アガルタ
オニの話を聞くために他の生徒たちと別れて場所を変える。
俺とオニ以外でこの部屋にいるのは黒田誠、サクラ、ハクと皇帝だけだ。
「実はな、」
「待て、その前に話がある」
皇帝がオニの話しを遮った。
「和平交渉をしたいのだがお前らのどちらと話せばよい?」
俺はモントローに念話を飛ばす。
「それはモントローにいるマルボロと話してくれ。ついさっき帝国に使節を送るように伝えておいた」
「他にもマルボロはいるのか……」
皇帝は黙り込んでしまった。
「んー、どこから話すか……」
「お前が大陸に渡った経緯からだ」
「ほら、あいつ空飛んでただろ?それが羨ましくてお前らと別れた後すぐに例のスキルを移植したんだよ」
オニよお前もか。
「楽しくて飛び回ってたんだけど気付いたら大分上空まで来ていてさ、そのとき海の向こうに大陸を発見した」
「黒龍に見つからずによく大陸まで渡れたな」
「いや、襲われたから殺した。っていうかお前……天上の楼閣にいた奴だよな?なぜここに?」
オニがようやくマコトに気付いたようだ。
「それは後で話すよ。マコト、黒龍ってのは?」
「黒龍はこの島国を外敵から守っている存在、もしくはこの島国から出ようとする者を排除する存在だ。どっちかわからんから俺は放置していたんだがまさか殺してしまうとはね」
「ということはマコトも大陸に渡ったことがあるんだな?」
「ああ、日本へ帰る方法を探していた。というよりも日本と繋がっている門を探していたと言ったほうがいいかな」
門……、この世界には向こうでは架空の存在であるエルフやゴブリンなどがいる。ということは遥か昔に門を行き来した者がいるかもしれないと考えたわけか。
「なあ皇帝さん、俺たちを向こうの世界へ帰す方法はないのか?」
「ない。すくなくとも異界から戦士を呼び出す術しか伝えられていない。もともとあの魔法陣は帝国の前身であるテト王国のものだ。テト王家の断絶と共に多くの伝承が失われてしまったからな」
理不尽な話だがここで皇帝を責めても意味がない。友好的な関係を築いたほうがましである。
「マコト、大陸に日本へ繋がっている門はなかったんだな?」
「わからん。そもそもこの島国の外に門は一つしかない可能性が高い」
どういうことだ?マコトでは門を開けられなかったということか?それとも一つしか見つけられなかったということか?
「三つの大陸を隔てる海域の中央にこの島国を守っているのと同種の黒龍が徘徊している。つまりその下に何かがあるのは間違いないと思うが……、俺はカナヅチだから確認できない。どんなに強くなろうと泳ぐことはできなかったよ……」
マコトが遠い目をしている。
「三つの大陸の中央?それはここのことじゃないのか?」
オニの疑問にマコトが答える。
「ああそれは、この島国から見ればそうなるが、実際には北の大陸、南西と南東の大陸の南の海域にこの島はあるんだ」
それまで黙って話を聞いていた皇帝が口を開いた。
「ところでこの島の名は何というのだ?」
オニとマコトがカブる。
「「アガルタ」」




