に鍵を差し込んでみるが反応がない。その機能は完全に停止しているようだ。
「手掛かりなしか……、ん?」
何気なく鑑定してみると、
【門の残骸】「転移門」「擬人化」
転移門!?
ど〇でもドア!?
これで一緒に召喚されてきた生徒たちを日本へ帰らせることができるかもしれない。
……。
自分が帰るではなく他の者を帰らせるか……。
もし日本へ帰れるとしたら俺はどうするのだろう。
日本にいたころよりもこの世界で過ごした年月のほうがはるかに長いのだ。どちらに愛着があるのかは明らかである。
……とりあえずやることを済ましてしまおう。
俺は左足の脛の中程で分離した断面をそのまま門の残骸に押し付けた。




