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鍵士無双  作者: キャットフード安倍
第三部・ゲート探索(仮)編
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帝国の誤算

 『ヘルムートのマルボロが危篤……』


 俺がサクラと旅立ってから八十年経っていたことにも驚いたが……、あいつまだ生きてるのか、九十六歳のはずだから老衰だろう。


 八十年。ズヴェーデン地下迷宮で何年も彷徨っていたがそんなに永い時が過ぎたのだろうか。もしくは先の時代に召喚されたか。今となっては知る術はない。


 『他のマルボロはどうしている?』


 『大陸に渡ったマルボロ様は一度戻られた後再び出奔し、モントロー公は盗賊ギルド自治区にいます。表向きはヘルムート伯と同一人物ということになっていましたから』


 『帝国との関係は?』


 『現在は休戦中で交易も行われておりますが信用はできませんな。これまでに三度侵攻してきました。当然、モーリス一門が蹴散らしましたが』


 『モーリス一門?』


 『あなたが家名を与えたアンロッカーズの面々の血族です』


 あいつらとも今となっては会うことも叶わない。


 「この扉の向こうに皇帝陛下がいらっしゃる!失礼のないように!」


 シンと念話しているあいだに玉座の間へ着いたようだ。





 俺たちは皇帝の御前に召し出された。


 玉座は一段高いところに設えられておりそこで足を組んで俺たちを睥睨している。皇帝というから爺さんを想像していたが大分若いようだ。三十路を越えた程度だろうか。


 「異界の戦士たちよ!よくぞここまで辿り着いた!大儀である!」


 俺とサクラ、ハク、マコト、それから部長さん以外はこの状況に気圧されて震えている。部長さんは何やら言いたそうにしているが多少の空気は読めるようだ。


 俺も我慢しなくてはな。「生活魔法EX」のタバコに火をつけ一服する。


 永らく地上と隔絶された空間で過ごしていた弊害だろう。自身の行動に何らの疑問も感じない。これはしょうがないことだ。うん。


 「あ、俺にもくれよ」


 マコトと二人でぷかぷかする。マコトは二百年ぶりのタバコに至福の表情だ。


 そんな俺たちの振る舞いに辺りが静まり返るなか空気の読めないやつがいる。


 「ちょっと!あなたたち!先生の前で未成年者が喫煙なんて何を考えているの!」


 部長さんである。


 「は?この世界では十五歳で成人だよ?」


 「そ、そうなの?で、でもやっぱりダメよ!佐倉先生も何とか言ってやってください!」


 「貴様!先ほどから我がマスターに対して無礼であろう!これ以上難癖をつけてくるようなら切り捨てる!」


 部長さんがえ?え?ってなってしまった。


 マコトはもう一本をせがみ欠伸をするハク、そして激高のサクラと泣き出す部長さん。カオスだ。


 皇帝の側に控えている宰相然とした爺さんが顔を真っ赤にしていることに誰も気付いていない。





 「黙れ貴様ら!皇帝陛下の御前であるぞ!」


 ついに宰相と思われる爺さんがブチギレた。


 「じい!静まれ!」


 「で、ですが!」


 黙る爺さん。皇帝の権威は絶対的なようだ。


 「その方、随分とこの世界について詳しいようだな。それにそこの女剣士の口ぶりから察するにそちは貴人のようだが」


 「あ、俺?俺は貴族というか、元君主?」


 皇帝の眼差しが険しくなってゆく。


 「俺はこの世界へ二百年前に来て、今日再召喚された。お前らの召喚の儀は失敗したんだよ」


 玉座の間に居るすべての者が鈴ノ木宗時に見入っている。


 「なんせお前らは自らの仇敵であるモントローの建国者を召喚してしまったのだから」


 「ま、まさか」


 「ああ、俺がマルボロ・モーリスだ!」


 





 

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